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第一章 冒険者世界アリスト編

第14話 点ちゃんとおしゃべり2

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「気づいてもらおうと、ず~っと、何度も何度もチカってたのに、全然気づいてくれないんだもん」

えっとー、もしかして・・・点ちゃん?

「そうですよもう。
プンプンのプンです」

えー、そうはおっしゃいましてもね。
もう、どう突っ込んでいいかわからないよ。

「やっとお話しできますね」

チカチカ

お、ぴょんチカだね。
喜んでるね。

点ちゃんは、魔法だよね。

「そうですよー」

どうしておしゃべりできるの?

「分かりません。
生まれた時からそうでしたから」

えっと、生まれた時っていつ?

「気が付いたら、お城でご主人様と一緒にいましたよ」

ああ、水盤に手をかざしたときね。
うわっ、嫌なこと思い出しちゃったよ。

点ちゃん、どんなことができるの?

「それが、今までは、自分にもよく分からなかったんです」

え? 
今まではって、今は分かるの?

「はい、分かりますよ」

教えてもらってもいいかな?

「はーい。
では、レベル別に整理しますね」

お願いします。

「レベル1 点が現れる。
 レベル2 表面移動。わずかな拡張。
 レベル3 表面移動速度増加。わずかな拡張
 レベル4 表面移動速度増加。わずかな拡張
 レベル5 表面移動速度増加。わずかな拡張
 レベル6 表面移動速度増加。わずかな拡張
 レベル7 表面移動速度増加。わずかな拡張」

・・・おい、作者っ!  お前、な~んにも考えてなかったろ。

あれ、今、俺、誰に話しかけてたんだろ?

「レベル8 移動速度増加。 立体拡張」

お、レベル8に、面白そうなのがあるじゃん。

点ちゃん、立体拡張って何?

「レベル8からは、縦横に加えて、上下にも大きくなれるみたいです」

お、それはいいね。
さっそくやってみよう。

みよ~ん、みよ~ん、ぷよ~ん

これは面白い!

 粘土みたい

みよみよぷよ~ん

加藤の顔、作ってみるか。

みよみよみよ~ぷよぷよぷよ~ん

「ご主人様、私で遊んでますね」

チカッーッ

鋭いチカいただきましたー。
ごめん、ごめん。

ところで点ちゃん、レベル8から表面移動速度が移動速度になってるけど。

これってどういうこと?

「レベル8から、空間を自由に動けるようになりました。

もちろん、平面を意識すれば、移動を物体の表面に限定することもできます」

なるほどねえ。

ちょっとやってみるか。

見やすいように、テニスボールくらいの球にして・・

点ちゃん、空間で動けるようになったのは、分かったけど、すぐ点に戻ちゃうよ。

「点魔法ですから」

シーン

えっ?

「私は、点魔法ですから、点が基本です」

・・だよね。

あー、これ聞いとこう。

点ちゃんって、基本の点のとき、どのくらいの大きさなの?

「点に大きさはありません」

えっ?

「私は点なので、大きさが無いんですよ。
立体の形をとるときには、立体中の一点が基準になって、立体を形作っています」

なるほどね。
数学の林先生が、幅の無い二本の直線が交わっているところが点だって言ってたな。

そうすると、点ちゃんの概念って、数学の点に近いのかもね。

点ちゃん、俺がまだ使ってない技みたいなのない?

 あったら教えてくれるかな。

「今までご主人様、ほとんど相手をしてくれませんでしたからね~。
まだいろいろありますよ」

へいへい、申し訳ありませんでした。

「例えば、こんなことができます」

点ちゃんが、二つに分かれた。

「ご主人様ー」 「ご主人様ー」

すごいけどなんかうざい。

チカりん、チカりん

落ち込んでるよ。
2点同時に。

あれ? 元に戻らない。

点ちゃん、二つのままで、いることができるの?

「できますよー」「できますよー」

あ、これは、もういいや。

点ちゃん、元に戻ってくれる?

他にどんなのがあるの?

「・・また嫌がられるなら、したくないな~」

点ちゃん、ごめん。
この通り、謝りますから、ゆるして。

しかし、これって誰か見てたら、明らかに変な人だよね。

誰もいないところで、ペコペコ土下座してるんだから。

「本当ですか~? 
ご主人様は、どうも信用ならないですからね。
まあ、いいでしょ。
他にできることはこれですね」

点ちゃんが、実験用の丸石の上に乗る。

ここまでは、いつも通りだね。

「はいっ」

掛け声と同時に点が消える。

お、点ちゃん、消えたの?

「違います。
石の中に入ったんですよ」

えっ! そんなこともできるの?

試しに、テニスボール大にしてから、石の上にのせると、ボールがゆっくり石に沈み込んでいく。

点ちゃんすごいな。

チカチカチカ

おーっ、ものすごいぴょんチカだね。
ぐるぐる回ってるから、むしろ、ぐるチカかな。

「私は、大きさの無い、座標だけの存在ですから、物があってもなくても、移動に支障はありません」

丁寧な解説、ありがとさんです。

ご主人様が頼りないと、苦労かけるねえ。

「全くです」

あちゃちゃー、これじゃ、どっちが主人かわからないね。


この後、当然昼寝してから宿に帰った。

昼寝しないんじゃなかったのって? 

悪いのは私ではございません。
あまりに心地良い、河原の昼寝環境が悪いのです。




なぜレベルが上がったのか、そこに思い至らないのは、しっかりしているようでいてどこか抜けている史郎だった。
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