204 / 607
第六章 竜人世界ドラゴニア編
第6話 竜人の足取り - ポンポコ商会5号店オープン -
しおりを挟むパーティーが終わった夜遅く、加藤、ミツ、畑山、レダーマン、舞子、ピエロッティをアリスト王城へ瞬間移動で送った史郎は、疲れてぐっすり眠った。
翌朝、点ちゃんの声で目が覚める。
『ご主人様ー!』
あ、点ちゃん、朝からとは珍しいね。
『珍しいね、じゃありませんよ。何度も起こしてたのに』
ごめんごめん。ぐっすり寝ちゃった。
『例の竜人が、ポータルに入っちゃいましたよ』
えっ! ということは、追跡できなくなるってこと?
『そうですよー。もう、しっかりしてください』
竜人は、鉱山都市のポータルに消えたそうだ。
あちゃー。竜人がケーナイの冒険者に化けていたから、本当に獣人世界へ帰るとは思ってなかったんだよね。
よく考えたら、彼女がいた『霧の森』って、獣人世界へのポータルがある鉱山都市とこことの中間じゃないか。
久々に、生まれつきのうっかりが出たな。だいたい、こういうのがあるから、加藤に「ボー」ってあだ名つけられちゃったんだよね。
ああ、やっちゃた。
史郎は、仕方なく関係者に自分の失敗を連絡するのだった。
-----------------------------------------------------------------------
史郎達の新しい家は、家具などを少しずつ増やし、住みやすくなってきた。
風通しをよくするために窓の位置を少しずらしたり、戸口の位置を変えたり、そういう微調整をしている。
子供達がよく使うすべり台の出口には、緑苔を袋に入れた大きなクッションを置いた。
ナルとメルは三階からのすべり台を使うのがだんだん上手くなって、凄い勢いで飛びだしてくることがあるんだよね。
アリストにおけるコケットの販売が爆発的に増えてきた。新しく買ってくれるお客さんに尋ねると、大きく分けて3つのルートがあるようだ。
一つは貴族からの注文で、マスケドニア国王、アリスト女王(畑山)に紹介してもらったというもの。一度に複数の注文が入るのが特徴だ。
もう一つは、すでにコケットを持っているキツネたちのものを見て欲しくなったというもの。
最後に、カラス亭のおばさん、おじさんから紹介されたというもの。特に最後のルートは、鼠算式に買いたい人が増えている様である。情けは人の為ならず、って本当だね。
番外として、サーシャのシートだけが目当てでコケットを買ってる者もいるようだが、一つ200万円だよ。彼らの心の闇は深いな。
そうそう、軍師ショーカの勧めで、マスケドニアにも『ポンポコ商会』の支店を作ることになった。
加藤からの頼みで、店はミツさんに任せることにした。しっかり者の彼女なら、きっと売りあげを伸ばすだろう。
それから『フェアリスの涙』も順調に売れている。
マスケドニア王は、10樽一度に買ってくれた。金額は、俺が聞いてくらくらした程である。その上、コケット100台注文って……。お金持ちのやることは、よく分からない。
こうして家と商会のことで忙しくしているうちに、ギルドから悪い知らせが届いた。
獣人世界ケーナイの町にいた、ポルが姿を消したというのである。
---------------------------------------------------------------------
ギルドから報告を受けた史郎は、すぐにアリストのギルドへ跳んだ。
いつも開きっぱなしのドアから中に駆けこむ。
「キャロ、詳しいことを教えてくれるか」
「お母さんの話によると、尋ねてきたのは猫人の冒険者で、あなたからの呼びだしだって告げたそうよ」
警戒していたはずなんだが、俺に対するポルの信頼がアダになったか。
俺の中に言いようのない怒りが膨らんでくる。それを必死に抑えると、キャロにポータルの許可証を頼む。
キャロは、すでに許可証を作っておいてくれた。さすが有能なギルマスである。
ギルドからルルに念話すると、パーティとして対処するよう勧められた。それを受けて、パーティ全員の許可証をキャロに頼む。
俺は、一足先に獣人世界へ向け、ポータルを潜ることにした。
犯人が宝玉を狙っているなら、すぐにはポルに手を出さないだろう。そう自分を慰めても、俺は不安が消えなかった。
史郎は鉱山都市のポータル前に瞬間移動すると、すぐにポータルに踏みこんだ。
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる