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空知音

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第二章 獣人世界グレイル編

第17話 獣人族長会議2

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狐人族の城では、獣人たちの長が集う、獣人会議が行われようとしていた。


「では、今回の会議を招集した犬人族代表から、その理由を述べてもらおう」

狐人の小柄な少女が、口火を切る。

コルナは、議長役らしい。

「犬人族南西の村が襲われ、住人が全てさらわれた」

アンデが話し始める。

「同様の出来事が、過去に何度も起きており、猿人族の関与が疑われてきた。
しかし、死体を残さないのは、奴らの手口ではない。
そういうことで、手をこまねいていた」

参加者は、一様に真剣な表情で聞いている。

「この度、シローが生存者を見つけた。
シロー、その時の話を頼む」

「生存者は、村在住の6歳の少年でした。
襲撃者は、昼食後の時間を狙い、まず家々に放火したそうです。
その後、ローブ姿の者たちが村に襲い掛かり、人々をロープで繋ぎ始めたということでした。
彼自身の父親も、この時攫われたようです。
たまたまフードが外れた襲撃者がいて、猿人族だと分かりました」

「な、なんということだ・・」

熊人族の族長が、思わず声を漏らす。

これまでも、猿人族が他族を襲うことはあった。
ただ、それは、あくまで部族間の争いとして扱われてきた。

しかし、それを放置し続けてきたのも、また事実である。

族長たちは、この事件に間接的に責任があるとも言えた。

「問題は、猿人族が何のためにそんなことをしているかだな。
手口から考えて、奴ら単独の犯行とは思えない」

猫人族の一人が、鋭いことを言った。

「これは、噂話の段階にすぎないんだが、奴らの背後に人族がいるのではないか、というものがある。」

アンデがこう言うと、全ての獣人がこちらを見た。

「いずれにしても、奴らのところに斥候を出す必要があるだろう」

「斥候なら、今までも何度か出してるではないか」

これは、虎人からの発言である。

アンデが続ける。

「ああ、全て帰ってこなかった。
考えられるのは、こちらの情報が向こうに漏れているのではないか、ということだ」

「どこに、そんな証拠がある」

「今のところは、状況証拠だけだな」

「ニャニャ。 複数の斥候を、送ってみたかな?」

賢者が、発言する。

「いいえ、まだです」

コルナが答える。

「各部族が、報告を取り合うことなく、それぞれ斥候を送ればいい。 ニャ」

さすが、賢者である。
これなら、一部族が情報を漏らしていても、情報は入ってくる。

「おお! それは、いい考えですな」

熊人族の族長が、賛成する。

「では、まずは各部族がそれぞれ斥候を出す、ということでよろしいですか」

議長が、まとめにかかる。

虎人族は、ドランも他の二人も不満そうだったが、大勢が決まっていては、勝ち目は無いと思ったのだろう。
渋々、頷いた。

「ああ、これは今回の議題とは、関係ないのだが・・」

賢者の隣の猫人が、発言を求める。

「湖沼地帯北側の山岳地域を、ご存じだろう」

「ふむ、そこで何が?」

「その辺りに、聖女が現れたという噂がある」

「なに!」 「ほ、本当か!」 「聖女が!」

議場は、騒然となる。

「これも、いまだ噂の域を出ない」

猫人が続ける。

「ただ、もし本当なら、我々は、なすべき事があるであろう」

「当たり前だ」 「異議なし!」 「当然だ」

「とりあえず、こちらにも、調査隊を送ってもらいたい。
山岳地帯ということを考えて、冒険者が適当だろう。
アンデ、頼めるか」

「分かった。 それは、こちらで引き受けよう」

場内のざわめきは、消えそうにない。
聖女の話は、想像以上の衝撃をもって、迎えられたようだ。

史郎は、いろいろ尋ねたいこともあったが、人族として疑念を持たれていることもあり、この場は動かないことにした。
この件に関して、拙攻は禁物である。


会議が終わると、コルナが近寄ってきた。

「シローは、いつまで、この地にいてくれるのじゃ」

「明日、遅くとも明後日には、発つ予定です」

「そ、そんなに早くか・・」

「ええ。 事態は、こちらを待ってはくれませんから」

「仕方ないの・・」



コルナは、何か言い足りなそうだったが、史郎の方を振り向き、振り向き、城の奥へと去っていった。
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