ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

文字の大きさ
18 / 607
第一章 冒険者世界アリスト編

第16話 ドラゴン討伐に向けて

しおりを挟む


帰ってみると、ルルは新居を掃除中だった。

あちゃー、気が利かなくて、ほんと申し訳ない。
って、それどころじゃなかった。

ドラゴン討伐参加に至った経緯を短く伝え、二人でギルドに向かう。
ルルはメイド衣装のままだ。

「遅くなりました」

会議室のドアを開けると、まるでお通夜みたいな空気が漂っていた。

「来たな。 じゃ、始めるぞ」

それから3時間ほど、ギルマス、ハピィフェローの面々、ギルド職員数名で、侃々諤々の議論をしていた。

ほとんど理解できなかったが、ドラゴンが山に棲んでいること。
その山まで行くこと自体が、かなり大変だということは分かった。

途中で何度か夢の国に行きかけて、ルルに連れ戻された。

だって、ほとんど分からない話ですよ。
お経と同じですよ。

普通、眠たくなりませんか?
お坊さんには、叱られちゃうだろうけど。

討伐に出発する前から、エネルギー根こそぎ奪い取られてる気がするんですが・・

まあ、サポート役の、さらにサポート役だから、その辺でチョロチョロしてればいいんでしょうが。

でも、ゴブリンキングの例もあるから、安心できないよね。

あー、怠けたい。 
くつろぎたい。
ウサ子をモフりたい。

ギルドから出ると、すでに辺りは真っ暗だった。

この国は、街灯とかないからね。

なるべく大きな通りを選んで新居まで帰る。

出発は、三日後って・・


なんかね~

----------------------------------------------------------------------

せっかく、くつろげるはずの新居を手に入れたのに、出発当日までは、死ぬほど慌ただしかった。


ルルは平気で仕事をこなしていたが、こっちは完璧とは程遠いですから。

ドラゴン討伐にしか使わない道具やポーションが大量にあって、その用意、仕分けと、まあ、引っ越しどころの騒ぎじゃないよね。

今回の討伐は、騎士団も同行するらしく、ハピィフェローは、お城で騎士たちと合同訓練を行っていたらしい。


「らしい」と言うのは、こちらが荷物にしか関わらなかったからだが、とにかく半分ギルドで寝泊まりしている状態だった。

----------------------------------------------------------------

出発当日。


朝の集合は、ギルド前ではなく、城前広場だった。

遠くで騎士に囲まれた加藤達の姿がチラリと見えたが、こちらには気づかなかったようだ。

まあ、こちらは相変わらず頭に布巻いているし、荷物の後ろでコソコソしてたからね。
かくれんぼみたい。

国王が台の上に立って、何か話している声も、ここまでは届かない。

やがて、銅鑼の音が鳴ると、隊列の先頭が大通りに向けて進みだした。

討伐なので告知などしてないはずだが、どこから情報を仕入れたのか、ものすごい数の人々が道沿いに並んでいた。

先頭から、騎士数名、荷馬車隊、ギルド関係者、騎士団、勇者パーティ、最後にまた騎士団という順で、ゆっくり進んでいく。

これで討伐に失敗したら、冗談にならないな。

その時は、加藤たちを他国へ逃がさなきゃ。

ルルと俺は、荷馬車隊に紛れて歩いていた。

それでも、勇者パーティに投げかけられる歓声は、鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどだった。

目的地である山のふもとの町までは、特に何もなく進んだ。

野営はせず、小さな町で泊まりながら、予定通り一週間で旅程を終えた。

ここで2泊するらしい。
後は山道なので、荷物要員が持ち物を振り分ける。

ギルド関係者は、自分の荷物を自分で持つ。
騎士団と勇者パーティは、武器だけ持つ。

山道プラス荷物増加で、荷物要員の負担は、かなりなものになりそうである。

馬小屋としか思えない部屋を割り当てられる。
まあ、ハピィフェローのみんなも同宿だから、楽しいっていえば、楽しいんだけどね。

ルルと一緒の宿に泊まれる、ブレットの幸せそうな顔が、鼻につくけど。

滞在初日。
夜から、あいにくの雨となった。
まあ、晴れていても、あまりすることはないんだけどね。

心配なのは、この雨で山道がぬかるんで、山頂まで行くのに支障が出やしないかっていうこと。

滞在二日目。
まだ雲は残っていたが、雨は上がった。

一日中、荷物の準備に追われる。

町の中心部では、勇者歓迎イベントがあったらしい。


こちらとは、全く縁がなかった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

処理中です...