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第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は
第40話 蓄積された疲労は重たい
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【前回】与えられる温もりに苦しむティア
第40話 蓄積された疲労は重たい
――それでいつの日か、壊れてしまわないように。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
ぼふっ、とかなり肌触りも良く、ひんやりとしていて気持ち良く、そして何よりボリュームのある何かに体が倒れた感覚でようやっと落ちていたらしい瞼が持ち上がる。
場所はいつもの運動場で、どうやら完全に意識が飛んでいたらしい俺はそのまま体が文字通り倒れていっていたらしく、最初から近くに居たのか。それとも何処かのタイミングで姿を現したのか、≪深淵からの呼び声≫に支えられた事で何とか地面に身を委ねる事は避けられたらしい。
……絶対こいつの所為で体が睡眠時間を意識するようになりやがったな。
「……ふわぁ。」
【眠たいの?】
「……眠くない。」
【嘘は良くないわよ、主様。だって貴方、さっきまで寝てたじゃない。】
「……気付いたら意識が落ちていただけだ。」
「せんせ、大丈夫?」
「何処か調子悪いんですか……?」
あぁそうか、この場所だとこいつらが居て普通か。
「……あぁ、問題ない。少し……睡眠不足が祟っているだけだ。」
「そうなんですか? じゃあ今日はもう授業終わりにします?」
「それだと色々困るだろう、お前達が……。」
「先生の健康が最優先です!」
「せんせ、今ルシウスが飲み物買ってきてくれてるから1回日陰に行きましょう。」
「先生、お手をどうぞ。何方にせよ、こんな炎天下の中で眠り込むような体調でこのままここに居るのは危険ですよ、早く。もっと体調を崩される前に。」
「……あぁ、悪い。」
どうやら俺が思っている以上に体調は芳しくないらしい。
少し立ち上がっただけで酷い眩暈に襲われ、思わずバランスを崩した際にそっと≪深淵からの呼び声≫に支えてもらいながらもようやっと日陰である廊下までやってこれた。
ただしかし、それはそれとして問題は知らぬ間に寝落ちしていた結果にまぁまぁ体調を崩しているようで、ほんの数m歩くだけでもこのありさまだ、医者に見せればかなりの勢いで怒られる事だろう。
不甲斐ないが、このまま大人しくルシウスの帰還を待つべきだろう。
ったく、良い大人がまさか子供の世話になるとはな。
何とも情けない事だろう。
良い大人どころか、こいつらに比べればそれこそ途方もない程に長く生きている身の癖にこれじゃあ情けない限りだ。
これでは陛下に合わせる顔もなく、特に他人や大人の様子に敏感である子供や燐獣達に見抜かれる程度では恐らく後々ジーラ達にも見抜かれる可能性は高いと見て良いだろう。
本来であれば暑いはずの≪深淵の呼び声≫の毛並みは非常に心地良く、行儀悪くもコンクリートの廊下の柄に座りながらも≪深海の呼び声≫に身を預けて座り込むのが限界だ。
身動ぎする事も、体を起こす事も、当然ながら立ち上がる事ですらも難しい。
大方例年通りの熱中症か、熱射病か、はたまた脱水症状かのどれかに値するとは思うのだがそれにしても、まさか夏も本腰でないと言うのにもうこれでは本当に立つ瀬がない。
絶対ここの所働き詰めだった所為だよな……。
分かっている、体調不良を起こして仕事に支障をきたすぐらいであれば陛下の言葉やディアルの言葉に甘えてしまえば良いだけだ。
なのにそれを選択せず、それを拒んだのは他でもない俺なのだから……と、今更甘えるのが嫌だと意地を張っている俺が悪い事ぐらいわざわざ言葉にされなくとも分かっている事だ。
「先生!」
「ルシウス……。」
「お帰り、良さそうなのあった?」
「面倒な事とか……なかった?」
「あぁ、特に問題なく。とりあえずスポーツドリンクを買ってきた。念の為に2本目も用意したからな。」
「……あぁ、ありがとう。」
「とりあえずちゃんと水分補給しろよ、先生。幾ら俺達よりも頑丈だからと言って人間の病気には罹るんだろう?」
「まぁ……それはそうだが。」
「ならちゃんと対策しないと駄目だぞ。後、次からはタオルも持ってきた方が良いんじゃないか? 帽子を被るとか。」
シャル並みの過保護がうざい……!!
