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第一章
ルイス視点
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あれは間違いなく、母さんの匂いだった。
………ごめんな、母さん……。
俺は、自身で食いちぎったキメラの足の部分を眼の前に、立ちすくんでいた。
その足は黒く、母さんの綺麗な銀の毛並みとは程遠い。
母さんの足は至る所から棘が出ていたりしない。
でも、紛れもない、一緒に居た時間が短くても忘れる筈がない、この匂いは___母さんだ。
母さんは生きていたのか?
なら、俺が、母さんをころした……?
そう思った時、俺はラインハルトに抱きしめられていた。
ラインハルトは何も言わない。ただ抱きしめるだけ。
それなのに、いつの間にか目からは涙が零れていた。
…………泣けたんだな、俺って。
他人事の様にそう思った。
泣くような事など、人間だった時も、フェンリルの時も無かった。
自分でも整理のつかない感情が、涙になって出ていく。それでも次々に感情が溢れて、留まるところをしらない。
俺が母さんを殺してしまったと絶望する自分。
ならばあのままキメラとして生きるのが母さんの幸せかと怒る自分。
これでよかったんだと自分を正当化する自分。
色んな自分が居るのに、全員が泣いているんだ。絶望して、怒って、これでよかったと思って、それでも泣いている。
俺は、ラインハルトに抱きしめられながら、自分でもびっくりするほど静かに泣いた。
その後、討伐部隊の人が来て、俺の涙は止まった。
死体はそのまま土に埋めるようで、俺も穴を掘った。
__今度こそ、安らかに眠ってくれよ。母さん。
………ごめんよ。ちゃんと弔ってあげれなくて。
穴を掘った場所に、花畑から少し貰って来た花を備える。
ラインハルトは、静かに見守ってくれた。
家に戻った。ファーリーさんが迎えてくれて、ご飯を食べた。風呂も入った。
夜。ラインハルトと二人でベットに入った。ぎゅうっとラインハルトに抱きしめられる。
人間だったら痛いくらいだろうが、フェンリルな俺は全然痛くない。
「………すまない、ルイス……。俺のせいだ、…。」
思い詰めた声で話し出すラインハルト。
なんの事かわからないな。俺は顔を埋めているラインハルトに優しく頭突きをする。
「………あのフェンリルは、お前の仲間だったんだろう…?」
ラインハルトの声が震えている。…わかったのか。
「おれが、俺がお前に仲間をころさせた……!」
あ゛ぁん?!それは聞き捨てならないぞラインハルト……!
まだ顔を埋めたままのラインハルトを強めにどつく。
すると、ラインハルトはやっと顔を上げた。少々涙の滲んだ顔に吠える。
「ガゥ……!」
俺に安々と殺されるほど母さんは弱くないし、あれが母さんと知っていたとしても俺は同じ事をした!!
それをお前が殺させただと…!?思い上がりも甚だしい!!
いつの間にか俺はまた泣いていた。
呆然としたラインハルトは、とうとうボロボロと涙を零し始めた。
なんでお前も泣いているんだ。そう思いながら、ラインハルトの涙を舐める。
「…………こんな時、俺は何を言ったらいいのかわからないんだ……。」
俺も知らないさ。そんな言葉、使う事が無い方がいいに決まっている。
それに、誰かに励まされずとも、俺は前を向く。
俺の生きるは、息を吸って吐くだけの作業じゃないからな。
…………だがら、そんなに泣くな。お前のせいなんかじゃない。
最初にあった時のように、ラインハルトを包み込む様にして眠った。
…………俺が人間のままだったなら、ラインハルトになんと言っただろうか。
…………結局は俺だから、変わりはしないか………。
………ごめんな、母さん……。
俺は、自身で食いちぎったキメラの足の部分を眼の前に、立ちすくんでいた。
その足は黒く、母さんの綺麗な銀の毛並みとは程遠い。
母さんの足は至る所から棘が出ていたりしない。
でも、紛れもない、一緒に居た時間が短くても忘れる筈がない、この匂いは___母さんだ。
母さんは生きていたのか?
なら、俺が、母さんをころした……?
そう思った時、俺はラインハルトに抱きしめられていた。
ラインハルトは何も言わない。ただ抱きしめるだけ。
それなのに、いつの間にか目からは涙が零れていた。
…………泣けたんだな、俺って。
他人事の様にそう思った。
泣くような事など、人間だった時も、フェンリルの時も無かった。
自分でも整理のつかない感情が、涙になって出ていく。それでも次々に感情が溢れて、留まるところをしらない。
俺が母さんを殺してしまったと絶望する自分。
ならばあのままキメラとして生きるのが母さんの幸せかと怒る自分。
これでよかったんだと自分を正当化する自分。
色んな自分が居るのに、全員が泣いているんだ。絶望して、怒って、これでよかったと思って、それでも泣いている。
俺は、ラインハルトに抱きしめられながら、自分でもびっくりするほど静かに泣いた。
その後、討伐部隊の人が来て、俺の涙は止まった。
死体はそのまま土に埋めるようで、俺も穴を掘った。
__今度こそ、安らかに眠ってくれよ。母さん。
………ごめんよ。ちゃんと弔ってあげれなくて。
穴を掘った場所に、花畑から少し貰って来た花を備える。
ラインハルトは、静かに見守ってくれた。
家に戻った。ファーリーさんが迎えてくれて、ご飯を食べた。風呂も入った。
夜。ラインハルトと二人でベットに入った。ぎゅうっとラインハルトに抱きしめられる。
人間だったら痛いくらいだろうが、フェンリルな俺は全然痛くない。
「………すまない、ルイス……。俺のせいだ、…。」
思い詰めた声で話し出すラインハルト。
なんの事かわからないな。俺は顔を埋めているラインハルトに優しく頭突きをする。
「………あのフェンリルは、お前の仲間だったんだろう…?」
ラインハルトの声が震えている。…わかったのか。
「おれが、俺がお前に仲間をころさせた……!」
あ゛ぁん?!それは聞き捨てならないぞラインハルト……!
まだ顔を埋めたままのラインハルトを強めにどつく。
すると、ラインハルトはやっと顔を上げた。少々涙の滲んだ顔に吠える。
「ガゥ……!」
俺に安々と殺されるほど母さんは弱くないし、あれが母さんと知っていたとしても俺は同じ事をした!!
それをお前が殺させただと…!?思い上がりも甚だしい!!
いつの間にか俺はまた泣いていた。
呆然としたラインハルトは、とうとうボロボロと涙を零し始めた。
なんでお前も泣いているんだ。そう思いながら、ラインハルトの涙を舐める。
「…………こんな時、俺は何を言ったらいいのかわからないんだ……。」
俺も知らないさ。そんな言葉、使う事が無い方がいいに決まっている。
それに、誰かに励まされずとも、俺は前を向く。
俺の生きるは、息を吸って吐くだけの作業じゃないからな。
…………だがら、そんなに泣くな。お前のせいなんかじゃない。
最初にあった時のように、ラインハルトを包み込む様にして眠った。
…………俺が人間のままだったなら、ラインハルトになんと言っただろうか。
…………結局は俺だから、変わりはしないか………。
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