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第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
第120話 来たる女鬼を恐れて
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【前回】別荘島を目指して乗船した
第120話 来たる女鬼を恐れて
――現実からの逃避行を。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
「……これで完全に逃げ場がなくなった訳だ。」
船が港を出港して大体1時間程。
広大な海の上に浮かぶ船の中は当然、密室。生憎と元々海が嫌いな俺としては、同じく船が嫌いだ。
地上でも色んな生き物達の縄張りという物が存在しているように、等しく海にも縄張りという物が存在する。
それは人間でも同じ事が言え、だからこそ国ごとに国境だったり。排他的経済水域だったり色んな物が存在している。
よく不鮮明にされがちなそれを、大抵の国は魔法で特別な障壁を張っては自分達の国境線を明確とし。同時に、それは国に属さない特殊な民族達にも同じ事が言える。
まぁ、その技術が開発されてからは密入国が出来なくなって経費の削減や犯罪率を大分減らせたけどな。
その恩寵もあり、一度国内で犯罪を起こした物は急いで越境しなければ一生その国から出られない事になる。その国内での犯罪率は上がる物の、他国で犯人を捕らえた場合の手続きの手間を考えれば致し方なしと容認する国が殆どだ。
但し、何処の世界にも特殊な国。頭の悪い国。悪意の塊のような国という物が存在する中で、中にはそんな犯罪者を自分達にとって都合の悪い国にぶん投げて国内から破壊工作をさせる国もあるにはあるが。
「……これが綺麗に思える気持ちが、俺には分からんな。」
海に限らず、戦争国家や帝国を名乗っていても環境には配慮するこの世界の海はかなりの透明度を誇る。それこそ、浜辺近くの水深100m付近まではまるで硝子越しで覗き込んでいるぐらいにはよく見えて。完全な海上であるここも、日中は太陽の光に反射して見えにくいが夜になると1,000m付近までは肉眼で確認する事が出来る。
その為、漁師は魚群を見つけ易かったり。この船のように、横断する事が目的の場合は水深1,000m付近までであれば危険海洋生物を目視する事が出来る。
もし仮に戦争などで戦闘機や戦艦が沈んだ際には必ず。何が何でも回収するように定められており、船のパーツ全てにありとあらゆる回収系の魔法が掛けられているのでそれらの心配も要らない。
なので海運事故でありえるのはそれこそ海洋生物関連か操作ミス。又は、戦争ぐらいしか候補がない。
「これが平和だと言えるのか。それとも、より物騒になったと言えるのか。……悩ましい所だな。」
コンコンコンッ。
「どうぞ。」
「ティア、一杯どう?」
「……昼間なんだが。」
「どうせ僕とティアが飲んだって酔わないでしょ。この程度のアルコールなんてさ。」
「それは……そうだが。あいつらは放っておいて良いのか。」
「落下防止の魔法も船全体に掛けたし、ディールとリシェラが彼らを見てくれてるからね。特に心配しなくても良いと思うよ。困った時は乗組員《クルー》達に聞いてとも言ってあるからさ。」
「……そう。」
「……それで、ティア。ちょっと真面目な話しても良い?」
「どうぞ。」
「もしかしたら来学期、ポラリス夫妻が帰ってくるかも。」
「ぅ、え?」
「先言っとくよ、僕じゃないからね。……と言うか多分、ミティアラ様の魔法なんじゃないかと思うよ? ほら、あの人〈月詠の魔女〉だし。」
「まぁ……。……うん。」
「久しぶりに手紙が届いたかと思ったら内容は9割ティアの事だったよ。」
「仕事しろよあの馬鹿師匠。」
「何か一度帰国しないといけないぐらいに重要な報告があるらしいんだけど、本命としてはティアに会いたいんだって。……容姿も魔力の質も変わったティアに。」
〈月詠の魔女〉ミティアラ・ポラリス。
