うろ覚え乙女ゲームの世界に転生しました!モブですらないと思ってたのに……。

みなみ ゆうき

文字の大きさ
12 / 40

12.なんか、違う

しおりを挟む

土下座したはいいけれど、何て言ってこの場を納めるか。

さっきまで色々考えていたはずなのに、頭が真っ白になってしまい、言葉が何も出てこない。
何か言わなきゃ。謝罪とか言い訳とか、どうしてここにいるのかっていう説明とか。そうは思うのに、全く言葉が思い浮かばなかった。

っていうか、この場面で私が勝手に喋り出していいのかっていうことすら判断つかないんだけど……。

この世界はわりと厳しい身分制度があるせいか、身分の高い人から先に声をかけられない限り、身分の低い者は勝手に喋り出してはいけない、なんて暗黙のルールとかがあったりする。

だから何の説明も言い訳も聞いてもらえず、問答無用で叩き出されるか、最悪手討ちにされる可能性すら出てきた。

どうしよう……。

相変わらず土下座ポーズのままひとり青くなっていると。

「とりあえず顔を上げて下さい。あなたのその態度を見る限り何か事情がありそうですし、少しお話ししましょうか」

王太子殿下が私のすぐ前に跪き、優しく声を掛けてくれた。

予想と違う反応に内心もの凄く驚きながらも、恐る恐る顔を上げる。
すると。目の前にはとびっきりの美少年スマイルを浮かべた王太子殿下。
さすがメイン攻略キャラ。顔面偏差値ハンパない。
でも何だろう……。気のせいかな……? 
眩しいほどのキラキラ王子スマイルがちょっと胡散臭く見えたんだけど。

「その体勢じゃ僕も話しづらいので、良かったらこちらに座りませんか?」

「え……?」

ベッドを指差した後、王太子殿下の手が私の前に差し伸べられる。その手をとって立つように促されていることはわかったものの、女嫌いだという設定の王子様の手をとっていいのか迷ってしまった。

王太子殿下はそんな私に益々キラキラした、むしろキラキラし過ぎて逆に威圧的にすら感じる笑顔を向ける。

なんかゾワッってした! って思ったのも束の間。

「ねぇ、さっさとしてくれる? 本来だったら問答無用で叩き出してるところを、あなたのその態度に免じてわざわざ話を聞いてあげるって言ってんのに」

これまで優しかった王太子殿下の口調が急に変わった。

え!? もしかして二重人格キャラ!? 
確かに内容うろ覚えだけど、この王子、こんな設定だったっけ!?

激しく動揺する私に、王太子殿下は私にもハッキリとわかるような黒い笑みを浮かべる。

「それとも本当に僕の相手をしてくれるつもりでここに来たの? だったら僕にも考えがあるけど」

「いえッ! 違いますッ!」

慌てて否定するも、王太子殿下は訝しむような目で私を見ていた。
そこで私は漸く、自分がどんな格好をしてこの人の前にいるのかを思い出し、土下座により少し乱れたガウンの袷せを慌てて掻き寄せる。

前世の私は栄養が足りていたにもかかわらず、肝心なところはスレンダーだったが、メリンダは六歳から十五歳までの間、全く栄養が足りてなかったにもかかわらず、ここ数年で一気に遅れを取り戻す勢いで成長し、出るとこは人並みに出て引っ込むところは引っ込んでいるという女性らしい体型になっている。

そんな体型の私がめっちゃやる気満々の格好をして、ベッドルームにいる時点で言い訳出来ない。
何を言っても説得力がない状況。
でも話を聞くって言われたって、一体何を言えばいいわけ!?

ひとりでグルグル考え込む私に、今度は打って変わって慈愛すら感じさせる微笑みを見せる王太子殿下。

そして。

「あのさぁ、こんな事言いたくないんだけど……。ここは密室で、いるのは僕とあなたの二人きり。僕のほうがあなたより遥かに身分が高い。だから僕があなたの事なんて知らないと言えば、知らないことになるんだ。だから、ちゃんとしようね」

全く穢れなんて感じさせない雰囲気で、私を消すのは簡単だとのたまった挙げ句、洗いざらい吐けと脅してくる。

たぶんゲームのメリンダは、懸命に本来の役目を果たそうと頑張った挙げ句、姿を消したんだろうな……。


それにしても。

王太子殿下って、もっと正統派ヒーローって感じの爽やかイケメンキャラだと勝手に思ってたんだけど……。

笑顔で脅すとか、イメージ違い過ぎやしませんか……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...