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空知音

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第十章 奴隷世界スレッジ編

第60話 戦いの終わり1 

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 点ちゃんに頼み、ポポの群れを停めた俺は、その背から降りた。
 最後まで抵抗していた同盟軍の兵士を、アリスト=マスケドニア連合軍が武装解除している。
 こうなると連合軍の人手がありがたい。

 ほとんどの兵は素直に武装解除されたが、やはり、何人かは往生際が悪い者がいるようだ。

 ◇

 ブルーテ、ウインダー兄弟は、皇帝直属の近衛兵であり、ガーベルの側近でもある。
 二人は武装解除しているアリスト=マケドニア連合軍の兵士を、その背後から魔術で攻撃しようとした。

 火球が二つ、連合軍が密集した辺りに飛んでいく。
 そこへ、突然、水の壁が立ちあがった。
  
 ジュッ

 水の壁にぶつかった火の玉が、音を立てて消える。

「くそっ!
 何ヤツ!」

 二人が振りかえると、黒いローブを着た顔の右半分が黒い男が立っており、その横には年端もいかない少年がいた。

「何者だ!
 名乗れ!」

 近衛兵の声に壮年の男が答えた。

「私、ピエロッティと申します。
 大聖女様の従者をしております」

「ボクは、ピエロッティ先生の生徒ショータだよ」

 近衛兵の兄弟は、二人ともうんざりした顔をした。

「お前らの相手なぞしている暇はない。
 どこかに消えろ」

「そうはいきませんよ。
 あなた方には、世界群を危機に陥れた罪を償ってもらいます」

 顔の半分が黒い男が、落ちついた声で告げた。

「お前、まさか巨人族のたわ言を信じているのか?
 ええい、もういい!
 二人とも片づけてくれる」

 兄のブルーテが素早い詠唱を終えると、彼が持つワンドの先に火球が生じた。

「くらえっ、ファイアボール!」

 しかし、その火の球は、ピエロッティが作りだした水の壁に再び阻まれた。
 水の壁がその使命を終え、消えていく。  
 弟のウインダーが待っていたのは、まさにこの瞬間だった。
 素早い詠唱で火球を飛ばすと、それが消えかけた壁を突きぬけ、ピエロッティと翔太に向かった。

 近衛兵二人が、勝利を確信したのも仕方ないだろう。
 しかし、彼らは思いもしなかったものを目にする。
 
 標的二人の前に、巨大な水球が浮かんでいたのだ。
 命中するはずだった火球は、その表面に吸いこまれるように消えていた。

「お、おい、嘘だろう……」

 ブルーテが言葉を漏らしたのは、その巨大な水球がこちらに向かってきているような気がしたからだ。
 直径十メートル近い水の球は、そのあまりの大きさに、動いていることが信じられないほどだ。

 加速した水玉が、二人の近衛兵を直撃する。

 ドーン

 彼らは、あっという間に意識を刈りとられた。

「ショータ、やったな」

「先生もね!」

 ピエロッティと翔太、師弟はハイタッチを交わした。

 ◇

 こちらでも、二人組の同盟軍兵士が、連合軍の背後を突こうと近づいていた。

 ハダケ、ザイの二人は特殊部隊の一員で、その中でも特に素早い動きで知られていた。
 武装解除している連合軍兵士の後ろから風のように襲いかかった瞬間、横方向からぶつかってきた何かに突きとばされてしまった。

「ぐあっ」
「うわっ!」 
  
 地面に転がった二人は、その勢いを利用し器用に立ちあがった。
 彼らの前に立っていたのは、透けるような白い鎧を身に着けた、二人の獣人だった。

「よくやったわ、ポン太」

 鎧から外に出たニョロニョロ尻尾が激しく振られている。

「油断しないで、ミミ」

 こちらは、ふさふさ尻尾を太くすると、同盟軍の二人と向きあった。

「君たち、私たちに敵うと思ってるのかな?」

 特殊部隊で教官もしている男ハダケが、馬鹿にしたような笑いを浮かべる。

「やってみなければ、分からないわよ」

 ミミが相手を挑発する。

「じゃ、お前は俺が相手だ」

 少し大柄な方の兵士ザイが、ミミと向きあう。
 まだ大人にもなっていないような相手を馬鹿にしたのだろう、彼は素手のまま拳を前に構えた。
  
 次の瞬間、左にフェイントをかけ、素早い右フックを放つ。
 しかし、それは空を切った。
 兵士が左右を見るが、少女の姿は無い。
 ゾッとした瞬間、首筋に短剣が触れた。

「ま、参った!」

 兵士ザイはそう言いながら、左手で腰に差したナイフを抜く。振りかえりもせず、逆手に持ったそれを、背後の少女に突きたてようとした。

 パシリ

 左手首に太いヒモのようなものが巻きつく。
 
「往生際が悪いと、女性に嫌われるよ」 
 
 左手に巻きついたものが尻尾だと分かった瞬間、兵士の周囲を灰色の壁が囲む。いつの間にか彼はロープでぐるぐる巻きにされていた。
 
「な、な、なんだ一体!?」

 バランスを崩し、地面に倒れながら叫ぶ。
 ザイが周囲に見た灰色の壁は、ミミが彼の周りを凄いスピードでぐるぐる回る、その残像だったが、連合軍の兵士にとり押さえられた彼がそれを知ることはなかった。

 一方、こちらは剣を抜き向きあう、ポルと兵士ハダケ。
 腕に自信がある兵士は、目の前の少年を完全に侮っていた。
 
「俺の動きについてこれるかな?」

 小柄なハダケは、剣先が霞むほどの攻撃を連続でくり出す。
 ポルはその攻撃を紙一重でかわしていく。

 おかしい、どうして俺の斬撃がこうもたやすくかわされるのか?

 ハダケが疑問を抱く、その一瞬が隙となった。
 ポルが一筋の光になると、あっという間にハダケの背後を取る。
 狸人ポルがその変身能力を使い、蛇の姿で背後に回りこんだのだ。
 元の姿に戻った少年が、剣をハダケの首筋に当てた。

「……こ、降参する」

 剣を手から放した兵士を、連合軍の兵士が縛りあげた。
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