と、言いたいのだが言ってしまった所で、正論でブーメランされて終わるのがオチだ。
ここは大人しくルシウスがわざわざ用意してきてくれたスポーツドリンクを飲みつつ、変に追及される事から距離を取る為に目を逸らしておくべきだろう。
大体、ここで変な事を口走ればそのまま変な事に巻き込まれたり、はたまた正直言って出来れば答えたくない今回の原因等々を深掘りされそうで好かない。
いやまぁそうでなくとも軽くは問われるのだろうが。
「……ねぇ、せんせ。せんせ、今日はお疲れなんですか?」
「……。」
「何か無理してはるとか?」
「……実は体調不良を隠してたりするんじゃないだろうな。」
「……いや、少し本職の方が忙しいだけだ。睡眠時間がそんなになかったりとか、調べないといけない事があったりとか、問題を起こす貴族が多くて処罰やら捕縛やらをしなくちゃいけなくて色々とやる事が多いんだ……。」
【だから主様、私を最近呼んでくれないんだ……。】
「……時々悩みはするんだがな。たった数十分程度の仮眠でもとは思うが……生憎、俺はそういう事が出来ない体質だからな。≪深淵からの呼び声≫、数十分だけ寝かせて起こすって可能か? 出来れば周辺の警戒も頼めれば嬉しいんだが。」
【勿論余裕よ、そんな事。短くても良いから何度も呼び出して?】
「……なら、これからは極力そうするさ。」
これで少しはマシになれば良いんだがなぁ……。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第41話 こんな俺達でも出来る事を」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
第40話 蓄積された疲労は重たい
――それでいつの日か、壊れてしまわないように。
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ぼふっ、とかなり肌触りも良く、ひんやりとしていて気持ち良く、そして何よりボリュームのある何かに体が倒れた感覚でようやっと落ちていたらしい瞼が持ち上がる。
場所はいつもの運動場で、どうやら完全に意識が飛んでいたらしい俺はそのまま体が文字通り倒れていっていたらしく、最初から近くに居たのか。それとも何処かのタイミングで姿を現したのか、≪深淵からの呼び声≫に支えられた事で何とか地面に身を委ねる事は避けられたらしい。
……絶対こいつの所為で体が睡眠時間を意識するようになりやがったな。
「……ふわぁ。」
【眠たいの?】
「……眠くない。」
【嘘は良くないわよ、主様。だって貴方、さっきまで寝てたじゃない。】
「……気付いたら意識が落ちていただけだ。」
「せんせ、大丈夫?」
「何処か調子悪いんですか……?」
あぁそうか、この場所だとこいつらが居て普通か。
「……あぁ、問題ない。少し……睡眠不足が祟っているだけだ。」
「そうなんですか? じゃあ今日はもう授業終わりにします?」
「それだと色々困るだろう、お前達が……。」
「先生の健康が最優先です!」
「せんせ、今ルシウスが飲み物買ってきてくれてるから1回日陰に行きましょう。」
「先生、お手をどうぞ。何方にせよ、こんな炎天下の中で眠り込むような体調でこのままここに居るのは危険ですよ、早く。もっと体調を崩される前に。」
「……あぁ、悪い。」
どうやら俺が思っている以上に体調は芳しくないらしい。
少し立ち上がっただけで酷い眩暈に襲われ、思わずバランスを崩した際にそっと≪深淵からの呼び声≫に支えてもらいながらもようやっと日陰である廊下までやってこれた。
