有能課長のあり得ない秘密

みなみ ゆうき

文字の大きさ
3 / 10

3

しおりを挟む
プロジェクトチームのメンバーに選ばれて本社に行くことが決まった時、かつて本社にいたことのある先輩に椿原課長はどんな人かと尋ねたことがあった。

その時返ってきた答えは。


『男だけど色気がある人だよ』


男に色っぽいってさー、俺的にはどうなんだよ、って思ってたんだけど……。


……椿原課長はマジで色っぽい。

毎回俺は心を無にして、下半身の欲望と闘っている。

これぞまさに苦行。

視覚や聴覚から脳にインプットされたデータを生理機能に反映させないことがこんなにも難しい事だと思わなかった。

俺は毎回心の中でひたすら難しい事を考えながら、なんとか身体的に煩悩が表れることがないよう努めているのだが。


その分、仕事が終わって部屋に帰ると、まるでオナニーを覚えたての中学生のように何度も課長をオカズにしながらシコッてしまうという悪循環を繰り返している。


そして終わった後の賢者タイムに訪れる自己嫌悪の嵐。

とてもじゃないが課長のように頭が冴えて仕事に集中できる状況には程遠い。





「はい、押鴨くん。これあげる。同期のよしみの義理チョコだけど」

「あ、ありがとう。俺、チョコ大好き」

「知ってる。もっと早くにこっちに来ることわかってたらお徳用の大袋用意してたんだけどな」

「……今朝急に決まった出張だから」

「そうだったね」


苦笑いする同期に別れを告げ、俺は三ヶ月前までいた支社を後にした。


今日はバレンタインデー。

そして俺は、自分のやらかしたミスのせいで本社から新幹線で二時間ほどかかるこの場所へ足を運ぶ羽目になっていた。


『明日社内プレゼンで使う商品サンプル届いてないんだけど』


朝一番に課長からそう言われ、発注を担当していた俺は慌てて送り先伝票を確認したのだが。

送り先に指定していたのは三ヶ月前までいた支社だということが発覚。

どうやらオナニーのしすぎで頭がパーになっていたらしく、無意識に入社してからずっとお世話になっていた支社の住所を書いてしまっていたらしいのだ。


慌てて発注先に電話をしたものの、当然だが既に荷物は支社当てに送った後で。俺はそれを取りに来るためだけに、わざわざ片道二時間かけてかつて俺が勤務していた地方支社へと来る羽目になっていた。


そして。


「中身ちゃんと確認したか?」

「はい。大丈夫です。申し訳ありませんでした」


無表情で俺に声を掛けてきたのは椿原課長。

どうやら今回の一件で俺の信用は地に落ちてしまったらしく、自分が元いた地方支社に来るだけの出張にわざわざ椿原課長が同行するという不甲斐ない事態になっていた。


「じゃあ、帰るぞ」

「……はい」


課長に促されて歩き出したものの、ただでさえ多忙を極める課長の時間を俺のミスのせいで潰してしまったことが申し訳なさすぎて、とてもじゃないが並んで歩く気にはなれない。

先に歩き出した課長の少し後ろを無言のままトボトボとした足取りで付いて行くと。


「おい、押鴨」

「はい」


突然立ち止まった課長に名前を呼ばれ、俺は俯きがちになっていた顔をあげた。

すると。


「せっかく出張に来たんだから今日は泊まるか」


課長の口から飛び出した言葉に俺は一瞬何を言われたのか理解出来ずに固まった。


泊まるって……?どこに?


「実はキミがモタモタしている間にホテルの予約をしておいたんだ」

「え?」

「今日はバレンタインデーのせいか目ぼしいホテルはどこも空いてなかったけど、一件だけキャンセルが出た部屋があったからそこを押さえといた」


ということは、椿原課長と同じ部屋に泊まるって事……!?


「どうする?泊まる?それとも帰る?
──キミの判断に任せるよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

素直じゃない人

うりぼう
BL
平社員×会長の孫 社会人同士 年下攻め ある日突然異動を命じられた昭仁。 異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。 厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。 しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。 そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり…… というMLものです。 えろは少なめ。

溺愛じゃおさまらない

すずかけあおい
BL
上司の陽介と付き合っている誠也。 どろどろに愛されているけれど―――。 〔攻め〕市川 陽介(いちかわ ようすけ)34歳 〔受け〕大野 誠也(おおの せいや)26歳

ヤンデレ王子と哀れなおっさん辺境伯 恋も人生も二度目なら

音無野ウサギ
BL
ある日おっさん辺境伯ゲオハルトは美貌の第三王子リヒトにぺろりと食べられてしまいました。 しかも貴族たちに濡れ場を聞かれてしまい…… ところが権力者による性的搾取かと思われた出来事には実はもう少し深いわけが…… だって第三王子には前世の記憶があったから! といった感じの話です。おっさんがグチョグチョにされていても許してくださる方どうぞ。 濡れ場回にはタイトルに※をいれています おっさん企画を知ってから自分なりのおっさん受けってどんな形かなって考えていて生まれた話です。 この作品はムーンライトノベルズでも公開しています。

俺より俺の感情が分かる後輩は、俺の理解を求めない

nano ひにゃ
BL
大嫌いだと思わず言ってしまった相手は、職場の後輩。隠さない好意を受け止めきれなくて、思い切り突き放す様なことを言った。嫌われてしまえば、それで良かったのに。嫌いな職場の人間になれば、これ以上心をかき乱されることも無くなると思ったのに。 小説になろうにも掲載しています。

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています

二三@冷酷公爵発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…? ※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21

処理中です...