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第二章幕間:色褪せた記憶 在りし日の悲劇
第54話 私が私のまま、生きる為に
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【前回】もう居ないはずの同胞が、敵として見つかった
第54話 私が私のまま、生きる為に
――救われたいだけなのに。
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星を詠み、月に導かれ、そして何より夜と共に生きる古き歴史ある古の一族、煌星の夜想曲。今ではただの稀少一族として扱われ、煌星の夜想曲に残る文献通りの扱いは受けていない。
今の扱いはただの稀少一族として扱われ、その中でも特に突出しているのは燐獣達との親和性の高さのみ。何故煌星の夜想曲が夜と、月と、星と関連している一族なのかは知られておらず、同時に文献であるような誇り高くも気高く、それと同時にたった1人で国1つを数時間で亡ぼす事すら出来る火力を持つ煌星の夜想曲というのも長らく確認されておらず、煌星の夜想曲の長老ですらもその存在を伝説上の物だと軽んじている。
つまり、今の煌星の夜想曲は内外共にその正しい価値を理解していない。
煌星の夜想曲に残る文献に因れば煌星の夜想曲は成人になるとより星々との親和性が高まり、それと同時に燐獣よりも遥かに上位に位置する精霊達を肉眼で視る事が出来る。
化学上でいう所の原子のように、魔力に関する根源が生物としての形を取ったのが精霊だと言われていて。あの燐獣達ですらも、精霊なくして生きる事は出来ない。なのでまぁ……ある意味、海中に存在するプランクトンが一番彼らに近いのかもしれない。
そう言うと精霊の稀少性や存在感が一気に薄くなってしまうかもしれないが、数が多い所だったり。全ての根源である事に関してはあまり変わりない。違うのは、彼らが居なければありとあらゆる生物は魔法を始めとする、それに類似する能力を一切行使出来ない事になる。
言うならば、精霊を世界から消す事が出来ればこの世界から魔法を消し去るのとほぼ同義になる。そんな事は当然、出来やしないのだが。
その理由の1つに、精霊を視る事が出来る稀少な感性は一般人にはほぼない事が挙げられる。どれだけの聖職者であろうと彼らを肉眼に捉える事は出来ず、それこそ天使や精霊などに好かれた者にしか認識する事は出来ず、ある意味煌星の夜想曲もそれに近い存在だと言える。
「文献は、記録する為にあるのに。……なのに、伝説なんて後世の何もしないただの置物達が言って良い言葉じゃないのに。」
どれだけ信用出来ない内容でも、どれだけ要領を得ない内容でも、歴史書として残されたこの文献に書かれている以上それは事実だ。何より、少し前の満月の時に月へ聞いてみたらここに書かれている事は全て真実だと教えてくれた。だから……ここに書かれている事は全部本当の事なのに。
煌星の夜想曲の里、月落の里。そう名付けられたこの場所では私を含んだ総勢100人程度の煌星の夜想曲が住んでいる。……私もその1人。
でも、私の扱いはあまり良くない。いや、悪いと断言出来る。
煌星の夜想曲では代々巫女と呼ばれる存在が生まれる。巫女は月に、燐獣に、そして精霊に選ばれ、夜が最も寵愛する存在。だから煌星の夜想曲でも重宝されており、それはもう大切に扱われる……らしい。
ただこの歴史書のように、あの忌々しい長老達のように今の煌星の夜想曲は歴史を敬わない。歴史を軽んじて、煌星の夜想曲という一族に生まれた事ばかりを誇ってばかりで実力が着いてこない。
だからか、歴史を重んじる私の事は非常に疎まれていた。少なくともこの集落では巫女の存在は疎ましく思われており、勝手に育てと言わんばかりに古い書庫を与えられ、そこへの立ち入りを許されるだけで何か特別世話をされる訳でもなければ生活環境が改善される訳でもない。
今日も……痛かった。