我らが七漣星のリーダー、ジルディル・ポラリスと結婚する為に皇族の名簿から除名された彼女は世界最強と言ってもまだ言葉が足りない程の魔女。そんな彼女は、本当に存在する魔女界と呼ばれる魔女だけが所属する事の出来ない組織の代表でもある。
魔法師、魔導士と敢えて呼び分けているように、魔女という物はそれなりに特別な存在だ。
というのも、魔女達が使う魔法の根源は魔力ではない。そのどれもが自然から力を借りて行う、ある意味ドルイドと呼んだ方が近しい力を利用して魔法を使う。
その為、原則的に魔女である=魔法生命体達との絆が深いという証明になる。
そんな魔女達は魔法生命体達の力を借りる為にわざわざ主従契約だったり、仮契約を行わなければならない魔法師や魔導士とは異なり、「これ買いに行ってきてくれない?」程度の軽いお願いで力を借りる事が出来る。
魔女という存在は我々のような魔導士、魔法師達が所属する魔法界からしてみれば非常に稀少で。何より興味深い存在となっている。
うーん……。
「……ジーラ。」
「今度こそ、魔女界に入らないかって聞かれると思うよ。死に戻りしたティアは以前よりも魔法生命体達に懐かれてるし、元々動物達にもかなり好かれてたからね。もしかしたら魔女界の著名な魔女を連れてきて、一緒になって説得してきたりもするんじゃない?」
「割とあり得る展開を更に強めないでくれ……。」
魔女界に興味がない訳ではない。但し、魔女界には魔女達を。技術を守る為に幾つか重要なルールが存在している。
その幾つかが俺にとってはかなり面倒で。何より、俺はこの国を離れる気がない。それもあって魔女界に首を突っ込む事は以前からずっと忌避してきた事だ。
でも今回は逃げられないかもな……。
「……何とかして師匠の目から逃げられる魔法でも考案してみるか。」
「絶対無理だと思うけどね。だってそれ、動物達からも隠れるって事でしょ?」
「だよ、なぁ……。」
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第121話 俺にも怖い物ぐらいある」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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感想なども励みになります。
今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
第120話 来たる女鬼を恐れて
――現実からの逃避行を。
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「……これで完全に逃げ場がなくなった訳だ。」
船が港を出港して大体1時間程。
広大な海の上に浮かぶ船の中は当然、密室。生憎と元々海が嫌いな俺としては、同じく船が嫌いだ。
地上でも色んな生き物達の縄張りという物が存在しているように、等しく海にも縄張りという物が存在する。
それは人間でも同じ事が言え、だからこそ国ごとに国境だったり。排他的経済水域だったり色んな物が存在している。
よく不鮮明にされがちなそれを、大抵の国は魔法で特別な障壁を張っては自分達の国境線を明確とし。同時に、それは国に属さない特殊な民族達にも同じ事が言える。
まぁ、その技術が開発されてからは密入国が出来なくなって経費の削減や犯罪率を大分減らせたけどな。
その恩寵もあり、一度国内で犯罪を起こした物は急いで越境しなければ一生その国から出られない事になる。その国内での犯罪率は上がる物の、他国で犯人を捕らえた場合の手続きの手間を考えれば致し方なしと容認する国が殆どだ。
但し、何処の世界にも特殊な国。頭の悪い国。悪意の塊のような国という物が存在する中で、中にはそんな犯罪者を自分達にとって都合の悪い国にぶん投げて国内から破壊工作をさせる国もあるにはあるが。
「……これが綺麗に思える気持ちが、俺には分からんな。」
