僕と君は想ってる

天野睡

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未琴と美琴

未琴と美琴

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パカパカパカ
 履き慣れたシューズと共に一歩ずつ階段を登る。窓の外に耳を傾けてみると野球部のバットの心地よい音と吹奏楽部の演奏の音が耳に聞こえる。
けれど、ここにいる生徒は僕一人だけだ。
ギギギ
古びた扉を開けるとそこは屋上だ。
 本来は立ち入り禁止でしっかりと鍵はかけてあるでもこの公立神島高校の隅にある旧神島高校校舎の屋上の鍵は施設自体が古いのか少し力を加えてあげれば簡単に扉が開いてしまう。
僕は自分で言うのもなんだかこの学校では優等生という立ち位置なのだが、なぜそんな僕が校則違反になることをしてるのか。それは死ぬためである。
 理由は単純に疲れたからだ。今いる環境に疲れてしまったのだ。変えられる力もなく勇気もない僕は死に希望を見出してしまった。
 柵についた。春になったがまだ少し風は強い。僕はある一枚の手紙を懐から取り出した。
それは姉が書いた手紙である。
「 ごめんね、こんな弱いお姉ちゃんで君を守るそう誓ったのに本当にごめんねあなたは強くてお願い。」
姉は一年前に飛び降りた。第一発見者は僕だった。姉は僕にとって唯一心を許せる相手だった。
でもあの日、 僕は一人ぼっちになった。
「お姉ちゃんこの一年はお姉ちゃんの言葉を胸に生きていたけど、もう限界きちゃった。生きてってお願いされたけどごめんね。」
柵を飛び越えて飛び降りようとした時だった。
ギギギ
扉を開ける音が聞こえた。
僕は教師に見つかったと思って恐る恐る振り返る。
「ねぇ、君こんなところで何をしているの?」
そこにいたのは知らない女の子だった 身長は低めで丸い目にぷくっとした口髪はショートヘアの子だった 。
「君こそなにを?」
「僕は校舎を探検しに来たんだ。」
 女の子は言った。
「探検? 確かにうちの制服じゃないけれど。」
「実は僕、明日からここの学校に通うことになったんだ。」僕はかわいそうだと思った。ここの生徒が自殺した翌日に転校か。 まあその生徒は僕なんだけれど。
「確かここの校舎では屋上立ち入り禁止だったはずなのですが。」
なんで君は来たんだ?
しかし、困ったなぁ。
なんて言うべきなんだろう。「死のうとしてました」とは言えないよな。
「僕は悪い子だね校則を破っているんだ。」
「この学校にも不良なんているんですね。」
不良と例えるか。それならそうしておこう。
「そうだよ。だからもうどっかに行ってくれ。」
僕は冷たく言い放つ。
「ひどいなぁー。僕を追い出すなんて。」
そう言いながら出口に歩いて行く。
「じゃあ明日学校で会えたらまたね。」
パタパタパタ
女の子は屋上から降りていった。
よし入ったな
僕は柵をもう1度乗り越えようとする。
今度は邪魔は入らないように祈る。
かなり高く感じる。体が震える。でもあと一歩踏み出すだけだ。
カウントダウンをしよう。
自分にそう言い聞かせる。
三・二
一を言う時だった。
「ちょっと待ったー。」
屋上の入り口から大きな声で叫ばれる。
「おぅと。」
急に大声を出されたため僕落ちそうになる。
いやまぁ。それでもいいのだが。
「待った。今君なにしようとしていたの?」
さっきの女の子だった
「何言っているの?」
僕はとぼけてみせる。
「君今確実に飛び降りようとしてたよね。」
「な なんのことかな。」
 僕はもう一度とぼけてみせるが、心の中ではすごく焦っている。
「誤魔化しても無駄ですよ。今、飛ぼうとしていましたよね。」
もう誤魔化せないようだ。
まずいことになったなどうすればいいんだ。