その点、私の家族は両親兄弟全て最悪で最低だった。ただでさえ役に立たないと散々言われていた女として生まれ、更には疎まれている巫女として生まれたのを理由に毎日虐待を受けている。足にも腕にも腹にも生傷は絶えず、顔だけは傷付けられていないが髪で肌の隠れる頭も平気で殴られ蹴られる。
だから、近くの森にツリーハウスを造った。
幸い、里にあるお店で物を買う事は出来るし、私を気にしてくれる人も居る。だから私が家族……。血縁者と会わないように配慮してくれる。店の裏側から離れさせてくれたり、場合によっては私を庇ってくれる事もあるぐらい、私は血縁者から忌み嫌われ日常的に暴力を揮われていた。
その点、私の造ったツリーハウスは膨大な魔力のお陰でかなり強固な結界で護られており、私が許可しない限り誰も近付けないし認識も出来ない。もしもの為には炎ですらも通さない。
いつか必ず、こんな地獄を抜け出して別の場所で人並みの生活を手に入れる。それだけが私の目的で、煌星の夜想曲の伝統なんて正直どうでも良かった。でも、知識は少しでも多い方が良いと長老達に言われた通り、与えられたあの古い書庫に入り浸ってはひたすら頭に知識を叩き込んでいる。
獣が豊富な森で、よく月落の里が魔物に襲われるぐらいだったので食糧には困らなかった。魔法や契約すらしていないが良くしてくれている燐獣達の力を借りてよく狩りをし、書庫で得た知識から倒した獲物を捌いて市場で売って。肉は全部私の胃に収まった。
でも、肉ばかり食べていると体に悪いと学んだ。だから時々は山菜も採って食べ、里の皆よりも遥かに野性的な環境で、野性的な生き方をしてただ日々を凌いでいる。
ただ、平穏な日々を求めて。
ただ、いつか得られる居場所を求めて。
ただ、自分が自分のまま生きていける未来を夢見て。
そんな淡い期待を抱きながら、今日も静かに独り眠りに就いた。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第55話 まるで私の出せない本音が形を成したようで」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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感想なども励みになります。
今後とも『夜に煌めく炉は蒼銀で』をよろしくお願いいたします。
第54話 私が私のまま、生きる為に
――救われたいだけなのに。
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星を詠み、月に導かれ、そして何より夜と共に生きる古き歴史ある古の一族、煌星の夜想曲。今ではただの稀少一族として扱われ、煌星の夜想曲に残る文献通りの扱いは受けていない。
今の扱いはただの稀少一族として扱われ、その中でも特に突出しているのは燐獣達との親和性の高さのみ。何故煌星の夜想曲が夜と、月と、星と関連している一族なのかは知られておらず、同時に文献であるような誇り高くも気高く、それと同時にたった1人で国1つを数時間で亡ぼす事すら出来る火力を持つ煌星の夜想曲というのも長らく確認されておらず、煌星の夜想曲の長老ですらもその存在を伝説上の物だと軽んじている。
つまり、今の煌星の夜想曲は内外共にその正しい価値を理解していない。
煌星の夜想曲に残る文献に因れば煌星の夜想曲は成人になるとより星々との親和性が高まり、それと同時に燐獣よりも遥かに上位に位置する精霊達を肉眼で視る事が出来る。
化学上でいう所の原子のように、魔力に関する根源が生物としての形を取ったのが精霊だと言われていて。あの燐獣達ですらも、精霊なくして生きる事は出来ない。なのでまぁ……ある意味、海中に存在するプランクトンが一番彼らに近いのかもしれない。
そう言うと精霊の稀少性や存在感が一気に薄くなってしまうかもしれないが、数が多い所だったり。全ての根源である事に関してはあまり変わりない。違うのは、彼らが居なければありとあらゆる生物は魔法を始めとする、それに類似する能力を一切行使出来ない事になる。
