ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第十一章 ポータルズ列伝

キャロ編 第3話 ギルドの昼 

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 お昼前になると、ギルドに居る人が、ぐっと減るの。

 みんな討伐や採集に出かけちゃうからね。
 討伐と採集を受けつけるカウンターがあるのだけど、そこに座ってる女性二人も、暇そうにしているわ。
 若くて可愛い感じの方がミリーさん、落ちついた大人の女性がシェリルさん。
 二人とも、冒険者に凄く人気があるの。

 そうね、この時間にギルドにいるのは、よほどのベテランか、入ったばかりの初心者が多いわ。
 ああ、貼りだされた依頼書の前でまごついているのは、最近冒険者になったばかりのリンド君ね。

「リンド君、どうしたの?」

 まだ十五才のリンド君は、小柄な上に童顔だから、年齢よりずっと幼く見えるわ。

「あ、ぎ、ギルマス……」

「分からないことがあったら、遠慮なく聞けばいいのよ」

「ええと、ボク、字が読めないんです」

 ああ、そういうことか。冒険者は、学歴が無くてもなれるから、中には字が読めない人もいるの。この世界なら、字が読めるのは、五人に一人くらいね。

「どんな依頼が希望なの?」

「できれば討伐依頼で、簡単なものがいいです」

「そうね。
 でも、君には、まだ討伐は早いかな。
 慣れるまでは、絶対に一人で出かけちゃだめよ。
 ちょっと待ってね」

 私は、ちょうどギルドに入ってきた兄妹に声を掛けた。

「スタン君、スノーちゃん、ちょっと来てくれる?」

 スタン君は十七才で銅ランク、スノーちゃんは十六才で鉄ランクなの。

「君たち、パーティ組みたいって言ってたよね」

「ええ、誰かいい人がいましたか?」

「試しに、この子とパーティ組んでみてくれない?」

「えっ? 
 この子ですか? 
 君、成人してるの?」

この国では、冒険者になれるのは成人、つまり15歳以降なの。

「してるよ! 
 もう冒険者だよ」

 リンド君は、幼く見られた事で、ちょっと腹を立てているみたい。

「スタン君、今回も採集依頼でしょ?」

「ええ、白雪草の依頼があれば受けようかと思ってます」

「いい判断だわ。
 確か、『聖騎士の森』で白雪草の依頼があったはずよ。
 できたらそれに、このリンド君を連れていってほしいの」

「えっ、でもボク、やっぱり討伐の方が……」

リンド君は、討伐依頼が貼ってある壁をじっと見てるわ。全く分かっていないわね。

 冒険者になるときに渡す、革表紙の本があるんだけど、それには初心者がすべきこと、してはいけないことがきちんと書いてあるの。
 でも、字が読めなかったり、めんどくさがって読まない人が多いのよ。
 そういう人は、早いうちに怪我をして引退するか、命を失うわね。

 そういえば、瞬く間に金ランクになった、あのぼーっとした少年は、字が読めないから教えてくれって、私に頼んだわ。
 やっぱり、一流はスタートから違うってことよね。

「リンド君、シローって知ってる?」

「もちろん知ってますよ。
 あっという間に金ランクになった、有名なルーキーでしょ。
 ボクは、彼に憧れて冒険者になったんです」

 自分が目標とする人の名前を聞いて、リンド君は目がキラキラしてるわ。

「これは、スタン君たちにも聞いてほしいの。
 彼が選んだ最初の依頼が何だったか、知ってる?」

「有名な、ゴブリンキング討伐ですか?」

 彼に詳しいリンド君が、すかさず答えたわね。

「外れ。
 白雪草の採集よ」

「「えっ!?」

 どうやら、凄く驚いたようね。

「彼は、もう一人の女の子と採集に行ったんだけど、普通の三倍以上白雪草を採ってきたのよ」

「へー、すごいですね」

 スタン君が感心してるわ。

「彼も字が読めなかったけど、冒険者入門書を読んでくれるよう私に頼んだの。
 それがどういうことか分かる? 
 一人前の冒険者になるには、小さなことからコツコツ丁寧に積みあげるしかないのよ」

 三人の目がキラキラ輝く。

「ボク、きちんと基礎から積みあげますっ!」

 リンド君、急に元気になったわね。

「君、白雪草の採集だけど一緒に行くかい?」

 スタン君が、自分からリンド君を誘ったわ。

「はいっ!」

「お兄ちゃん、私にもきちんと教えてよ」

「分かってるって」

 三人は、採集コーナーで依頼書を読み始めたようね。
 スタン君は字が読めるから、リンド君とスノーちゃんはよく話を聞いているみたいね。

 こういうことも、ギルマスの仕事なの。ただ、少し慣れたら、後は本人任せ。
 だって、命が懸かってくる依頼も多いから、全て自己責任で行うの。
 一流の冒険者は、技術はもちろんだけど、判断力が大切なのよ。
 これは、私が冒険者を見ていて気づいたことね。

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