夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

文字の大きさ
127 / 192
第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて

第124話 見えない耳は幾許も

しおりを挟む
【前回】子供達に島の管理人、セバルズを紹介した
第124話 見えない耳は幾許も

――不用心は未来の毒だ。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


 さぁ、部屋で煙草片手に読書タイム……とはいかなかった。
 初めての島、初めての海でテンションの跳ね上がったガキ共に連れられて。何ならこれから俺に反応してやってくるであろう生物達を一目見ようと、人を避雷針代わりにするらしい。

 イルグ辺りに道徳の授業でも受けさせてやろうか、こいつら。

 しかしてそこに重ねて「遊んで!」とは流石に言わないようで、単に俺にここに居てほしいだけらしい。
 その為、ジーラが用意してくれたウイスキーを片手に、煙草を咥えながらキャンプ場エリア付近にあるビーチチェアにゆったりと体を預けながら読書をする。

 良いご身分だな、我ながら。

「先生、見て見て! イルカさんに貝殻貰ってん!! これ、どっから持ってきたんかなぁ。」
「……海底からだな。その色だと……大体400~500m付近か。」
「え、これだけでそんなに分かんの?」
「知人に詳しいのが居てな。耳にタコが残らんばかりに聞かされた。」
「……そういえば、先生。さっきは船長さんと何話しとったん?」
「ただの他愛ない日常会話。俺は海が嫌いだからな、その関係もあって陸上での活動が多いから、あんまり顔を合わせなかったからちょっと話してたんだ。」

 実際、俺が海に来たのはそれこそ数……。

〔……あいつ、何で俺の幼少期を知ってんだ?〕

 軽く見積もっても俺がネビュレイラハウロ帝国に所属してから15世紀ぐらいは経っている。流石のエルフも、そこまで長命ではなかったはずだ。
 ここ最近は種族に関する文献……を読まなかった訳ではないが、それでもエルフは長生きしてもせいぜい1,000年が限界。15世紀生きる事なんて、それこそ俺達七漣星のように幽炉核《コア》に繋がれ、かつ何度もクローンの体に魂を移植していなければ出来るはずがない。
 それでもネビュレイラハウロ帝国建国当初から存在するその技術は今の今まで多少の技術の更新は出来ていれども、完全なアップグレードは出来ていない。
 そもそもとしてあの技術は不完全だ。だからこそ、調律《チューニング》する度にトラウマに叩き起こされたり。苦しめられて、人によっては自害に近い行為を行っては折角の新しいクローンを無駄にしてしまいそうになる事がある。
 それなりに技術が発展した今も、数世紀前にその手の副作用等などの画期的なアップグレードに関する研究は打ち切られ。帝国を、それこそ軍事力方面などの七漣星以外が幸せになれるようにする為の技術や開発を優先した。
 しかし、だからと言って禁止されている訳ではない。この休みを良い機会に、少しばかり調べるのも良いかもしれない。

 俺なら……何とか。

「てぃ~あ? また何か、変な事考えてない?」
「ジーラ……。別に変な事は。」
「じゃあ何考えてたか答えられるよね?」
「陛下には」
「僕は、ティアに、聞いてるの。」

 区切らなくても分かるっての。

「……調律《チューニング》をもっと良い感じに出来ないかと思って。」
「あぁ~……。確かに、もう研究機関としては打ち切られちゃったけど調べては良い事になってるね。」
「あぁ。だからこれを機に研究しようかと。」
「……僕も手伝って良い?」
「おっ、良いのか?」
「うん。調律《チューニング》後のあの悪夢が嫌なのは僕もだからね~。」
「ジーラも悪夢なのか。」
「ティアも?」
「あぁ。……あそこに居た頃の事を。いつも通りの日常の中で、戦争に巻き込まれて村滅んで。……お前達に会うまで、ずっと誰のかも分からない悲鳴が響いて壊れそうに」
「待って。……僕が悪かったから、答えなくて良いよ。」
「……そう。」

 そんな話を誰かにするつもりは勿論ない。
 いつの間にか俺達の傍を離れているトルニアは向こうで楽しんでいて。少なくとも今の会話を聞いた訳ではないだろう。
 仮にやるとして、まず行わなければならないのは現状の確認。ある程度は理解出来る。

「魂、って言うぐらいだから少なくとも死霊術は使ってるよな。」
「いや、もしかしたら錬金術の類かも。後は単純に魂っていう所に限定して考えたら霊術の方じゃない? 別に死んでる訳じゃないし、死ぬ前に事が起きてるただの霊魂な訳でしょ?」
「たし……かにそうか。そうだな。」
「だったら」
「グレイブ様。ルールゥ様。」
「ぅっ。」 「うわっ!?」
「そう驚かれずとも。幾らあらゆる病にかからぬよう空調魔法がこの島全体に掛けられているとはいえ、喉は渇くかと思われましたのでトロピカルジュースの方をご用意させていただきました。どうぞ。」
「あ、ありがとう……。」
「ど、どうも……。」
「それと。そのお話はお部屋の方でされた方が宜しいかと。……子供達の耳より、もっと恐ろしい耳が多数ございますので。」
「それも……そうだな。大人しく景色を楽しんでいようか、ジーラ。」
「そ、そうだね。その方が良いかも。」


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第125話 不思議な意外も身近な所で燻っている」

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。

今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

処理中です...