うろ覚え乙女ゲームの世界に転生しました!モブですらないと思ってたのに……。

みなみ ゆうき

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11.二人目の攻略対象者

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私付きにされたメイドさんの話によると。

王太子殿下付きの侍女さんは。
『夫人は気難しく、すぐに機嫌を損ねてしまうので余計な事はしてはいけない。呼ばれた時に応えられるよう控えているだけでいい。聞かれたことには答えてもいいが、聞かれるまでは何も説明しなくていい』
と言っていたらしい。

しかも。
『夫人はとある身分の高い方の愛人で、少し事情があってここに匿われているから、夫人がここにいることは口外してはいけない』
とも言われてるらしい。

『とある身分の高い方の愛人』って何!?
そんな人を王宮に匿うとか、普通なら考えられないんだけど。

しかしこのメイドさんは元々下級メイドで、私がここに来るからって急遽私付きにされただけの人。
しかもまだ入って一ヶ月ほどしか経ってないらしく、王宮の事情に詳しくなかった。
そこをあの侍女さんに利用されたんだろう。

挙げ句、私の今後の予定については彼女は何も知らされていないということも発覚。
何だか作為的なものを感じる。

私的には教育係としての仕事が始まらないほうがありがたいから、ちゃんと三食食べれてお風呂も入れるんなら文句はないんだけどね。

でもさ。そんな事して彼女にメリットはあるのかな?
私みたいな評判の悪い人間を王太子殿下に近付けないために、とか?

そこまで考えたところで、その王太子殿下も攻略対象者のひとりだった事を思い出す。
そして彼のトラウマも。

確かあの王子、美少年過ぎて小さい頃から異常な執着をみせる人がいるほどモテてたせいで、女嫌いっていう設定だった筈。
そんな状態じゃ王族としての義務が果たせないとかなんとかで、王様やその側近達が王子に内緒でそっち方面の手解きをしてくれる未亡人を用意して王子の寝室に送り込んでしまい、余計トラウマが酷くなるっていう。

…………。


──その未亡人、私じゃん!


ここでもメリンダは物語の盛り上げ要員だったらしい。

またしても自分が攻略対象者のトラウマに関係してることを知るのと同時に、どれだけ私はこの世界で損な役回りを引き受けさせられる人間なんだろうと思ったら悲しくなった。

こうなったら、あの侍女さんには是非私の仕事の妨害を頑張ってもらいたい。

……って思ってたのに。



◇◆◇◆



何故か私は、滞在三日目にして突然部屋にやってきた超ベテラン侍女(たぶん侍女長らしき人)に連れられて、王宮の奥へと進んでいる。

薄暗い廊下は全く人気がなく、不気味なほどに静まり返っている。

肌寒ささえ感じるのは、緊張のためだけじゃなく、私が布面積が少なくやたらと透け感のある所謂セクシーランジェリーの上にガウンを羽織っただけという破廉恥スタイルだからだろう。

ああ、この道がすっごい複雑な迷路になってて永久に辿り着かなきゃいいのに……。

なんて思っても、現実は残酷なもので。着実に王太子殿下の部屋へと近付いていた。


こんな急展開になったのも、みんなあの侍女さんのせい。

どうやらあの侍女さんは王太子殿下に並々ならぬ想いを抱いていたらしく、私の振りをして王太子殿下の寝室に忍びこもうとしていたらしい。コワッ。
非番のはずの侍女さんが夜更けに王太子殿下の寝室付近をうろちょろしてるのを見つけた護衛騎士が、侍女さんを問い詰めたことで全てが発覚した。

そのおかげで芋づる式に私の現状も発覚し、今日あらためて詳しい説明をされ、全身ピカピカに磨き上げられたと思ったら、こんな状況になったのだ。




「それではここでお待ち下さい。まもなく王太子殿下が参られます」


一際豪華な造りの部屋に通され、私は勝手に入っていいのかという戸惑いと、これから行わなきゃならない事への緊張でガチガチのままベッドルームへと足を踏み入れた。

棒立ちのまま待つ事、暫し。

扉が開いたと思ったら、ヒュッと息を飲むような音がした。

出た!!

輝くような金髪に紫紺の瞳。
まだ若干幼い感じを残してはいるけれど、この美しいビジュアルは見覚えがある。

私がここにいることに物凄く驚いている様子で、軽く目を見開いて固まっているけれど、王太子殿下本人で間違いないだろう。

私はいよいよこの時が来たのだと覚悟を決める。

そして。

新たに出会ってしまった攻略対象者、エドヴァルド・ランディールの前に歩み寄ると。


毛足の長いふかふかの絨毯に頭を埋もれさせる勢いで、土下座した。
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