僕は飛び降りる恐怖が戻ってきた。さっきまでなかったが思考というプロセスを挟んだことによって恐怖が戻ってきた。
こっち側にいることがもう怖くなった僕はすぐにこっちにしまっている戻ってきてしまった。
「何をしていたんですか?」
戻るのを待っていたかのように再び質問してくる。僕は必死に言い訳を考えるが何も思いつかなかった。
「 何をしようとしていたんですか。
「死のうとしてました 」
誤魔化すのは無理になった僕は本当のことを言ってしまった。
「ほら、僕の言った通りだった。」
「なんで戻ってきたの?」
僕は消えるまで待ってたんだ見ていたなんてことありえないと思う。
「名前聞こうと思ってね。戻ってきたんだよ、そこに向こう側に君がいるからびっくりしちゃったよ。それよりなんで死のうとしてたの?」
言えるわけがなかった。
「まぁ。死のうとするってことはよっぽどの理由があるんだろうね。だから詳しく聞かないよ。」
ありがたいことだった
「でも、死ぬのはだめだよ。」
ピシッと指を立てられる。
彼女の言葉はきっと正しいのだと思う。でも僕にはその言葉は僕に届くことはないその言葉には意味がない。
僕は姉さんの言葉を思い出していた。
~~~
「言葉には心に残る言葉っていうのがある あるんだよ。」
「お姉ちゃんがあるの?」
僕は姉さんに訪ねる。
「私にはないかな。」
「 じゃあなんであるって分かるの?」
「とある人に聞いたんだよ。」
そのとある人について入姉は結局僕に教えてはくれなかった。でもその言葉には説得力があった。
いつか僕も出会えると思っていた。
でも先に、限界が来てしまった。
「まずは屋上から出ようよ。」
そう言うと手を引っ張ろうと手を伸ばしてくる。
パンッ
僕はその手を払いのけた。
「 いい加減にしろよ!」
僕はイライラしていた。
「黙ってれば何だよ。」
言葉遣いも荒くなっていく
「どうしたの?」
訳が分からないとでも言うように困った顔を彼女はする。
それが余計に僕をイラつかせる。
「僕のこと何も知らないだろうが、こっちが黙ってれば なに助けて気になっているんだよ。この十七年間お前は俺がどうやっていたかなんて知らないだろうがよ。なあ、教えてやるよ。地獄だったよ。この十七年間僕は地獄だったよ。死んだ方が楽なんだよ。死ぬなだ、ふざけんな!俺にとって死ぬことが快楽だ、ここよりずっとマシなはずだ。」
パシッ
僕はきっと彼女にビンタされたのだと思う。 
「いってぇな!」
僕はビンタされた方の頬をさすりながら言う。
「そっちこそなんだ。ふざけるな残された側の気持ちを考えてみろよ、確かに君の人生で見たこともないし今聞くつもりもない。それに僕は助けたなんて思ってない。」
 僕は我に返った。多分きっと彼女は残された側の人間なんだと直感的に思った。
僕は彼女の顔を冷静に見ると笑いがこみ上げてきた。例えるならアドレナリンが出まくっている顔だった
「こら、お前に何をしとるんだ!」
先生が怒鳴りながらやってきた。
そりゃ大声で喧嘩していたんだ誰か気づきそうなものだよな。
「すいません先生。彼に学校を案内してもらっているんです。」
さっきまであんだけ怒っていたはずなのに 、真反対の声を出した。
よく切り替えられると感心してしまった。「神城か。まあお前なら問題ないが、屋上は立ち入り禁止で鍵がかかっているはずだか。」
「ここ錆びてるみたいですね。」
彼女は扉を指摘する。
「本当だ、これは知らなかった教えてくれてありがとうじゃあ神城案内頼んだぞ。」
そう言うと先生は去っていった 
僕の優等生っぷりもたまには役に立つらしい。
しかし、それは同時に困ったことになった。 今僕が一番の確率で死ねると思っている場所にいけなくなってしまった。 「昔々あるところに一人の女の子がいました。その女の子には親友と呼べる人がいました。
