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空知音

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第九章 異世界訪問編

第5話 勇者の帰還

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 水盤の儀が終わり、舞子、加藤、加藤夫妻、渡辺夫妻、翔太君、ヒロ姉、エミリーそれに俺は、迎賓館二階にある、続き部屋に来ていた。

 ここは、かつて『初めの四人』が異世界に来た時、最初に宿泊した場所でもあるし、俺とルルが初めて出会った場所でもある。
 昨夜、異世界から来た家族とエミリーは、ここに泊まった。

「ボー、エミリーちゃんは、なんで覚醒もしないで、『聖樹の巫女』になったんだ?」

「いや、加藤。
 俺たちは、彼女が覚醒するところを見てる」

「えっ? 
 史郎君、いつ?」

「ほら、舞子、君がエミリーの目を治療したときだよ」

「えっ? 
 私、気づかなかったよ」

「あの時、エミリーの体全体が光ってたんだ。
 俺は、てっきり舞子が、彼女の全身に治癒魔術を掛けたと思ったんだが……」

「ああ、あん時か。 
 確かにエミリーちゃん、光ってたな」

「舞子、エミリーは、どこか悪いところがあるの?」

「お母さん、それは心配しなくていいよ。
 今、私たちが話しているのは、彼女が覚醒した職業の事だから?」

「職業っていっても、エミリーはまだ十二だろう」

「ああ、おじさん、地球で言う職業とはちょっと違うんですよ」

 俺は、加藤夫妻、渡辺夫妻に、異世界における職業の話をした。

「ウチの雄一が勇者だって、あれかい?」

「そうです。 
 博子お姉さんは、畑山さんと同じ、『聖騎士』っていう職になりました」

「史郎君、我々は、どうしてその覚醒とかいうのをしなかったのかね?」

 渡辺のおじさんが、尋ねる。

「それが、年齢がある程度以上になると、覚醒しなくなることが知られているんです。
 それが分かっていて、皆さんが水盤の儀を受けたのは、異世界人だともしかして、と思われたからでしょう」

「そうか。
 ウチの舞子も、あれで聖女になったんだね?」

「はい、そうです。
 そのときは、もう周囲が大騒ぎでしたよ」

「ウチの雄一もかい?」

「ええ、おばさん。
 彼は勇者になりましたから、それは国を挙げてのお祭りがありました」

「なんだい、そりゃ! 
 勇者って、それほどのものかい」

「ええ、このパンゲア世界で、彼はヒーローですよ」

「どうもねえ。
 我が子だからかもしれないけど、ちょっと信じられないねえ」

「とにかく、一度マスケドニアの方に送りますよ。
 もう女王陛下と向こうの国王には、話してるんです」

「分かったよ。
 ここからどうやって行くんだい?」

「ちょっと目をつぶっててください」

 史郎が指を鳴らすと、加藤、加藤の両親、ヒロ姉がマスケドニア王宮の来賓室に瞬間移動した。

 ◇

 あらかじめ念話してあったので、俺たちがマスケドニアに瞬間移動すると、部屋にはマスケドニア国王、軍師ショーカ、ミツさんが待っていた。あまり人前に出ることがない、ミツさんのご両親もいた。

「おお! 
 勇者カトー、久しぶりじゃな?」

「陛下、ただいま」

「一体どうしたことかと、心配しておったのじゃ」

 これには、俺が答える。

「聖樹様のお導きで、私たちの世界へ戻っておりました。
 勇者を長くお借りして申しわけありません」

「ははは、シロー、他人行儀なことを言うな。
 それに、なんと聖樹様のお導きとはな。
 大いに納得したぞ。
 さすがは、勇者じゃな」

「いや、俺は、何もしてないんだけど」

「彼は、向こうでも大活躍でしたよ」

「そうか、そうか。
 この方々が、勇者殿のご家族じゃな?」

「ええ。
 おい、加藤、みんなを紹介しろよ」

「ああ、そうだな。
 えー、こちらが父、母、そして、姉です」

「おまえ、ひどい紹介だな」

「他にどうしろってんだ」

「とにかく、俺は今日中に天竜国へ向かうから、もう行くぞ」

「おい、ボー、つれないこと言うなよ。
 もう少しいてくれ」

 俺は、加藤の背中を叩くと、立ちあがった。

「陛下、ショーカさん、俺はこれで失礼します」

「うむ、ご苦労であったな」

「これ、俺たちから陛下へのお土産です。
 後で、加藤から説明を受けてください。 
 あと、加藤の両親には、こちらに滞在する間だけ、多言語理解の指輪をお貸しくださると助かります」

 確か、伝説級の指輪があと二つ、残っていたはずだ。

「おお、そうじゃな。
 そうしよう。
 お主も、また、近いうちに来てくれよ」

「ええ、必ず」

 俺は、いつになく神妙な面持ちで立ちつくしているヒロ姉に、多言理解の指輪を渡す。

「ヒロ姉、それ着けると、陛下と直接話せるよ。
 今のうちに、そうしとかないと、ヒロ姉だけは、後で俺と行くところがあるからね」

「えっ? 
 私?」

 俺は、ヒロ姉が驚いた顔をしたのを見届けると、アリスト城の迎賓館に跳んだ。
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