夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

文字の大きさ
122 / 192
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて

第119話 いざ行かん、海の旅

しおりを挟む
【前回】イルグ達にごり押されてしまった
第119話 いざ行かん、海の旅

――重力下の小城へ。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


 コバルトブルーの綺麗な海。日光に照らされてキラキラと輝く水面はまるでその手の宝石を散りばめた絨毯のようで、俺が海を怖がっている理由を疑う者も居るかもしれない。

 いや、それはあまりにも短絡的過ぎるか。

 何事でもそうだが、安全面をしっかりと考慮した上で。はしゃぎ過ぎないように注意すれば、海という物はそこまで脅威となりえない。……基本的には。
 ビーチだってそうだった、俺が恐れている鮫だって必ずしも水中に張られている鮫侵入防止用ネットの類が必ず破られる訳でも。必ず通過されてしまう訳でもない。
 その他にも、見たら直ぐに警察に一報を入れなければならない危険生物の類が必ずしもここに居る訳ではない。勿論、居ないとも限らないが。
 現実逃避はともかく。視界の端でガキ共が騒ぐ中、彼らの視線の先へと目をやれば俺にとってはあまりにもいつも通り過ぎる光景が拡がっている。
 海の上に浮かぶ、小さな船。勿論それは“海に比べれば”という前提で小さいと称してはいるが、これでもれっきとした魔導駆逐艦。従来の船舶とは異なり、魔石や魔鉱石を燃料に。つまりは、魔力で動いているのもあって魔法師、魔導士が居れば一生燃料が尽きる事はなく。同時に、環境汚染も一切行わない画期的かつ自然に優しいこの船に乗って第6別荘島へと向かう。
 その分生産は大変なのだが。
 一応は軍用というのもあり、セントリーや魔法砲台なのも幾つか積んである。セキュリティ上、予め乗船する者の生体認証及び魔力認証を済ませていなければ起動しない仕組みになっており、うっかりルシウス達が興味の赴くままに作動させてしまうような事はないようにはなっている。

 今回は撃たずに済んでくれる事を願おうか。

「ぉお~!! 先生、あれが今回俺達の出る船か!?」
「え、でか。待って待って。先生、あれ漁船とかクルーズ船とかでもなくて、マジの戦艦みたいなもんやん。え、何あれ。」
「……巡洋艦?」
「ちょっと貴方達、街中なのにはしたないわよ。師匠に恥を掻かせる気?」
「でぃ、ディール。折角の夏休みなんだから、そんなにつ、つんけんしなくても……。」
「……まぁ、初めて見る物にははしゃぐもんなんじゃないか。普通の子供は。」
「ティア、もう疲れてるでしょ。」
「……暑いんだよ。俺はさっさと宛がわれた俺の部屋の窓から外を眺めながら煙草を嗜みたいんだ。」
「いつも通りだなぁ、本当に。」
「ジーラ。」
「分かってる、あの子達の見張りでしょ? 僕が喜んで引き受けるよ。」
「……ん。」

 正直な話をすると、今日を馬鹿みたいに楽しみにしていた某2人組が朝5時に起きてきた所為でかなり騒がしく、とんでもなく眠い。
 それこそ、少しでも気を抜けば睡魔に敗北してしまいそうなのも相まってずっと煙草を吸っているのもあってそれはもう不機嫌に見えるだろう。別にどうでも良いのだが。
 にしても、この真夏日に。この日光の元で日傘だけ差して歩いてもアスファルトから照り返してくる日光を弾く事は難しい。
 無論、魔法を使えば何とか出来なくもないが、だからと言ってこんな街中でむやみやたらに魔法を使うのは七漣星規定により禁じられている。

 生活魔法なら……って言ってもこれは俺のオリジナルだし、結局は物に魔法を付与するのが限界なんだよなぁ。

「やっぱり師匠、夏は天敵なのね。」
「あぁ。俺は夜の民だからな。暑いのは勿論だがそもそも日中は弱いんだよ。」
「てぃ~あ。その単語、あんまり口にしない方が良いよ。」
稀少種狩りレベン・コレクターの件か? 馬鹿言え、俺があんな奴に攫われる訳がない。」
「まぁそこは否定しないけど。」
「レベン・コレクター……? って何々?」
「稀少な民族や種族を何処からか攫ってきて、闇オークションで競売に出す悪人共の総称。近しいので持ち主を殺して得た物品、遺物を扱う貴重品狩りゲフュール・コレクターってのも居るが、やってる事は一緒だ。」
「この街にもあるのか? その……闇オークション会場は。」
「許可せんぞ。」
「だ、誰がそんな所に行きたがるかっ!! 俺が言ってるのは根絶出来ないのかっていう話だ。」
「したい、というのが正確な答えだな。お前達も分かっているように、人の数だけ犯罪という物は横行する。だからこそ、この手の物は根絶するのが難しいんだ。」
「ティア、ゴキブリホイホイみたいな魔法作れたりしない?」
「その前に、犯罪者を正確に。確実に特定出来る魔法の方が欲しいな、俺は。」
「……それこそ無理だと思うんだけど。」
「お前が求めてる水準と全く同じ魔法を提案したんだが?」

 まぁ、ともかく。

「とりあえず船に乗ろう。……ここは人が多くて好かん。早く人目も日光も避けられる場所に行かせてくれ。」


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第120話 来たる女鬼を恐れて」

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。

今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

処理中です...