ただしかし、それはそれとして問題は知らぬ間に寝落ちしていた結果にまぁまぁ体調を崩しているようで、ほんの数m歩くだけでもこのありさまだ、医者に見せればかなりの勢いで怒られる事だろう。
不甲斐ないが、このまま大人しくルシウスの帰還を待つべきだろう。
ったく、良い大人がまさか子供の世話になるとはな。
何とも情けない事だろう。
良い大人どころか、こいつらに比べればそれこそ途方もない程に長く生きている身の癖にこれじゃあ情けない限りだ。
これでは陛下に合わせる顔もなく、特に他人や大人の様子に敏感である子供や燐獣達に見抜かれる程度では恐らく後々ジーラ達にも見抜かれる可能性は高いと見て良いだろう。
本来であれば暑いはずの≪深淵の呼び声≫の毛並みは非常に心地良く、行儀悪くもコンクリートの廊下の柄に座りながらも≪深海の呼び声≫に身を預けて座り込むのが限界だ。
身動ぎする事も、体を起こす事も、当然ながら立ち上がる事ですらも難しい。
大方例年通りの熱中症か、熱射病か、はたまた脱水症状かのどれかに値するとは思うのだがそれにしても、まさか夏も本腰でないと言うのにもうこれでは本当に立つ瀬がない。
絶対ここの所働き詰めだった所為だよな……。
分かっている、体調不良を起こして仕事に支障をきたすぐらいであれば陛下の言葉やディアルの言葉に甘えてしまえば良いだけだ。
なのにそれを選択せず、それを拒んだのは他でもない俺なのだから……と、今更甘えるのが嫌だと意地を張っている俺が悪い事ぐらいわざわざ言葉にされなくとも分かっている事だ。
「先生!」
「ルシウス……。」
「お帰り、良さそうなのあった?」
「面倒な事とか……なかった?」
「あぁ、特に問題なく。とりあえずスポーツドリンクを買ってきた。念の為に2本目も用意したからな。」
「……あぁ、ありがとう。」
「とりあえずちゃんと水分補給しろよ、先生。幾ら俺達よりも頑丈だからと言って人間の病気には罹るんだろう?」
「まぁ……それはそうだが。」
「ならちゃんと対策しないと駄目だぞ。後、次からはタオルも持ってきた方が良いんじゃないか? 帽子を被るとか。」
シャル並みの過保護がうざい……!!
と、言いたいのだが言ってしまった所で、正論でブーメランされて終わるのがオチだ。
ここは大人しくルシウスがわざわざ用意してきてくれたスポーツドリンクを飲みつつ、変に追及される事から距離を取る為に目を逸らしておくべきだろう。
大体、ここで変な事を口走ればそのまま変な事に巻き込まれたり、はたまた正直言って出来れば答えたくない今回の原因等々を深掘りされそうで好かない。
いやまぁそうでなくとも軽くは問われるのだろうが。
「……ねぇ、せんせ。せんせ、今日はお疲れなんですか?」
「……。」
「何か無理してはるとか?」
「……実は体調不良を隠してたりするんじゃないだろうな。」
「……いや、少し本職の方が忙しいだけだ。睡眠時間がそんなになかったりとか、調べないといけない事があったりとか、問題を起こす貴族が多くて処罰やら捕縛やらをしなくちゃいけなくて色々とやる事が多いんだ……。」
【だから主様、私を最近呼んでくれないんだ……。】
「……時々悩みはするんだがな。たった数十分程度の仮眠でもとは思うが……生憎、俺はそういう事が出来ない体質だからな。≪深淵からの呼び声≫、数十分だけ寝かせて起こすって可能か? 出来れば周辺の警戒も頼めれば嬉しいんだが。」
【勿論余裕よ、そんな事。短くても良いから何度も呼び出して?】
「……なら、これからは極力そうするさ。」
これで少しはマシになれば良いんだがなぁ……。
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