夜に煌めく炉は蒼銀で

夜櫻 雅織

文字の大きさ
189 / 192
第二章幕間:色褪せた記憶 在りし日の悲劇

第54話 私が私のまま、生きる為に

しおりを挟む
【前回】もう居ないはずの同胞が、敵として見つかった
第54話 私が私のまま、生きる為に

――救われたいだけなのに。

❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖


 星を詠み、月に導かれ、そして何より夜と共に生きる古き歴史ある古の一族、煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティ。今ではただの稀少一族として扱われ、煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティに残る文献通りの扱いは受けていない。
 今の扱いはただの稀少一族として扱われ、その中でも特に突出しているのは燐獣達との親和性の高さのみ。何故煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティが夜と、月と、星と関連している一族なのかは知られておらず、同時に文献であるような誇り高くも気高く、それと同時にたった1人で国1つを数時間で亡ぼす事すら出来る火力を持つ煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティというのも長らく確認されておらず、煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティの長老ですらもその存在を伝説上の物だと軽んじている。


 つまり、今の煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティは内外共にその正しい価値を理解していない。


 煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティに残る文献に因れば煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティは成人になるとより星々との親和性が高まり、それと同時に燐獣よりも遥かに上位に位置する精霊達を肉眼で視る事が出来る。
 化学上でいう所の原子のように、魔力に関する根源が生物としての形を取ったのが精霊だと言われていて。あの燐獣達ですらも、精霊なくして生きる事は出来ない。なのでまぁ……ある意味、海中に存在するプランクトンが一番彼らに近いのかもしれない。
 そう言うと精霊の稀少性や存在感が一気に薄くなってしまうかもしれないが、数が多い所だったり。全ての根源である事に関してはあまり変わりない。違うのは、彼らが居なければありとあらゆる生物は魔法を始めとする、それに類似する能力を一切行使出来ない事になる。
 言うならば、精霊を世界から消す事が出来ればこの世界から魔法を消し去るのとほぼ同義になる。そんな事は当然、出来やしないのだが。
 その理由の1つに、精霊を視る事が出来る稀少な感性は一般人にはほぼない事が挙げられる。どれだけの聖職者であろうと彼らを肉眼に捉える事は出来ず、それこそ天使や精霊などに好かれた者にしか認識する事は出来ず、ある意味煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティもそれに近い存在だと言える。

「文献は、記録する為にあるのに。……なのに、伝説なんて後世の何もしないただの置物達が言って良い言葉じゃないのに。」

 どれだけ信用出来ない内容でも、どれだけ要領を得ない内容でも、歴史書として残されたこの文献に書かれている以上それは事実だ。何より、少し前の満月の時に月へ聞いてみたらここに書かれている事は全て真実だと教えてくれた。だから……ここに書かれている事は全部本当の事なのに。
 煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティの里、月落つきらくの里。そう名付けられたこの場所では私を含んだ総勢100人程度の煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティが住んでいる。……私もその1人。
 でも、私の扱いはあまり良くない。いや、悪いと断言出来る。
 煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティでは代々巫女と呼ばれる存在が生まれる。巫女は月に、燐獣に、そして精霊に選ばれ、夜が最も寵愛する存在。だから煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティでも重宝されており、それはもう大切に扱われる……らしい。
 ただこの歴史書のように、あの忌々しい長老達のように今の煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティは歴史を敬わない。歴史を軽んじて、煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティという一族に生まれた事ばかりを誇ってばかりで実力が着いてこない。
 だからか、歴史を重んじる私の事は非常に疎まれていた。少なくともこの集落では巫女の存在は疎ましく思われており、勝手に育てと言わんばかりに古い書庫を与えられ、そこへの立ち入りを許されるだけで何か特別世話をされる訳でもなければ生活環境が改善される訳でもない。

 今日も……痛かった。

 その点、私の家族は両親兄弟全て最悪で最低だった。ただでさえ役に立たないと散々言われていた女として生まれ、更には疎まれている巫女として生まれたのを理由に毎日虐待を受けている。足にも腕にも腹にも生傷は絶えず、顔だけは傷付けられていないが髪で肌の隠れる頭も平気で殴られ蹴られる。


 だから、近くの森にツリーハウスを造った。


 幸い、里にあるお店で物を買う事は出来るし、私を気にしてくれる人も居る。だから私が家族……。血縁者と会わないように配慮してくれる。店の裏側から離れさせてくれたり、場合によっては私を庇ってくれる事もあるぐらい、私は血縁者から忌み嫌われ日常的に暴力を揮われていた。
 その点、私の造ったツリーハウスは膨大な魔力のお陰でかなり強固な結界で護られており、私が許可しない限り誰も近付けないし認識も出来ない。もしもの為には炎ですらも通さない。
 いつか必ず、こんな地獄を抜け出して別の場所で人並みの生活を手に入れる。それだけが私の目的で、煌星の夜想曲キュイ ヘーリ ソリシティの伝統なんて正直どうでも良かった。でも、知識は少しでも多い方が良いと長老達に言われた通り、与えられたあの古い書庫に入り浸ってはひたすら頭に知識を叩き込んでいる。
 獣が豊富な森で、よく月落の里が魔物に襲われるぐらいだったので食糧には困らなかった。魔法や契約すらしていないが良くしてくれている燐獣達の力を借りてよく狩りをし、書庫で得た知識から倒した獲物を捌いて市場で売って。肉は全部私の胃に収まった。
 でも、肉ばかり食べていると体に悪いと学んだ。だから時々は山菜も採って食べ、里の皆よりも遥かに野性的な環境で、野性的な生き方をしてただ日々を凌いでいる。


 ただ、平穏な日々を求めて。
 ただ、いつか得られる居場所を求めて。
 ただ、自分が自分のまま生きていける未来を夢見て。


 そんな淡い期待を抱きながら、今日も静かに独り眠りに就いた。


❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖

――次回「第55話 まるで私の出せない本音が形を成したようで」

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。

今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

処理中です...