ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第六章 竜人世界ドラゴニア編

第12話 竜人の都

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 青竜族の村で一泊した史郎とポルは、翌日早いうちに村を発つことにした。

 黒竜族と分かった竜人の女も、置いていく訳にもいかないので、連れていくことにした。

 「では、気をつけてな」

 村と森の境まで、村長が見おくってくれた。
 青竜の青年が二人、道案内としてつく。二人は、楽しそうにしゃべりながら、俺達の少し前を歩いている。
 彼らは旅支度をしたと言っていたが、足元に布を巻きつけたくらいしか違いが分からない。
 森の中には、それとは簡単に分からないような道がついていた。案内役がいなければ、道をたどれなかったに違いない。

 道中、「終の森」の様に魔獣が襲ってくることも無く、旅は順調に進んだ。

 宿泊はテントを使う。土魔術を見せるくらい気にしなくてもいいのだろうが、手の内はなるべく明かしたくないからね。
 一度、「土の家」で風呂を体験したポルは、ちょっとがっかりしていた。
 夜中に、テントの外で魔獣らしき気配があったが、特に何もなく夜が明けた。

 二人の案内役から、最後の山場と聞いた深い森に入る。森の中は、薄暗く見通しが悪い。案内役が歩みを緩めたので、俺達もゆっくり進む。

 「ジジだ!」 

 突然、案内役の一人が叫ぶと、腰に下げていた短剣を構える。木陰から現れたのは、「終の森」でも出たシカの様な魔獣だった。
 ただ、今回は一匹だけの様である。大きさも、「終の森」のものよりかなり小さい。もしかすると、種類が違うのかもしれない。

 案内役の二人は、シカが鋭い角で突きかかってくるのを、剣で上手にさばいている。
 一人が、角を剣で受けとめた瞬間、もう一人が首筋に切りかかった。
 剣はジジの首を掠め、少し傷を負わせただけだった。

 魔獣は、いきなりこちらを向くと、突進してきた。
 ポルが、スラリと短剣を抜く。シカの角を剣で受けると、そのまま首筋に切りつけた。流れるような動作だ。
 首に深い傷を受けたシカは、よろよろとふらつき、ドサッと倒れた。
 案内役の竜人が歓声を上げる。

 俺は、久しぶりに見たポルの剣技が予想以上のものになっていて驚いた。そういえば、時間さえあれば、ミミや他の誰かと練習していたな。

 案内役の二人に血抜きを任せた後、シカを点収納にしまう。もちろん、二人には、マジックバッグにしまうように見せかけている。
 この世界には、マジックバッグが無いらしく、二人はとても驚いていた。

 しばらく歩くと、森が終わり、草原となった。ちょうど草が枯れる時期らしく、それが黄金色の絨毯のように見える。
 俺達は、その中を進んでいった。

 町の外壁が見えてくる。アリストのそれより3倍以上高さがある。ということは、そうしないと町の中に入ってくる魔獣がいるということになる。
 魔獣に関していえば、俺のホームグラウンドであるパンゲア世界に比べ、厄介な奴が多そうだ。

 門番は、がっちりした体格の竜人だった。頬からこめかみに掛けて鱗が生えているのは同じだ。髪が青いから、きっとこの男も青竜族だろう。
 案内役の二人が、門番と何やら交渉している。15分くらいは、話し合っていただろう。
 やっと、案内役が戻ってくる。

