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第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
第124話 見えない耳は幾許も
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【前回】子供達に島の管理人、セバルズを紹介した
第124話 見えない耳は幾許も
――不用心は未来の毒だ。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
さぁ、部屋で煙草片手に読書タイム……とはいかなかった。
初めての島、初めての海でテンションの跳ね上がったガキ共に連れられて。何ならこれから俺に反応してやってくるであろう生物達を一目見ようと、人を避雷針代わりにするらしい。
イルグ辺りに道徳の授業でも受けさせてやろうか、こいつら。
しかしてそこに重ねて「遊んで!」とは流石に言わないようで、単に俺にここに居てほしいだけらしい。
その為、ジーラが用意してくれたウイスキーを片手に、煙草を咥えながらキャンプ場エリア付近にあるビーチチェアにゆったりと体を預けながら読書をする。
良いご身分だな、我ながら。
「先生、見て見て! イルカさんに貝殻貰ってん!! これ、どっから持ってきたんかなぁ。」
「……海底からだな。その色だと……大体400~500m付近か。」
「え、これだけでそんなに分かんの?」
「知人に詳しいのが居てな。耳にタコが残らんばかりに聞かされた。」
「……そういえば、先生。さっきは船長さんと何話しとったん?」
「ただの他愛ない日常会話。俺は海が嫌いだからな、その関係もあって陸上での活動が多いから、あんまり顔を合わせなかったからちょっと話してたんだ。」
実際、俺が海に来たのはそれこそ数……。
〔……あいつ、何で俺の幼少期を知ってんだ?〕
軽く見積もっても俺がネビュレイラハウロ帝国に所属してから15世紀ぐらいは経っている。流石のエルフも、そこまで長命ではなかったはずだ。
ここ最近は種族に関する文献……を読まなかった訳ではないが、それでもエルフは長生きしてもせいぜい1,000年が限界。15世紀生きる事なんて、それこそ俺達七漣星のように幽炉核《コア》に繋がれ、かつ何度もクローンの体に魂を移植していなければ出来るはずがない。
それでもネビュレイラハウロ帝国建国当初から存在するその技術は今の今まで多少の技術の更新は出来ていれども、完全なアップグレードは出来ていない。
そもそもとしてあの技術は不完全だ。だからこそ、調律《チューニング》する度にトラウマに叩き起こされたり。苦しめられて、人によっては自害に近い行為を行っては折角の新しいクローンを無駄にしてしまいそうになる事がある。
それなりに技術が発展した今も、数世紀前にその手の副作用等などの画期的なアップグレードに関する研究は打ち切られ。帝国を、それこそ軍事力方面などの七漣星以外が幸せになれるようにする為の技術や開発を優先した。
しかし、だからと言って禁止されている訳ではない。この休みを良い機会に、少しばかり調べるのも良いかもしれない。
俺なら……何とか。
「てぃ~あ? また何か、変な事考えてない?」
「ジーラ……。別に変な事は。」
「じゃあ何考えてたか答えられるよね?」
「陛下には」
「僕は、ティアに、聞いてるの。」
区切らなくても分かるっての。
「……調律《チューニング》をもっと良い感じに出来ないかと思って。」
「あぁ~……。確かに、もう研究機関としては打ち切られちゃったけど調べては良い事になってるね。」
「あぁ。だからこれを機に研究しようかと。」
「……僕も手伝って良い?」
「おっ、良いのか?」
「うん。調律《チューニング》後のあの悪夢が嫌なのは僕もだからね~。」
「ジーラも悪夢なのか。」
「ティアも?」
「あぁ。……あそこに居た頃の事を。いつも通りの日常の中で、戦争に巻き込まれて村滅んで。……お前達に会うまで、ずっと誰のかも分からない悲鳴が響いて壊れそうに」
「待って。……僕が悪かったから、答えなくて良いよ。」
「……そう。」
そんな話を誰かにするつもりは勿論ない。
いつの間にか俺達の傍を離れているトルニアは向こうで楽しんでいて。少なくとも今の会話を聞いた訳ではないだろう。
仮にやるとして、まず行わなければならないのは現状の確認。ある程度は理解出来る。
「魂、って言うぐらいだから少なくとも死霊術は使ってるよな。」
「いや、もしかしたら錬金術の類かも。後は単純に魂っていう所に限定して考えたら霊術の方じゃない? 別に死んでる訳じゃないし、死ぬ前に事が起きてるただの霊魂な訳でしょ?」
「たし……かにそうか。そうだな。」
「だったら」
「グレイブ様。ルールゥ様。」
「ぅっ。」 「うわっ!?」
「そう驚かれずとも。幾らあらゆる病にかからぬよう空調魔法がこの島全体に掛けられているとはいえ、喉は渇くかと思われましたのでトロピカルジュースの方をご用意させていただきました。どうぞ。」
「あ、ありがとう……。」
「ど、どうも……。」
「それと。そのお話はお部屋の方でされた方が宜しいかと。……子供達の耳より、もっと恐ろしい耳が多数ございますので。」
「それも……そうだな。大人しく景色を楽しんでいようか、ジーラ。」
「そ、そうだね。その方が良いかも。」
