夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

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第一章:一年生第一学期 魔法の深淵と神髄に触れる資格は

第77話 いつの日か、その剣は届くだろうか

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【前回】トルニアの実技試験を開始した
第77話 いつの日か、その剣は届くだろうか

――伸びしろのあるお前の攻撃なら、いつか。

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「さて、残り時間も差し迫ってきた。結構ギリギリだが……魔力残量もそれなりだろうなぁ、その様子だと。一応、途中で降りる事も出来るがどうする?」
「……先生。」
「うん。」
「最後のチャンス、見とってください。……俺は追い詰められる方が強いので。」

 ふん、成程。そう来たか。

「ではトルニア、お前が今回の試験内容を見事成功させなかった場合、お前を俺の授業から外す。それと同時に、二度と俺の授業に参加する事も許さん。」
「せ、せんせ。せんせ、それは……。……っ。」
「先生。それは幾ら何でも横暴だぞ。先生が普段から言っているように、授業と言う物は」
「いや、ええ。ええねん。……先生、ありがとうございます。俺、頑張れそうや。」
「言葉ではなく行動で示してもらおうか、トルニア。……お前は更にまた贅沢な事に、俺にわざわざ寄り添わせたんだからな。これで何も残せないのであればお前は本当にただの替えが利く駒だ。」
「おん、せや。そうや。……こんなんも乗り越えられへんで、何が天才か。」

 先の言葉は何も口から出まかせではなかったようで、一般的に見ればへこむ事の方が多いそれで本当にこやつは自信が。覚悟を決められたらしい。
 あんなにも不安そうだった目は焔のように爛々として。どうせそんな状態で魔法を編んだ所で100%失敗しそうな物だったが今はその精神も酷く安定し。多少乱れていた呼吸もかなり落ち着いているのでそれこそ思考が乱れるような事さえなければ魔法の行使自体は上手く行えるだろう。
 問題は、その魔法だが。
 ただでさえ集中力を要する魔法と言う概念。しかも、それを1つ1つ細かく制御するつもりだろう、あやつは。そこまでしなくとも良いのに。
 しかし、ルシウス。トルニア。セディルズの中では唯一自らに枷を課せ。見事それを乗り越えてめきめきと成長するこいつはありとあらゆる事象において“難易度を選べない”立場に居る俺でも素直に称賛したいぐらいの潔さと男らしさがある。

 この3人の中では唯一、俺が直々に推薦状を書いてやっても良いと思ってしまうぐらいの芯の強さだ。

 何事でもそうだが、結局はその想いの芯の強さがなければいつか、何処かで必ず挫折する。そして、その大半はその挫折を乗り越えられずに野へ下る。
 それでは面白くない。一度志したのであればそれで人生をボロボロにするぐらい、ズタズタにするぐらい、それ以外何も見えていないと。それ以外何も見る気などございませんと断言出来るぐらいの情熱を見せてくれなければ此方も見るに堪えないただの子供の遊戯にしか見えない。

 とはいえ、それが必ず成就出来るほどに世界が甘くないのも分かっているが。

 それでも観客というものはいつだってそういう無理難題を要求してはそれが叶えられる様を、夢を見たいと乞う。随分と無責任で、随分と楽観的で、人を人として認識せずに映画でも見るかのような雑さで他者を扱う。
 そこに自覚や実感なんて物は必要ない。ただ、無感情に事実だけを並べればそうなるだけだ。自分が認めたくないという失敗しか生み出さない感情論で己の知能レベルの低さをひたすらに自己紹介するだけ。

「……だからこそ、こういう本物はいつだって輝いて見える。」

 馬鹿にされてもへこたれない。
 己の知能レベルの低さを自己紹介していると言われても、それでも周りの言葉など一切その耳に入れず。仮に入ったとしても全てを右から左に聞き流してただ我が道を往く。
 そんな堂々とした様こそが用意された脚本よりも美しく、そして何より輝しく、その者にしか見い出せない唯一無二の才能となる。
 先程はあんなにも苦労していたというのにあっさり再現してみせた30本の多種多様、形状も色も様々な剣達。無理をせずに本数を減らせば良いのに、なんて野暮だろう。
 事実、あいつはその全てを綺麗に維持している。先程のように剣の端がぱらぱらと砂に戻って大地へ落ちる訳でもなく、所々形状や色が不安定になって形をなくしかけたりするような事もない。

「先生!!」
「ん?」
「怪我、せんとってくださいよ!!」

 ふんっ。

「是非ともしてみたいもんだなぁ、特にお前のその刃で。」

 本当に、心の底からそう思う。

 これでもそれなりの付き合いだ。長いとは言えないが短いとも言えないあいつも、これが本心なのかそれともあいつを煽る為に言っているかの言葉なのか分からないだろう。ただ、お世辞ではない事だけは分かっている。
 一度全ての剣が1周大きく回ったかと思えば30種類の軌道パターンで此方へ飛んでくる。矢のように飛んでくる物、弾のように飛んでくる物、舞いながら飛んでくる物と、ここまで来れば制御よりもあやつの想像力の方が滑稽に見えてくる。

 まぁ、それでもそんな遅い物が俺に当たる訳などないがな。

 ゆったりと深く椅子に腰を掛け。腕も足も組んだまま、右足の靴の先にだけ多少魔力を纏わせて大気を撫でるように揮う。それだけで、あいつが作った剣は無効化されていく。
 これはまだこいつらの前では見せた事も、教えた事も、何なら応用方法ですらも思いつかない程の代物ではあるが何かとぶっ飛んでいるこいつらの事だ。もしかすると、良い意味で俺の期待を。予想を裏切ってくれるかもしれない。
 要は、磁石のS極とN極のような物。異なる性質同士であれば惹かれ合うのが常である物を、敢えて飛んでくる武器に合わせてその性質をコロコロと変え、本来であればバックアップするそれを粉砕するように魔法式を編み込んであるので間髪入れずに飛んでくる剣達はその辺りの対策を一切していなかったのもあり、蚊でも叩き落とすかのように当たり前のように砂へと還っていく。

 まぁしかし良い腕なのは確かだ。

「っ、も~先生強過ぎやろ!!」
「ははは!!」
「……せめて一発ぐらい当たってくれてもええやん。」
「そんな遅い弾に当たってやるほど我慢強くないっての。」


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第78話 魔法と踊れ、魔法と舞え」

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