海に限らず、戦争国家や帝国を名乗っていても環境には配慮するこの世界の海はかなりの透明度を誇る。それこそ、浜辺近くの水深100m付近まではまるで硝子越しで覗き込んでいるぐらいにはよく見えて。完全な海上であるここも、日中は太陽の光に反射して見えにくいが夜になると1,000m付近までは肉眼で確認する事が出来る。
その為、漁師は魚群を見つけ易かったり。この船のように、横断する事が目的の場合は水深1,000m付近までであれば危険海洋生物を目視する事が出来る。
もし仮に戦争などで戦闘機や戦艦が沈んだ際には必ず。何が何でも回収するように定められており、船のパーツ全てにありとあらゆる回収系の魔法が掛けられているのでそれらの心配も要らない。
なので海運事故でありえるのはそれこそ海洋生物関連か操作ミス。又は、戦争ぐらいしか候補がない。
「これが平和だと言えるのか。それとも、より物騒になったと言えるのか。……悩ましい所だな。」
コンコンコンッ。
「どうぞ。」
「ティア、一杯どう?」
「……昼間なんだが。」
「どうせ僕とティアが飲んだって酔わないでしょ。この程度のアルコールなんてさ。」
「それは……そうだが。あいつらは放っておいて良いのか。」
「落下防止の魔法も船全体に掛けたし、ディールとリシェラが彼らを見てくれてるからね。特に心配しなくても良いと思うよ。困った時は乗組員《クルー》達に聞いてとも言ってあるからさ。」
「……そう。」
「……それで、ティア。ちょっと真面目な話しても良い?」
「どうぞ。」
「もしかしたら来学期、ポラリス夫妻が帰ってくるかも。」
「ぅ、え?」
「先言っとくよ、僕じゃないからね。……と言うか多分、ミティアラ様の魔法なんじゃないかと思うよ? ほら、あの人〈月詠の魔女〉だし。」
「まぁ……。……うん。」
「久しぶりに手紙が届いたかと思ったら内容は9割ティアの事だったよ。」
「仕事しろよあの馬鹿師匠。」
「何か一度帰国しないといけないぐらいに重要な報告があるらしいんだけど、本命としてはティアに会いたいんだって。……容姿も魔力の質も変わったティアに。」
〈月詠の魔女〉ミティアラ・ポラリス。
我らが七漣星のリーダー、ジルディル・ポラリスと結婚する為に皇族の名簿から除名された彼女は世界最強と言ってもまだ言葉が足りない程の魔女。そんな彼女は、本当に存在する魔女界と呼ばれる魔女だけが所属する事の出来ない組織の代表でもある。
魔法師、魔導士と敢えて呼び分けているように、魔女という物はそれなりに特別な存在だ。
というのも、魔女達が使う魔法の根源は魔力ではない。そのどれもが自然から力を借りて行う、ある意味ドルイドと呼んだ方が近しい力を利用して魔法を使う。
その為、原則的に魔女である=魔法生命体達との絆が深いという証明になる。
そんな魔女達は魔法生命体達の力を借りる為にわざわざ主従契約だったり、仮契約を行わなければならない魔法師や魔導士とは異なり、「これ買いに行ってきてくれない?」程度の軽いお願いで力を借りる事が出来る。
魔女という存在は我々のような魔導士、魔法師達が所属する魔法界からしてみれば非常に稀少で。何より興味深い存在となっている。
うーん……。
「……ジーラ。」
「今度こそ、魔女界に入らないかって聞かれると思うよ。死に戻りしたティアは以前よりも魔法生命体達に懐かれてるし、元々動物達にもかなり好かれてたからね。もしかしたら魔女界の著名な魔女を連れてきて、一緒になって説得してきたりもするんじゃない?」
「割とあり得る展開を更に強めないでくれ……。」
魔女界に興味がない訳ではない。但し、魔女界には魔女達を。技術を守る為に幾つか重要なルールが存在している。
その幾つかが俺にとってはかなり面倒で。何より、俺はこの国を離れる気がない。それもあって魔女界に首を突っ込む事は以前からずっと忌避してきた事だ。
でも今回は逃げられないかもな……。
「……何とかして師匠の目から逃げられる魔法でも考案してみるか。」
「絶対無理だと思うけどね。だってそれ、動物達からも隠れるって事でしょ?」
「だよ、なぁ……。」
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