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第125話 不思議な意外も身近な所で燻っている」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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感想なども励みになります。
今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
第124話 見えない耳は幾許も
――不用心は未来の毒だ。
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さぁ、部屋で煙草片手に読書タイム……とはいかなかった。
初めての島、初めての海でテンションの跳ね上がったガキ共に連れられて。何ならこれから俺に反応してやってくるであろう生物達を一目見ようと、人を避雷針代わりにするらしい。
イルグ辺りに道徳の授業でも受けさせてやろうか、こいつら。
しかしてそこに重ねて「遊んで!」とは流石に言わないようで、単に俺にここに居てほしいだけらしい。
その為、ジーラが用意してくれたウイスキーを片手に、煙草を咥えながらキャンプ場エリア付近にあるビーチチェアにゆったりと体を預けながら読書をする。
良いご身分だな、我ながら。
「先生、見て見て! イルカさんに貝殻貰ってん!! これ、どっから持ってきたんかなぁ。」
「……海底からだな。その色だと……大体400~500m付近か。」
「え、これだけでそんなに分かんの?」
「知人に詳しいのが居てな。耳にタコが残らんばかりに聞かされた。」
「……そういえば、先生。さっきは船長さんと何話しとったん?」
「ただの他愛ない日常会話。俺は海が嫌いだからな、その関係もあって陸上での活動が多いから、あんまり顔を合わせなかったからちょっと話してたんだ。」
実際、俺が海に来たのはそれこそ数……。
〔……あいつ、何で俺の幼少期を知ってんだ?〕
軽く見積もっても俺がネビュレイラハウロ帝国に所属してから15世紀ぐらいは経っている。流石のエルフも、そこまで長命ではなかったはずだ。
ここ最近は種族に関する文献……を読まなかった訳ではないが、それでもエルフは長生きしてもせいぜい1,000年が限界。15世紀生きる事なんて、それこそ俺達七漣星のように幽炉核《コア》に繋がれ、かつ何度もクローンの体に魂を移植していなければ出来るはずがない。
それでもネビュレイラハウロ帝国建国当初から存在するその技術は今の今まで多少の技術の更新は出来ていれども、完全なアップグレードは出来ていない。
そもそもとしてあの技術は不完全だ。だからこそ、調律《チューニング》する度にトラウマに叩き起こされたり。苦しめられて、人によっては自害に近い行為を行っては折角の新しいクローンを無駄にしてしまいそうになる事がある。
それなりに技術が発展した今も、数世紀前にその手の副作用等などの画期的なアップグレードに関する研究は打ち切られ。帝国を、それこそ軍事力方面などの七漣星以外が幸せになれるようにする為の技術や開発を優先した。
しかし、だからと言って禁止されている訳ではない。この休みを良い機会に、少しばかり調べるのも良いかもしれない。
俺なら……何とか。
「てぃ~あ? また何か、変な事考えてない?」
「ジーラ……。別に変な事は。」
「じゃあ何考えてたか答えられるよね?」
「陛下には」
「僕は、ティアに、聞いてるの。」
区切らなくても分かるっての。
「……調律《チューニング》をもっと良い感じに出来ないかと思って。」
「あぁ~……。確かに、もう研究機関としては打ち切られちゃったけど調べては良い事になってるね。」
「あぁ。だからこれを機に研究しようかと。」
「……僕も手伝って良い?」
「おっ、良いのか?」
「うん。調律《チューニング》後のあの悪夢が嫌なのは僕もだからね~。」
「ジーラも悪夢なのか。」
「ティアも?」
「あぁ。……あそこに居た頃の事を。いつも通りの日常の中で、戦争に巻き込まれて村滅んで。……お前達に会うまで、ずっと誰のかも分からない悲鳴が響いて壊れそうに」
「待って。……僕が悪かったから、答えなくて良いよ。」
「……そう。」
そんな話を誰かにするつもりは勿論ない。
いつの間にか俺達の傍を離れているトルニアは向こうで楽しんでいて。少なくとも今の会話を聞いた訳ではないだろう。
仮にやるとして、まず行わなければならないのは現状の確認。ある程度は理解出来る。
「魂、って言うぐらいだから少なくとも死霊術は使ってるよな。」
「いや、もしかしたら錬金術の類かも。後は単純に魂っていう所に限定して考えたら霊術の方じゃない? 別に死んでる訳じゃないし、死ぬ前に事が起きてるただの霊魂な訳でしょ?」
「たし……かにそうか。そうだな。」
「だったら」
「グレイブ様。ルールゥ様。」
「ぅっ。」 「うわっ!?」
「そう驚かれずとも。幾らあらゆる病にかからぬよう空調魔法がこの島全体に掛けられているとはいえ、喉は渇くかと思われましたのでトロピカルジュースの方をご用意させていただきました。どうぞ。」
「あ、ありがとう……。」
「ど、どうも……。」
「それと。そのお話はお部屋の方でされた方が宜しいかと。……子供達の耳より、もっと恐ろしい耳が多数ございますので。」
「それも……そうだな。大人しく景色を楽しんでいようか、ジーラ。」
「そ、そうだね。その方が良いかも。」
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