ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第十二章 放浪編

第9話 地球世界からの報告 

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 ガリガリと精神を削られた結婚式の後、アリストの『くつろぎの家』に帰ってきた俺は、ルルが呆れるほど、ぼやぼやと何もせず過ごしていた。
 今も三階の自室にこもり、ベッドに横になりゴロゴロしている。
 だって、削られた精神を元に戻すのって大変なんだよ。
 
『(*'▽')つ 言い訳ーっ!』
「ミー!」(ほんと、そう!)

 いや、点ちゃんはともかく、ブランちゃんは、俺と一緒にゴロゴロしてるじゃない?

「ミーミ、ミーミ」(猫はゴロゴロするのがお仕事)

 まあ、そうなんですがね。
 
「お兄ちゃん、ブレットさんが来てるよ」

 ノックの音がに続き、コルナの声がする。

「分かった。
 すぐに降りるから、お茶を出して待っててもらって」

「早くしてね」

 くう、コルナはよく分かってるなあ。
 あと五分、あと五分横になっていいよね。

 ◇

「おい、シロー、ずい分遅かったな」

 しばらくして客間に降りると、空になったカップを前に、ブレットが手もち無沙汰に座っていた。
 
「シロー、お客様を待たせすぎです」

「コリーダ、次から気をつけるよ」

 コリーダが、淹れたてのお茶が入ったカップを二つ、トレイに載せ運んできたので、それを受けとる。

「で、何の話です?」

 俺の問いかけに、ブレッドが身を乗りだす。

「お前の故郷、『地球世界』って言ったか、そこのギルドから連絡があったんだ」

 少し前に、翔太の『騎士』たちがこの世界を訪れたのだが、それをきっかけに、ギルドから頼まれ、地球にギルド支部を作ることになったのだ。 
 地球には、今までギルドが無かったわけで、当然のこと冒険者もいないから、ギルド設立といっても形だけのものになる。 
 白騎士がギルドマスターとなり、施設もつくらず、ポンポコ商会が、そのままギルド支部としての働きも担うことになった。
 
「地球ギルドからの連絡って?」

「なんでも、『枯れクズ』ってものに関することらしい。
 お前、何のことか分かるか?」

 ふーん、『枯れクズ』のことでわざわざ連絡があるってことは、例の件だな。

「ああ、分かった。
 連絡ありがとう。
 ハピィフェローのみんなにもよろしくね」

「ああ、ウチの女性陣が、お前が地球世界に行くなら、チョコレートとかいうの頼むって言ってたぞ」

「ああ、分かってる」

「俺にはウイスケたのむぞ」

「ああ、ウイスキーね」

 ブレットは、下げていた布袋をテーブルの上に置いた。

「あと、これ、俺たちからの結婚祝い。
 ヒロコさんに渡しといて」

 ブレットたちのパーティは、ヒロ姉と面識があるからね。

「ありがとう、渡しとくよ」

 ブレットが帰ると、俺は旅の準備を始めた。
 どうやら、のんびりできる時間は終わったようだ。

 ◇

「お兄ちゃんは両極端なんだから、もう!」

 コルナが言っているのは、俺がテキパキ旅行の準備を始めたからだ。
 
「シロー、今回、私たちはどうしましょう?」

 俺の行く先が、地球世界と分かっているので、ルルが期待を含んだ目でこちらを見ている。

「うーん、残念だけど、今回は俺だけで行くよ。
 かなり大事な仕事が待ってそうだから」

「そうですか……では、次の機会を待ちます」

 ルルは、肩を落としている。

「私も、行きたかったなあ」

 コリーダも残念そうだ。

「パーパ、『お好み焼き』食べに行けないの?」
「おこー!」

「ナル、メル、お土産として買ってくるから、それで我慢してね」

「残念!」
「おこー!」

 二人にとって、「お好み焼き」とは、目の前にある鉄板の上でジュージュー音をたてているものを言うらしい。
 うちのキッチンにも、鉄板を用意するかな。

「気をつけてね、シロー」
「お土産忘れないで、お兄ちゃん」
「なるべく早く帰ってきて」

 ルル、コルナ、コリーダの声を聞いてから、庭に出る。
 どこからともなく現れた白猫ブランが、俺の肩に跳びのる。

「じゃ、行ってくるよ」

 転移に巻きこまれないよう、少し離れて見おくる家族に声を掛ける。

 じゃ、点ちゃん、ブラン、行こうか。

『(・ω・)ノ 了解』  
「ミー!」(さあ、行こう!)
   
 俺はセルフポータルを開いた。
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