言うならば、精霊を世界から消す事が出来ればこの世界から魔法を消し去るのとほぼ同義になる。そんな事は当然、出来やしないのだが。
その理由の1つに、精霊を視る事が出来る稀少な感性は一般人にはほぼない事が挙げられる。どれだけの聖職者であろうと彼らを肉眼に捉える事は出来ず、それこそ天使や精霊などに好かれた者にしか認識する事は出来ず、ある意味煌星の夜想曲もそれに近い存在だと言える。
「文献は、記録する為にあるのに。……なのに、伝説なんて後世の何もしないただの置物達が言って良い言葉じゃないのに。」
どれだけ信用出来ない内容でも、どれだけ要領を得ない内容でも、歴史書として残されたこの文献に書かれている以上それは事実だ。何より、少し前の満月の時に月へ聞いてみたらここに書かれている事は全て真実だと教えてくれた。だから……ここに書かれている事は全部本当の事なのに。
煌星の夜想曲の里、月落の里。そう名付けられたこの場所では私を含んだ総勢100人程度の煌星の夜想曲が住んでいる。……私もその1人。
でも、私の扱いはあまり良くない。いや、悪いと断言出来る。
煌星の夜想曲では代々巫女と呼ばれる存在が生まれる。巫女は月に、燐獣に、そして精霊に選ばれ、夜が最も寵愛する存在。だから煌星の夜想曲でも重宝されており、それはもう大切に扱われる……らしい。
ただこの歴史書のように、あの忌々しい長老達のように今の煌星の夜想曲は歴史を敬わない。歴史を軽んじて、煌星の夜想曲という一族に生まれた事ばかりを誇ってばかりで実力が着いてこない。
だからか、歴史を重んじる私の事は非常に疎まれていた。少なくともこの集落では巫女の存在は疎ましく思われており、勝手に育てと言わんばかりに古い書庫を与えられ、そこへの立ち入りを許されるだけで何か特別世話をされる訳でもなければ生活環境が改善される訳でもない。
今日も……痛かった。
その点、私の家族は両親兄弟全て最悪で最低だった。ただでさえ役に立たないと散々言われていた女として生まれ、更には疎まれている巫女として生まれたのを理由に毎日虐待を受けている。足にも腕にも腹にも生傷は絶えず、顔だけは傷付けられていないが髪で肌の隠れる頭も平気で殴られ蹴られる。
だから、近くの森にツリーハウスを造った。
幸い、里にあるお店で物を買う事は出来るし、私を気にしてくれる人も居る。だから私が家族……。血縁者と会わないように配慮してくれる。店の裏側から離れさせてくれたり、場合によっては私を庇ってくれる事もあるぐらい、私は血縁者から忌み嫌われ日常的に暴力を揮われていた。
その点、私の造ったツリーハウスは膨大な魔力のお陰でかなり強固な結界で護られており、私が許可しない限り誰も近付けないし認識も出来ない。もしもの為には炎ですらも通さない。
いつか必ず、こんな地獄を抜け出して別の場所で人並みの生活を手に入れる。それだけが私の目的で、煌星の夜想曲の伝統なんて正直どうでも良かった。でも、知識は少しでも多い方が良いと長老達に言われた通り、与えられたあの古い書庫に入り浸ってはひたすら頭に知識を叩き込んでいる。
獣が豊富な森で、よく月落の里が魔物に襲われるぐらいだったので食糧には困らなかった。魔法や契約すらしていないが良くしてくれている燐獣達の力を借りてよく狩りをし、書庫で得た知識から倒した獲物を捌いて市場で売って。肉は全部私の胃に収まった。
でも、肉ばかり食べていると体に悪いと学んだ。だから時々は山菜も採って食べ、里の皆よりも遥かに野性的な環境で、野性的な生き方をしてただ日々を凌いでいる。
ただ、平穏な日々を求めて。
ただ、いつか得られる居場所を求めて。
ただ、自分が自分のまま生きていける未来を夢見て。
そんな淡い期待を抱きながら、今日も静かに独り眠りに就いた。
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――次回「第55話 まるで私の出せない本音が形を成したようで」
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