ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第二章 獣人世界グレイル編

第37話 家族との再会

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史郎達は、アリストのギルドへやって来た。


俺がギルドの入り口から入ると、部屋いっぱいの冒険者達が拍手で迎えてくれた。

俺は恥ずかしくて、小さな声で「ただいま」と言った。

人ごみの間から、小っちゃな女性のギルマスが、ちょこちょこ近づいてきた。
彼女は、相変わらず妖精みたいだ。

「おかえりー」

「キャロ、帰ったよ」

「ふふふ、獣人世界はどうだった?」

「そのうち、詳しく話すよ」

「向こうのギルマスから、何か預かってない?」

「あ、これね」

背中の袋から小さな紙袋を取り出し、キャロのモミジの様な手の平に載せた。

キャロは紙袋の中に手を突っ込むと、黒いギルド章を両手でぱっと頭の上に掲げた。

「黒鉄ランク昇格、おめでとう!」

皆が総立ちで拍手している。

アンデの奴、やってくれたな。

「すげーな、黒鉄だってよ!」

「あれって、二国以上の王の承認が必要なはずだぜ」

「いつ以来だ?」

「雷神リーヴァス以来、誰も取ってないはずだぜ」

周りは、大騒ぎである。

「ガハハハ。 とうとう兄貴に追いつきやがった。 
大した奴だぜ」

マックが、また大きな手で、背中をどしどし叩いてくる。

「くそー、やっと追いつけたと思ったのに」

ブレットは悔しそうだ。

ミミとポルは、初めて見る黒鉄のギルト章を取り合っている。

まあ、みんながニコニコしているなら、それでいいかな。


こうして、史郎は「黒鉄の冒険者」となった。

----------------------------------------------------------------------

ギルドから家へ続く、通い慣れた道を一人で歩く。


コルナ、ミミ、ポルは、「今日は、家族水入らずで」と言って、ギルドの歓迎会に出ている。
部屋もギルドが用意してくれるそうだ。

遠くに小さく家の灯りが見えてきただけで、俺の胸はいっぱいになった。

家のドアを開ける。

「ただいま」

奥から、ものすごいスピードで二人の少女が走って来て、ドーンドーンと俺にぶつかる。

「パーパッ」

「パーパ、おかえりー」

俺の腰にぐりぐり押し付けてくる、二人の頭を優しく撫でてやる。

「ただいま。 二人とも元気そうだね」

ナルとメルは頭を擦り付けるのに忙しく、黙っている。

ふと気が付くと、薄紫のドレスを着たルルが目の前に立っていた。

髪には、セイレンの花を付けている。

ルルは記憶の中の彼女より、さらに美しく可憐だった。

「お帰りなさい・・」

そういうと、そっと俺の胸に顔を埋めて来た。

「ただいま、ルル。
二人の事、ありがとう」


史郎は、ルルを強く抱きしめるのだった。

---------------------------------------------------------------

史郎が居間に入ると、リーヴァスが出迎えた。


彼はルルの祖父であり、この国の建国の英雄でもある。
さっき分かったけれど、「黒鉄の冒険者」の先輩にもなる。

俺たちは、がっしり握手する。

「お帰りなさい。 
また一回り大きくなられたようですな」

リーヴァスさんは俺の目を見ると、そう言った。

五人でソファーに座り、ルルが入れてくれた香草茶を飲む。
子供たち二人は、ミルクである。

ナルとメルは、俺のところにミルクの白い輪っかが付いた口を突き出してくる。

俺が拭いてやると、すごく嬉しそうな顔でルルに抱き着いている。

「みんな、庭に出てもらっていいかな」

五人で家の庭に出る。

皆が庭の端の方に寄るのを確認してから、点ちゃん1号を出した。

今日は、白銀色にしてある。

「「うわーっ!」」

子供たちが歓声を上げる。

俺は、四人を中に案内した。

中は、ふかふかの敷物やソファーが置いてある「くつろぎ」仕様である。

「旦那様。 これは、一体?」

ルルが驚きのあまり、元の呼び方になっている。

「これね、点ちゃんと作った、飛行機なんだ。
せっかくだから、ちょっと飛んでみようよ」

点ちゃん1号は俺たちを乗せ、音もなく上空へ。

ある程度上がったところで、俺は壁を透明にした。

「「うわーっっ!!」

子供たちは、上空から見るアリストの夜景に夢中である。

月明かりに照らされた、お城やその城下町、湖が箱庭のように眼下に広がっている。

「これは、壮観ですな」

リーヴァスさんも、感動している。



史郎はルルの手を取ると、この世界の美しさを一緒に味わうのだった。
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