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第一章幕間:夏休み 相応しき器に想いを込めて
第127話 数少ない水辺での楽しみを
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【前回】イルグ達に実際の実験を任せた
第127話 数少ない水辺での楽しみを
――ちょっと大人の遊びだがな。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
「あ、先生~!」
「先生、先生も遊びに来たん!?」
「帰る。」
「あ、ちょ、そ~んな邪険にせんとってぇやぁ~!」
はぁ……。
「珍しく大人しくここで遊んでいるかと思えば、俺が来た途端にそれか。」
「……? せんせ、ルールゥ先生は?」
「“疲れた”って。……ったく、少し頭を使った程度で直ぐに疲れるのはあまりにも脆弱な奴め。そう思わないか、セバルズ。」
「申し訳ありませんがグレイブ様。グレイブ様は七漣星の中でも指折りに入る程の体力をお持ちの方。ですのであまり同意は難しいかと。」
味方してくれると思ったんだがなぁ……。
口ではこういうが、あのジーラの事だ。想像出来る事と言えば、それこそ俺が知らない内に魔法を使ったり。その魔法の使い方に至っても、多少コツを必要とする使い方をした可能性が最も高い。
大方、電話しながら俺に話せない難しい話をしていたか。それとも、その情報を俺に共有し忘れた……というのは可能性としてはありえなくないものの、かなり低い事だろう。
まぁ、言っても仕方のない話か。
「それで? 俺を呼び止めてまで何がしたいんだ、お前らは。」
「先生が前に趣味だって言ってた、釣りを教えてほしいんだ!」
「また余計な事を……。」
「この夏休みは俺ら初めての夏休みでもあるけどな、それ以上に先生にとっても初めての夏休みやと思うねん。」
「いや、別に俺は」
「セバルズさんが言ってた。この島は今まで、七漣星とネビュレイラハウロ帝国皇族以外が立ち寄った事はないって。じゃあ、これはせんせにとっても初めての夏休みでしょ?」
「まぁ……そういう意味で言われればそうだが。」
「……その、師匠。師匠さえ良かったら、わ、私も釣り……やってみたいの。」
「わ、わた、私も!」
「お前達まで……。」
「だ、だって師匠、前に言ってたじゃない! 釣りは精神統一をするのに良い時間を確保出来るから、余計な事を考える時は釣りをするって! こ、今回は喧しいのが居るから難しいかもしれないけど……それでも師匠が楽しいと思ってる物に興味なんて、勿論あるに決まってるじゃない!」
「し、師匠、駄目……?」
……。
「……セバルズ、準備の方は。」
「仰られるだろうと思い、既にご用意は済んでおります。」
「……嵌めたか?」
「いえ、まさか。あくまでこうなるだろうなと予想したに過ぎません。」
「相変わらず食えない奴め……。」
相変わらず準備の良い事に、それぞれ全ての必要な小物を纏めたらしい箱を釣竿と共に配られるので大人しく受け取る。
信用してはいるが、一応中身を確認してみれば今回はこの為だけに用意された練り餌を用意したらしい。流石にガキ共に虫を触らせる事に抵抗があったのか、それとも小魚を餌にするのに抵抗があったのかは分からないがまぁその辺だろう。
うーん……。
「セバルズ。」
「中蓋を開けて頂ければご期待に沿えるかと。」
たまには騙されてやるかと御開帳。そこにはいつ用意したのか、戮《ろく》海老が居る。
戮海老というのは膨大な魔力や精霊力を有する特殊な海老の事で、海老としてはかなり稀少が荒く。海老の癖に海老を喰うというとんでもない性質ながら、その習性の影響でかなりたっぷりと身が乗る。
これを使えばどれだけ雑な釣りをしてもかなりの大物が獲れるであろう事は疑いようもない。
