夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

文字の大きさ
188 / 192
第二章:一年生二学期 ご無沙汰、我が家

第53話 古く錆びた刃と相対する為に

しおりを挟む
【前回】陛下からの招集命令が下った
第53話 古く錆びた刃と相対する為に

――覚悟を決めなければ。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


「グレイブ・ブラッディル=ルティア。御身の前に。」
「ごめんね、ティア。折角……楽しんでたのに。」
「その楽しみを壊してしまわない為の、絶やしてしまわない為の我々です。……どうか、躊躇う事のないように。」
「……うん、ありがとう。じゃあ早速だけど、皆にはこれを見てほしくて。」

 予想通り、俺が最後にここへ来たらしい。……大方、出来れば俺なしでこのまま話を続けるつもりが、何らかの形で俺の援助が必要になったか。俺が出た方が良いと判断されたからこそ、会議の途中で呼び出されたんだろう。
 いつものようにプロジェクタの明かり以外は存在しない、暗い王城の会議室。この場に居なければならない「七漣星」の内、最後の1人として席へ座るや否や映し出されたのはいつも通りの凄惨な光景だ。
 ほぼ毎年1回、何処かしらのタイミングで。特に法則性もなく突然行われる隣国アルドレディア帝国との大規模戦争。何の信憑性もない話だが、彼の国が年に一度しかこの戦争を起こさないのは恐らくそれぐらい、この戦争でほぼほぼの主力を吐き出したり。何らかの実験をしているからだろうと言われるぐらいに……この戦争は苛烈極まりない。
 今だって、陛下達の様子を見るにまだ開戦してから1週間も経っていないのだろうがもう既に映像越しに見える荒野は血と、死体と、そして有象無象の大小様々なクレーターや何らかの魔法攻撃で抉れて、溢れている。

 今年は随分とペースが速いな。

「ここ、ネビュレイラハウロ帝国と隣国アルドレディア帝国の間にあるゲルダ荒野。今年も毎年のように、ゲリラ戦争が始まったんだけど……今回は見ての通り様子はおかしい。例年通りであればまだお互いに腹の探り合いを行い、お互いの出方を確認しつつも段々と火力を上げていくのに対し、今回はどうにも本気で戦争をしに来てる。お陰で、油断してた訳じゃないけど歴戦の帝国軍達がもう既に1師団の被害を記録した。……そろそろあなた達“七漣星”の出陣を行わざるを得ない状況にある。」
「それで、陛下。“七漣星”が出なければならん事は分かったが、わざわざティアまで呼び出したのには理由があるんじゃろうな。」
「そうね~。貴方がそう言うから私も止めなかったけど、私達のティアちゃんの楽しい時間を奪わなければならない必要が本当にあったのかしら。」
「あんたらなぁ……。必要だから陛下はそうしたんだ、そこに疑問を持つ必要なんて何処にある。」
「……私も出来れば2人のようにティアちゃんを呼ばずに終わらせたかったんだけど、実はアルドレディア帝国から連絡が来てね。」
「連絡?」
「―――“グレイブ・ブラッディル=ルティアの旧友を連れてきた。奴を出せ”ってね。」
「旧友……?」

 随分とおかしな話だ。俺は煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティ唯一の生き残り。旧友なんて物が存在している訳がない。
 何より、俺は煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティでもそれなりに冷遇されていた、あの当時、俺に味方なんて居なかったし求めてもいなかった。その話は陛下達にもしたし、仮に俺に旧友が居るとして何で煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティが滅んでからかなりの時間が経った今更になってそんな奴が沸いてきたのか不気味でしかない。

「それだけの情報であれば私も“何を馬鹿な事を”で済ましたんだけど……あの子が、ティアと分離させたあの子がずっと騒がしくてね。あまりにも騒がしい物だから馬鹿にも出来なくて。」
「……ジルディル師匠、ミティアラ師匠。」
「……気は進まんがティアまで望むのであれば止めようにも止められんな。」
「そうね~……。因りにも因って私達夫婦をいの一番に頼る辺り、貴方も何らかの確信があるのね。」
「確信というより、本当にまだ煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティの生き残りが居たのであれば鹵獲か捕獲して色々と情報を聞き出す必要がある。……安心してくれ、陛下。俺の中に煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティに対する愛情や仲間意識なんて物は最初からない。捕縛及び鹵獲が難しいと判断した場合、死体にして持ち帰る。」
「疑ってないわ。……じゃあティアちゃんには悪いけど、本格的な準備を始めてもらって良い? 仮にも煌星の夜想曲ルビ、あっちも強力な燐獣を従えている可能性も。何らかの異常反応を見せる可能性もある。時間は稼ぐからしっかりと準備するように。」
「はい、陛下。」


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第54話 私が私のまま、生きる為に」

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。

今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

処理中です...