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第六章 竜人世界ドラゴニア編
第3話 ハウスウォーミング・パーティ1
しおりを挟む史郎は、点魔法の映像で女の足取りを追っていた。
頭から茶色いフードをかぶった彼女が、森の中の道を走っている。あれは、俺が最初に異世界に転移してきた『霧の森』だな。
俺には彼女がいる場所の見当がついた。
さて、どうするか。
捕らえるのは簡単である。なにせ、既に点は着けてあるのだから。しかし、どうやって俺の事を知ったのか、宝玉の事を知ったのかという謎が残る。このまま泳がせておけば、その手掛かりが得られるかもしれない。
史郎は、とりあえずは女を泳がせることに決め、家族に事件の報告を行った。
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予期せぬ訪問者があった翌日、新築なった史郎とルルの家では、ハウスウォーミング・パーティーが開かれていた。
庭とリビングとの境の扉を開けはなち、その両方を会場とした。
パーティーは、正午からだが、ほとんどの料理は午前中に作っておき、家族全員が参加できるようにした。その分、デロリンとチョイスは大変だろうが、彼らが張りきっているので任せることにした。
「シロー、ルルちゃん。新築おめでとう!」
最初に来たのは、ブレットのパーティ、ハピィフェローだった。マックも一緒だ。
「ガハハハッ。何か手伝えることねえかと思って早めに来たぜ」
ごつい身体に反して、マックは気遣いの人だからね。
彼らには、庭のテーブルへの料理の運びだしを手伝ってもらう。
次にキツネ達が現れた。何も言わなくても、すぐ全員が手伝いを始めている。
ホント、助かるよ。
正午前になると、キャロ、フィロとギルドの冒険者達、受付のお姉さん達がやって来る。彼らも手伝いを申し出たが、すでに仕事は無かった。
カラス亭のおじさん、おばさんもやって来た。
「はーっ! 何だいこりゃ。まるで、お城みたいだね。」
おばさんが、家を見あげて驚いている。
「これ、おばさんの3段重ねのケーキにアイデアもらったんですよ」
「ふう~ん、ケーキと家ねえ」
おばさんは、しきりに感心している。
「おい、あのコケットってのは思った以上にすげえな」
おじさんが俺の肩を叩く。
「まさに、ふわふわ~って、すぐ寝ちゃうのがもったいねえけどな」
「そうなんです。俺もそれだけが残念で。
それより、今日は思いっきり食べたり楽しんだりしてください」
「ありがとうよ」
二人は、あまり見ない余所行きの服を着て笑っている。
さて、いよいよパーティの始まりである。
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「えー、本日は、私達家族の新しい家、『くつろぎの家』においでいただき、ありがとうございます。
ウチ自慢の料理人デロリンと我々が作った料理をお楽しみください」
立ち上がったデロリンが皆に拍手を受ける。
「また、彼、チョイスが作った紙細工も展示してあります。
お帰りの際に、好きなものをお持ちかえりいただけます」
チョイスが礼をすると、歓声が起きた。
「後ほど、自己紹介も兼ねて、家族がそれぞれ出し物を行います。
では、お楽しみください」
パーティが始まると、皆それぞれに、談笑したり、料理をつついている。
「美味いっ! オレ、こんなうまいもん食ったことねえ」
食べ物に感動しているのは、ハピィフェローの巨漢ダンだ。
「シロー、あなた『フェアリスの涙』飲み放題って、どうなの?」
キャロは、こちらの懐具合を心配してくれる。
キツネがつれて来た子供達は、エルファリアのジュースに群がっている。
「シュワーッってするんだぞ」
「ホント? ……うわっ! ホントだ! でも美味しいねー」
開始から30分ほどしたところで、ゲストの登場である。俺がカウベルのような楽器を鳴らすと、みんなが舞台上の俺に注目した。
この舞台は、家族が出し物をする舞台として、土魔術で作っておいた。
「では、本日のゲストをご紹介します」
チョイスが小太鼓を連打する。
「最初のゲストは……マスケドニア国国王陛下!」
俺が告げるともに、上空から白銀色の点ちゃん1号が降りてくる。地上5mくらいのところで止まると、ボードに乗って国王と軍師ショーカが降りてきた。
あまりの大物の登場に一瞬場がシーンとなったが、リーヴァスさんが拍手を始めると、皆もそれに続いた。
「次は、アリスト国は我らが女王陛下!」
レダーマンを従え、彼女もボードで降りてくる。皆の熱気が上がる。
「そして、獣人世界、パンゲア世界共通の至宝、聖女様!」
舞子はよく似合う白いドレスを着て、ピエロッティを従えている。皆から歓声が上がる。
「そして、最後はこの人、黒髪の勇者だ!」
加藤が、ミツと一緒に降りてくる。物凄い歓声が上がった。
まあね。この世界ではスーパースターだから、勇者は。
ゲストそれぞれが、参加者に取りかこまれている。
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「それでは、ゲストの方々にも、食事や飲み物を召しあがっていただきましょう」
俺の合図で、参加者は囲みを解いた。
マスケドニア王とショーカが俺の所に来る。二人とも手には、『フェアリスの涙』が入ったグラスを持っている。
「シローよ。迎えにまで来てもらってすまぬな」
彼らは、午前中に俺が王宮から連れてきたからね。
「いえいえ。わざわざ遠くからご参加いただき、ありがとうございます」
「シロー、この酒はもしや……」
さすが軍師ショーカ、分かってらっしゃる。
「ええ、『フェアリスの涙』です」
「やはり! 陛下、これは是非シローからお買いつけを」
「やけに上等の酒と思ったが、それほどのものだったか」
「はい。幻の種族、フェアリスが作ると言われる最高の酒です」
「ほう! シロー、分けてもらえるか?」
「大丈夫ですよ。『ポンポコ商会』から優先的にお譲りします」
「かたじけない」
「あと、今日のお土産として、これをお持ち帰りください」
俺がコケットをその場に出す。
「陛下、ぜひ横になってみてください」
「では、まず私が」
ショーカが、先に横になる。
「なっ! なんだこのふわふわ感は!」
「ショーカ、早う代われ!」
陛下もコケットに横になった。
「おお! なんだ、これは! 心地良いどころではないぞ」
「王宮に、お送りするときにお持ちします」
「かたじけない。これも買えるのか?」
「ええ、金貨2枚ですが」
「安い! ショーカ、買えるだけ買っておけ」
「ははっ」
こうして、またまた『ポンポコ商会』の販路拡大をしてしまう史郎であった。
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