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空知音

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第九章 異世界訪問編

第35話 地球世界の神樹2 -- ヨーロッパ --

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 俺たちが乗った点ちゃん1号は、ヨーロッパ中の上空をあちこち飛びまわったが、神樹様の反応はなかった。

 ヨーロッパには、神樹様がいないのかもしれない。
 俺たちは、最後にドイツの「黒い森」へ向かった。

 森の上空に来ると、エミリーが目を見開く。

「大変! 
 シローさん、急いで」

 俺は、彼女が指さした方向に点ちゃん1号を進める。

「あ、ここ! 
 この下です!」

 四人用ボードを出し、すぐに降下する。

 木々の上端は、火事があったように黒ずみ、枝が無かった。
 俺はそれが酸性の雨や霧の影響だと知っていた。

 エミリーの指示で向かった先にあったのは、そういう木の一本だった。

 俺が「光る木」の「枯れクズ」を出すと、すぐに翔太が穴を掘る。
 エミリーが、急いでその穴に「枯れクズ」を投げこんだ。

 エミリーの手が、木にかざされると、それはぼんやりと光り始めた。
 しかし、その光は、弱々しく、点滅していた。

 点ちゃんに念話のネットワークを構築してもらう。

『誰じゃ、このような事をしおって。
 もう、安らかに眠らせてくれ』

『ピーター、しかりして!』

『お前は、誰じゃ、なぜその名を知っておる』

『森に迷い込んだ男の子がつけた名前よね。
 あなたの記憶を読んだの』

 エミリーの新しい能力が開花する。

『……お主、一体何者じゃ』

『私は、エミリー「聖樹の巫女」よ』

『なんと、聖樹の巫女様か。
 元気だった頃、聖樹様から話だけは聞いておるよ』

『あなた、酷く傷ついてるわね』

『おっしゃるとおりじゃよ。
 傷口が痛くて、我慢ができない』

 エミリーが、俺にボードを出すように言う。
 俺は、エミリーが指示する通り、神樹様の先端辺りにボードを上昇させた。
 エミリーの手が、黒く炭化したような幹にかざされる。

 神樹様の先端が輝くと、白い木肌が現れた。
 エミリーは、肩で息をついている。
 これは今までになかったことだ。

 俺たちが、地上に降りると、再び神樹様からの念話があった。

『痛みが消えた! 
 巫女様、ありがとうございます』

『もう、こんなことは無いはずよ。
 あなたは、聖樹様との繋がりも取りもどしたから』

 神樹ピーターは、しばらく黙りこんでいた。

『聖樹様と繋がったぞ! 
 巫女様、感謝いたします』

『よかったわね。
 危ないところだった』

『はい、ワシはもう意識を手放しかけておりました』

『何かあれば、神樹のネットワークを使って私に連絡してね。
 いつでも助けにくるから』

『もったいないことじゃ。
 しかし、巫女様が現れたということは、世界が危機に陥っているということじゃな』

 これには俺が答える。

『神樹様、シローといいます。
 おっしゃる通りです』

『おお、やはり、お主がシローか。
 聖樹様、兄弟姉妹が世話になっておる。
 ありがとう』

『いえ、俺が好きでやってることなんで。
 それより、世界の危機について、何かご存じありませんか』

『詳しいことは分からぬが、恐らく我らで繋がった世界が崩壊するということであろう』

 神樹ピーター様の予想は俺と同じものだった。
 エミリーと翔太が青くなっている。
 彼らには今まで、はっきりとはそれを知らせていなかったからね。
 しかし、お役目柄、ずっと知らない訳にもいくまい。

『神樹様、私はエミリーの父でございます。
 エミリーの役割はどんなものでしょうか』

『そうじゃな。
 世界を崩壊から救う、唯一の存在じゃ』

『やはり、そうですか』

『お主は心配しておるようじゃな。
 じゃが、その童(わらわ)やシローを見よ。
 頼もしい助けがあるではないか。
 よいか、巫女様は、世界を「救う」存在なのじゃぞ。
 それを忘れるでない』

『はい、分かりました』

『童、シロー、そして、点の子よ。
 巫女様を頼むぞ』

『はい! 
 エミリーは、絶対にボクが守ります』

『(^▽^)/うん、分かったー』

『では、巫女様、いずれまたお目にかかりましょう。
 他の神樹たちを頼みますぞ』

 俺たちは、点ちゃん1号に乗り、ドイツの「黒い森」を後にした。
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