夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

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第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は

第59話 出る杭はとことん叩け

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【前回】職員会議に引き摺られるティア
第59話 出る杭はとことん叩け

――されるがままは身を滅ぼす。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


「では、職員会議を始める。」
「まず、最初の議題として体育祭のお話を。基本的には例年通り、身体能力の向上を目的とした身体強化系を除く全ての魔法の行使を禁止。生徒及び教師、来賓の方々に攻撃をした場合には厳重注意と停学。死亡させた場合には今回、都合の良い事にグレイブ先生もいらっしゃいますので其方に任せようかと。」

 非魔法学校での事件、事故は過失が原因な事が多い。整備不良や故意に計画された物だったりするのだが殆どだが魔法学校では話が大分変わってくる。
 俺個人の担当としてはネビュレイラハウロ帝国の首都、フィーレル街の治安維持や戦争が始まれば最前線に立って敵を蹴散らすのが仕事。あんまり犯罪者を黙らせて牢獄にぶち込むような真似は殆ど経験がない。
 その為、考えられる二次災害として俺が加減を間違えて犯人を殺してしまう事が挙げられるのでまぁ専用の魔法を作ったり、いつも皆が使っている捕縛用の道具を借りてくる必要がある。

 ただのパンチでも殺せてしまう程に人間ってのは脆い生き物だからなぁ……。もうちょっと力加減についての調整もこれからの課題だな。

 その他に考慮すべき問題として、本職が殺戮稼業である関係から妙に目立つ訳にはいかない。教員だけや一部生徒だけならまだ何とかなるが、多少なれど保護者までもが顔を出すとなれば話は大きく変わる。
 ディアルやティアの事だからその辺の根回しは済んでいるであろうが、念の為に言っておくに越した事はない。

「言わずとも分かるかと思いますが、俺は学校行事には原則関わりません。誰の目にからも映らない範囲でのサポートは行いますので」
「ふざけるな!!」

 は?

 いつの時代も頭に血が昇り易いタイプと言うのは面倒で不快極まりない。しかもその殆どが下らない自己満足や我儘に因る物が多く、幾ら改善を促した所で碌に意味を成さないと来た。
 今目の前で突如として怒号と共に立ち上がったあの男もきっとそれらの類なんだろう。弁明ぐらいは聞いてやっても良いが、あまりにも阿呆な意見であれば一撃喰らわしてやるのも辞さないつもりだが。

「……何か。俺はあくまで校長と契約時に、幾つかの条件を提示した上でこの学校の非常勤教師として在籍しているだけの話。何も協力しないと言っている訳ではないのですから多少なりとも頭を冷やし、冷静な言葉選びでも心掛けられてはどうでしょうか。」
「俺の仕事を奪っていながら年中行事に参加しないなどどういうつもりだ!? 散々俺を馬鹿にしておいてまだ俺を馬鹿にする気か!?」

 いや、お前の事など至極どうでも良いんだが。俺はあくまでディアルとシャルの我儘に付き合ってるだけだし。

 周りを見るにこの男の癇癪かんしゃくは初めてではないらしい。皆思い思いに溜息を零したり、呆れた様子で眺めたりとかなり自由なご様子だ。
 出来れば向こうに構ってもらえばとも思う物の、それが出来れば苦労しない話でもある。

〔グレイブ先生。〕
〔……?〕
〔アダール先生は元々魔法学を担当していたんですよ。……ただ、少し乱暴で雑な所があったのでグレイブ先生が来たのを良い節目としてシャルロット先生が魔法学を担当して貴方が特講魔法学を担当する事になったんですよ。〕

 あぁそう。……だから?

 なんて言葉を口に出せばわざわざ耳打ちしてくださったこの教師に悪い。控えめに頭を下げるも勿論腑には落ちない。
 この世は結局実力主義。どれだけ綺麗なお言葉を並べても世界は何1つ変わらない、むしろ都合の良い夢に溺れ過ぎて実質的な奴隷と化すのがオチだ。
 もしここが軍隊であれば再教育が施され、それでも問題を起こすようなら即首となる。物理的に、頭だけの生き物だった成れの果てへ。この程度の輩に何を期待しているのか知らないが、さっさと切り捨ててしまった方が色々と都合が良いだろうに。

 しょうがない、切り落とすか。こういうのは子供の目が届く所に居ない方が良い。

「お生憎、これでも俺は学校長に無理を言われ、副業と言う形で。ダブルワークと言う形でここに居ますから? 仕事を奪ったどうこうと言うよりも、単に貴方の能力不足だと学校長がご判断されただけなのでは思いますがね、俺は。」
「んな」
「そもそも俺の本職と言うのは言わば女帝陛下お抱えの対犯罪、対戦闘の大掃除人。……場合によっては無能の排除や御家取り壊し、国外追放の権限ですらもある訳です。」
「……何が言いたい。」
「其方がどれだけ俺を嫌おうと、どれだけ俺を認められずともこの学校の敷地から出てしまえば貴方を不敬罪で牢獄にぶち込む事も出来ますが。そうなればその他の余罪も確かめる事になりますし、俺としては其方を粗方漁りまくる方が得意ですし、俺と喧嘩がしたいならお好きにどうぞ。幾らでもお相手差し上げましょう。」
「ちょ、ティア!? 流石にそれは」
「上等だ、何方が優秀か見せてやる。」
「だそうだ、学校長。決闘の審判を。」
「……殺すのだけは駄目からな。」
「分かってるさ。ちゃんと分かってる。」

 そもそも、俺が殺せる相手は陛下が許可した相手だけだからな。殺したくても手なんてまだ下せないから安心して見とけ。


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第60話 せいぜい光栄に思いながら果てていけ」

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