でも、その親友は女の子が中学3年生のとき女の子の目の前で飛び降りましたさ。」 突然そんな話をされた 。
きっと彼女の昔の話だとすぐに分かった。 「今その話をして僕にどうして欲しいわけ?」
「さっき言ったでしょ。残された側の気持ちになってって。
だからって僕と何の関係があるんだよ
「似ているんだ。その親友と君がだから僕は止めたいんだ家族だって君に死んでほしくないと思ってるよ。」
「そうだろうね。」
 あの家にはもう子供僕一人だけだし。
 「そう思うなら死んじゃだめでしょ。・・・ あっ、そうだ。」
いきなり彼女は思いついたように手を鳴らした。
「じゃあは僕は君を旧死なせないようにしよう。この世界の素晴らしいところを君の教えてあげるよ。」
次の言葉に、僕は姉の言葉を思い出した。「言葉には心に残る言葉もあるんだよ。」そう姉は言っていた。
「僕は君を未来に連れ出してあげる。」
彼女の言葉に僕は一瞬光が見えた気がした。
「分かった 。・・・一年だ、一年は待ってやる。それでも状況が変わらなかったら ?」
「うーん、そうだなぁー。」
正直変わるなんて最初から思っていない、きっと彼女もそのつもりのその場しのぎの言葉だろうと思っていた。
「じゃあ一年で変えられなかったら僕も君と一緒に死んであげる。」
僕は耳を疑った。
さっきまで命の大切さを説いていたのは、自分だったじゃないか。
「何を言っているの?」
思わず聞き返してしまう。
「だから一緒に死ぬって言ってんの自分の言葉にはきちんと責任を取らなくちゃね。」
「それは駄目だ!」
僕は否定する。
「君に迷惑がかかる。それこそお前の家族はどうなるんだ!」
「心配しなくていいよ。」
何故か彼女は断言する。その顔は寂しそうだった。
「じゃあ契約書作ろうか。」
そう言うと彼女はスケッチブックを取り出した。そして契約書を書き出していく。 内容はとてもシンプルだった。
 1年間の間 僕が君の事を変えることができなければ 一緒に死んであげる 
そのたった一文。それだけを書いた。
「これでできた最後に二人の証が欲しいな。」
僕はたまたま持っていたある一つのものを思い出した。
「これを使ったら。」
僕はカバンからそれを取り出す。
「ぷふ。なんでそれ持ってるの。」
僕が取り出したのは口紅だった。
これは元々姉さんのものだった。
「たまたま鞄に入っていたのを思い出したんだ。それよりも。」
僕は口紅を親指につけてその契約書に拇印する。
よくよく考えると何で乗り気なんだ僕は。 「それいいね。」
彼女も口紅を取り出し拇印を押す。
「これからよろしくね。」
なぜか彼女は不敵な笑みを浮かべている。 「まず自己紹介をしようか。まずは僕からね。」
僕は名前を聞いた驚いた 。
「西条美琴よろしくね。」
「神城未琴だ。」
「すごいね「みこと」って名前一緒だ。」 僕もとても驚いていた。
 こうして未琴と美琴は出会った。これを偶然や奇跡で起きたものだとはとても思えない。
後日談
翌日
 転校と言っていたが一体どこのクラスになるのだろうと考えていた。この学年は全四クラスあるため他のクラスになった際はどうするつもりなのだろう。
「今日は皆さんに転校生を紹介します。」
「西条美琴ですよろしくお願いします。」 どうやらこのクラスらしい。
「席はみんなで席替えして決めるよ。」 僕は一番窓際の後ろから二番目というなかなかの席を取れた。
隣は真面目な人がいいな。うるさいの嫌だし。
「よろしくお願いします。」
隣の席に来たのは西条美琴だった。
本当に偶然や奇跡だとはとても思えない。
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