「流石だな。」
「お褒めに戴き光栄にございます、グレイブ様。」
「……? あ! せ、せんせ、これってあの戮海老? 獲れても捌くのが大変だって言う……。」
「あぁ。あんまりにも荒い気性の所為か、これを釣り上げた者の指をも喰らおうとする別名 海老鮫。……まぁ、牙もなければ毒もなく、口に含んだ物を腐蝕する事も出来んこいつはただ吸い付いてくるだけの吸盤みたいなもんなんだがな。」
「でも、ちゃんと釣り針を刺さないと逃げちゃうんだよね。」
「あぁ。まぁしかし、こんなの恐るるに足らんだろうよ。」
これまでの説明だとあまり怖く思えないこいつだが、その恐ろしさは釣り針を突き刺してみて初めて分かる。
こいつの血液は見た目こそただの血ではある物の、その血はヌタウナギのようにぬめぬめとよく滑る為、針に刺すのがかなり難しい。それも相まって、釣り師の殆どは手を滑らせて逃がしてしまうか。はたまた、苛つきのあまりに自ら海に放ってしまうかの二択になる。
その関係からこいつは釣果こそ凄くとも、誰もがそれを簡単には実行に移そうとはしない。
まぁ俺には何の問題にもならんがな。
「む、俺達の釣り餌は先生のと違うのか?」
「お前らにこの餌はまだ早い。……そうだな。今回の釣りで30匹以上越えられたら使わせてやっても良いぞ。」
「おっ、言ったな!? 絶対に守らせるからな!」
「え、さ、30……?」
「せ、せんせ。それ、僕達5人の合算……?」
「個人。」
「えぇ!!?」
「嫌なら辞めてくれても良いぞ。勿論、不戦敗でな。」
「ッ……!!」
「リシェラ、何処が一番釣れると思う? 勿論、師匠との約束を守った上で。」
「す、少なくとも壁のあるこっちはそんなに釣れないと思う。や、やるならや、屋敷の裏手側……が、良いと思う。あ、あそこはこの島に魚が流れ込む場所だし、そ、それこそ桟橋近くでも釣れると思う。」
「だそうだ。ほれ、励め励め!」
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第128話 何事も無駄にならないように」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
第127話 数少ない水辺での楽しみを
――ちょっと大人の遊びだがな。
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「あ、先生~!」
「先生、先生も遊びに来たん!?」
「帰る。」
「あ、ちょ、そ~んな邪険にせんとってぇやぁ~!」
はぁ……。
「珍しく大人しくここで遊んでいるかと思えば、俺が来た途端にそれか。」
「……? せんせ、ルールゥ先生は?」
「“疲れた”って。……ったく、少し頭を使った程度で直ぐに疲れるのはあまりにも脆弱な奴め。そう思わないか、セバルズ。」
「申し訳ありませんがグレイブ様。グレイブ様は七漣星の中でも指折りに入る程の体力をお持ちの方。ですのであまり同意は難しいかと。」
味方してくれると思ったんだがなぁ……。
口ではこういうが、あのジーラの事だ。想像出来る事と言えば、それこそ俺が知らない内に魔法を使ったり。その魔法の使い方に至っても、多少コツを必要とする使い方をした可能性が最も高い。
大方、電話しながら俺に話せない難しい話をしていたか。それとも、その情報を俺に共有し忘れた……というのは可能性としてはありえなくないものの、かなり低い事だろう。
まぁ、言っても仕方のない話か。
「それで? 俺を呼び止めてまで何がしたいんだ、お前らは。」
「先生が前に趣味だって言ってた、釣りを教えてほしいんだ!」
「また余計な事を……。」
「この夏休みは俺ら初めての夏休みでもあるけどな、それ以上に先生にとっても初めての夏休みやと思うねん。」
「いや、別に俺は」
