上 下
378 / 607
第九章 異世界訪問編

第39話 地球世界の神樹6 -- 南アメリカ --

しおりを挟む

 ハーディ邸から、エミリーと翔太を呼びよせた。

 焼き畑は、神樹様の直前で止まっていた。
 ここら辺り一帯は、国の自然保護区になる予定だ。
 この国に『枯れクズ』を売る条件として俺が要求した。

 神樹様はそれほど大きくなかったが、複雑に曲がりくねった幹がその年月をうかがわせた。
『枯れクズ』をその根元に埋めたエミリーが、木に手をかざす。

 木が光った後、俺たちの頭に念話が流れこんできた。

『エミリー嬢ちゃんや、ありがとう。
 シロー、ワレを救うてくれて感謝する』

『神樹様、どうしてエミリーの名前や、私がしたことをご存じなのですか?』

『私の事はショーロと呼んでおくれ。
 お前たちの事は、木々から聞いたのさ』

『聞く?』

『私の働きはね、木々が見聞きしたことを伝えることなのさ。
 若い頃、聖樹様と話せるときに教えてもらったけれど、こういった力は珍しいらしいよ』

 それが、ポータルズ世界から失われるところだったのか。
 危ないところだった。

『ショーロさん、もう聖樹様と話せるはずです。
 試してみてください』

 エミリーが神樹に微笑みかける。
 しばらくの静寂の後、聖樹様から再び念話が入った。

『エミリー嬢ちゃんは、巫女様じゃったか。
 失礼を許しておくれ』

『いえ、気にしていませんよ』

『それにショータといったか、そこの童は巫女様の『守り手』だそうではないか』

『はい、神樹様。
 ボクがエミリーの『守り手』です』

『巫女様のこと、よろしく頼むぞ』

『はい、もちろんです』

『シロー、お主が以前救うた『光る木』の仲間たちは、神樹同士の繋がりを強め、我は神樹と普通の木々との繋がりを強めるのじゃ。
 我に力が戻れば、神樹たちが木々の助けをより多く受けとれるようになるぞ』

『そのようなお方がご無事で何よりでした』

『お主のおかげじゃよ。
 お主の力、あれは明らかにポータルズ世界群が、お主に与えた力じゃな』

『そうですか。
 俺は聖樹様のお言いつけ通り、エミリーを守るだけです』

『お主たち三人は、世界群にとり誰一人かけがえのない存在じゃ。
 くれぐれも、その身を大事にな』

『過分なお言葉、ありがとうございます』

『では、もう行け。
 他の神樹たちが巫女様を待っておる』

 エミリー、翔太と俺は、神樹ショーロ様に別れを告げた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

踏み出した一歩の行方

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:65

最強美人が可愛い過ぎて困る

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:182

性感マッサージに釣られて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:17

あなたの妻にはなれないのですね

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:36,515pt お気に入り:396

【完】眼鏡の中の秘密

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:42

処理中です...