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空知音

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第一章 冒険者世界アリスト編

第15話 やっかいな依頼

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宿に帰ると、ルルが城から帰っていた。

リーヴァスさんが、家購入の際の保証人になってくれたそうだ。

ありがたや。

しかし、リーヴァスさんには、ルルのことを初め、途方もなくお世話になってるなあ。
いつか、お返し出来たらいいんだけど。

ルルには、点魔法のことを話しておく。

「え! レベル8ですか?」

やっぱり、レベル8はすごかったんだね。

いろいろ試してみたことを話すと、

「でも、それで何ができるのでしょうか」

と返された。

グサッと心に刺さるよ。
スキル持ってる自分自身が、そう思うもん。

とにかく、点魔法のさらなる検証は後回しにして、引っ越しを進めよう。



カラス亭の部屋には、荷物もそれほどないし、ルルのポーチも使えるので、日が暮れる前には、大まかな仕事が終わっていた。

後は、部屋の掃除や、おかみさんたちへの挨拶くらいか。

「ルル、今夜はどちらで泊まる?」

「そうですね。 
挨拶などのことを考えると、こちらに泊まった方がいいかもしれませんね」

おかみさんには、近く引っ越すことは伝えていたが、いよいよ明日だと告げると、ちょっと寂しそうな顔をしていた。

「ここの食事は美味しいですから。
ちょくちょく寄らせてもらいますよ」

「そうしとくれ。 今晩は夕食代いらないからね。
遠慮せずに、たんとお食べ」

おかみさん、ええ人や~。


宿泊客の中にゴブリン討伐の話を知っている人がいて、この日のカラス亭は深夜まで盛り上がった。

--------------------------------------------------------------

翌日、史郎は昼頃目が覚めた。


ルルは、すでに出かけた後だった。

寝坊だね、やっちゃったよ。
夜更かし厳禁。

おかみさんと旦那さんに、用意していたお礼の品を渡してから宿を出た。
二人は外まで見送りに来てくれた。
感謝です。

さて、新居に行ってもゴロゴロするだけだろうから、久しぶりにギルドに顔を出すかな。

------------------------------------------------------------------------------------------

ギルドは、いつもより賑わっていた。


まあ、あれだけの討伐だからね。
参加しなかった冒険者達にも、刺激になったんだろうね。

丸テーブルの一つを、ハピィフェローの面々が占めていた。

うわ~、なんかオーラが出てるよ。

周囲からの視線も、以前とは違うみたいだね。

ゴブリンキング効果すごいな。

「おう、久しぶりだな」

ブレットが声を掛けてくる。

うはーっ、周囲から突き刺さる視線が痛いよ。

「皆さん、こんにちは。
先日は、本当にお世話になりました」

「お前自身も命を張ったんだから、そんなに遠慮するな。
敬語はいらんぞ」

まあね。 あんまり丁寧すぎると、他人行儀になっちゃうからね。

「今日は、ルルちゃ・・ルルさんはいないのか」

「ええ。 ルルは別行動です」

ブレット以外のパーテーメンバーが、意味ありげな視線を交す。

ちょっと話題を変えとくか。

「ところで、気になってたんですが、ゴブリンキングの死因って分かりました?」

「それがな、いくら調べてもさっぱりだ。
ギルドには腕の立つ解体屋がいるから、そいつにも見てもらったが、原因不明だとよ」

頭の片隅に、もしかしたらって可能性は浮かんでるんだけど、あまりにも荒唐無稽な推測なんで黙っておく。

「ギルマスは?」

「今日は、お城に行ってるみたいだぞ。
こないだの討伐が、お城でも評判になってるらしい」

「そうですか」

噂をすれば影、入り口からマックの巨体が入って来る。

こちらに気付くと、近寄ってきた。

「ルーキー、久しぶりだな。
あんまりしつこくしてると、ルルに嫌われるぞ」

そういうセクハラおやじこそ、嫌われると思います。

「しかし、面倒なことになったぜ」

「どうしたんですか」

「この前、お前らがゴブリンキング倒しただろうが。
あれが城で評判になったのはいいんだが、勇者パーティの肩身が少し狭くなってな。
それじゃ困るってんで、面倒押し付けられたんだ」

「面倒って?」

「ドラゴン討伐のサポートをしろとよ」

ざわついていたホールが、シーンと鎮まった。

「ド、ドラゴンですか」

ブレットが、かなり驚いている。

ドラゴンってなんか凄そうだし。
きっと凄いんだよね。

「それでな、お前らハピィフェローは全員強制参加だ」

「「「えええっ!」」」

冒険者たちもざわついている。

「俺ら銀ランクですよ。 ドラゴンなんて、どうやっても無理ですって」

「いや、お前らが倒す必要はねえんだ。
それは勇者の仕事でな」

「はあ~。 しかし、サポートって言っても、ドラゴン相手だと何にもできませんよ」

「まあ・・そうだな。
ワシもそう言ってやったんだが・・
とにかく勇者パーティの面目を立たせなきゃならんらしい」

うはー、馬鹿らしい。
何ですかそれは。

「とにかく、七人は準備に入ってくれ。
陛下からの指名依頼だ」

え? 

七人(しちにん)っていいますと・・
ハピィフェロー五人(ごにん)とギルマス。
あれ? これじゃ六人か。

ハピィフェローとギルマスとキャロ? んな訳ないか。

「ルルにも伝えといてくれ」

ええ、分かってましたとも。
現実逃避してましたよ。

「しかし、俺はまだルーキーでして・・」

「討伐の報酬、均等に分けただろ」

あ、なるほど、そう来ますか。
ってこれは・・チェックメイトだな。

「お前達は、二階の会議室で待ってろ。
ルーキーは、急いでルルを連れて来てくれ」

へいへい。

しかし、何ですかね~、この展開は。

俺の人生目標、くどいほど言ってるでしょ。
くつろぎだって。 ほのぼのだって。 昼寝だって。

何ですか、これは。
ここは、怒ってもいいところだと思うのよ。

「国王の指名依頼だと、さぼったりしたら確実に首が飛ぶからな」

チェック(もうすぐ詰むよ)じゃなかった。



チェックメイト(すでに詰んだ)だった。
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