「セバルズさんが言ってた。この島は今まで、七漣星とネビュレイラハウロ帝国皇族以外が立ち寄った事はないって。じゃあ、これはせんせにとっても初めての夏休みでしょ?」
「まぁ……そういう意味で言われればそうだが。」
「……その、師匠。師匠さえ良かったら、わ、私も釣り……やってみたいの。」
「わ、わた、私も!」
「お前達まで……。」
「だ、だって師匠、前に言ってたじゃない! 釣りは精神統一をするのに良い時間を確保出来るから、余計な事を考える時は釣りをするって! こ、今回は喧しいのが居るから難しいかもしれないけど……それでも師匠が楽しいと思ってる物に興味なんて、勿論あるに決まってるじゃない!」
「し、師匠、駄目……?」
……。
「……セバルズ、準備の方は。」
「仰られるだろうと思い、既にご用意は済んでおります。」
「……嵌めたか?」
「いえ、まさか。あくまでこうなるだろうなと予想したに過ぎません。」
「相変わらず食えない奴め……。」
相変わらず準備の良い事に、それぞれ全ての必要な小物を纏めたらしい箱を釣竿と共に配られるので大人しく受け取る。
信用してはいるが、一応中身を確認してみれば今回はこの為だけに用意された練り餌を用意したらしい。流石にガキ共に虫を触らせる事に抵抗があったのか、それとも小魚を餌にするのに抵抗があったのかは分からないがまぁその辺だろう。
うーん……。
「セバルズ。」
「中蓋を開けて頂ければご期待に沿えるかと。」
たまには騙されてやるかと御開帳。そこにはいつ用意したのか、戮《ろく》海老が居る。
戮海老というのは膨大な魔力や精霊力を有する特殊な海老の事で、海老としてはかなり稀少が荒く。海老の癖に海老を喰うというとんでもない性質ながら、その習性の影響でかなりたっぷりと身が乗る。
これを使えばどれだけ雑な釣りをしてもかなりの大物が獲れるであろう事は疑いようもない。
「流石だな。」
「お褒めに戴き光栄にございます、グレイブ様。」
「……? あ! せ、せんせ、これってあの戮海老? 獲れても捌くのが大変だって言う……。」
「あぁ。あんまりにも荒い気性の所為か、これを釣り上げた者の指をも喰らおうとする別名 海老鮫。……まぁ、牙もなければ毒もなく、口に含んだ物を腐蝕する事も出来んこいつはただ吸い付いてくるだけの吸盤みたいなもんなんだがな。」
「でも、ちゃんと釣り針を刺さないと逃げちゃうんだよね。」
「あぁ。まぁしかし、こんなの恐るるに足らんだろうよ。」
これまでの説明だとあまり怖く思えないこいつだが、その恐ろしさは釣り針を突き刺してみて初めて分かる。
こいつの血液は見た目こそただの血ではある物の、その血はヌタウナギのようにぬめぬめとよく滑る為、針に刺すのがかなり難しい。それも相まって、釣り師の殆どは手を滑らせて逃がしてしまうか。はたまた、苛つきのあまりに自ら海に放ってしまうかの二択になる。
その関係からこいつは釣果こそ凄くとも、誰もがそれを簡単には実行に移そうとはしない。
まぁ俺には何の問題にもならんがな。
「む、俺達の釣り餌は先生のと違うのか?」
「お前らにこの餌はまだ早い。……そうだな。今回の釣りで30匹以上越えられたら使わせてやっても良いぞ。」
「おっ、言ったな!? 絶対に守らせるからな!」
「え、さ、30……?」
「せ、せんせ。それ、僕達5人の合算……?」
「個人。」
「えぇ!!?」
「嫌なら辞めてくれても良いぞ。勿論、不戦敗でな。」
「ッ……!!」
「リシェラ、何処が一番釣れると思う? 勿論、師匠との約束を守った上で。」
「す、少なくとも壁のあるこっちはそんなに釣れないと思う。や、やるならや、屋敷の裏手側……が、良いと思う。あ、あそこはこの島に魚が流れ込む場所だし、そ、それこそ桟橋近くでも釣れると思う。」
「だそうだ。ほれ、励め励め!」
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