 「シローさん、なんとか入る許可はもらえました」

 「費用は、掛からなかったか?」

 「少しは取られましたが、いつもの事です」

 俺は、用意しておいた、塩の包み紙を一つずつ渡してやった。

 「えっ! これ、塩でしょう? いいんですか?」

 「ああ、ここまで連れてきてもらった礼だ。気兼ねなくもらってくれ」

 まあ、シカは俺達のものになりそうだしね。
 二人は、礼を言うと、弾むような足取りで帰っていった。

 門番が近づいてくる。

 「あの二人から聞いたが、迷い人なんだって?」

 ああ、この世界ではポータルで渡ってきた者を「迷い人」と呼ぶのか。
 俺が頷くと、門番はボードの上に横たわった竜人の女を指さした。

 「こいつは、森の中で見つけたんだな?」

 「ああ、ケガをしているから医者に見せようと思ってな」

 竜人の女は、長旅の疲れから眠っている。

 「ああ、じゃあラピの紹介だと言っておけ」

 「ありがとう。地図はもらえるのか?」

 「ああ。役所に行くともらえるぞ」

 「役所?」

 「門を入ってまっすぐ進むと、こういった形の入り口があるから、それがそうだ」

 男は、手でアーチ型を作って見せた。

 「しかし、人族と獣人の迷い人か。いつ以来かな」

 「迷い人は、そんなに珍しいのか?」

 「ああ。外からのポータルは、めったに開かないからな」

 なるほど、ランダムポータル以外、異世界から入ってくることは出来ないのか。黒竜族の女が、この世界のポータルに関して言っていた事は本当のようだ。

 俺とポルは、門番に礼を言うと、都の中に入った。

-----------------------------------------------------------------------

 門からは一直線に太い道が伸びていた。

 石畳に覆われた道は、凸凹も少なく、石を加工する技術の高さをうかがわせた。両側には商店が並んでいるようだが、売っているのは、俺が知らない物が大半である。
 青い髪の竜人が多く、中に赤や黒の髪の竜人が見られる。
 温かい気候だからか、袖(そで)の無い服を着ている者が多い。
 皆が、俺達の方をチラチラ見ている。やはり、他世界からの迷い人は珍しいらしい。

 正面に、アーチ型の入り口を持つ大きな建物が見えてきた。3階建てのその建物は、大きな箱の上に小さな箱を積み重ねたような形をしていた。
 帽子をかぶった竜人に呼びとめられるが、門番ラピの名を告げると、そのまま中へ入れてくれた。

 建物の中は大きな空間になっており、いくつか四角いテーブルがある。それぞれに青いローブを着た青髪の竜人が座っている。
 とりあえず、一番近いテーブルへ行く。

 「あのー」

 「おっ?! お前、迷い人か?」

 若い竜人である。

 「はい。ポータルで転移しました」

 「ちょっと待っていろ」

 俺とポルは、椅子に座わると、しばらく待つことになった。
 やがて、さっきの竜人が、頭の禿げた年配の竜人を連れてきた。

 「お主らが、迷い人か?」

 「はい、そうです。ああ、それから、この人は森の中で倒れていたので連れてきました」

 「どこの森だ」

 ここは、「終の森」と答えない方がよさそうだ。

 「それが、この世界に来たばかりなので、名前は知りません」

 「まあ、それは仕方ないの。お前は人族だの。そちらは?」

 「狸人族です」

 「狸人? 珍しいの。獣人が来ることはあるが、狸人は、初めてではないかの」

 竜人は、興味深そうにポルを見ている。

 「では、ついてまいれ。こちらじゃ」

 年配の竜人は、建物の奥にある階段に向かった。黒竜族の女は、俺が背負った。
 二階の廊下を渡り、奥にある部屋に通された。中は、簡単な装飾とテーブル、椅子がある、さっぱりした部屋である。
 コケットを出し、女を寝かせる。突然出てきたコケットに、竜人が驚く。

 「な、なんじゃそれは?」

 「ああ、マジックバックと言って、見かけより大きなものが入るようにできているんですよ」

 俺は、腰のポーチを叩いてみせた。

 「す、すごいの……」

 彼は、しばらく言葉を失っているようだった。

 「あのー、私達は、どういう立場になりますか」

 しょうがないから、俺から水を向けてみる。

 「うむ。迷い人については、こちらも判断が難しくての」

 おじさん竜人は、しかめ面になっている。そこに、ノックがあり、黒い髪の竜人が入ってきた。

 「おお、ダネル。確認に来てくれたか」

 ダネルと呼ばれた黒髪の竜人が、軽く頭を下げる。

 「ええ。この女性ですね?」

 彼は、コケットに横になった竜人にかがみこんだ。女性は、眠っている。

 「おや? この女は!」

 「お主が、知っている者か?」

 「ええ、恐らく追放処分を受けたリニアという女ではないかと思います」

 「追放処分だと! それがどうやって戻ってきたのじゃ?」

 「分かりません。この者達が関係しているかもしれません」

 「お主ら、この者の転移に関わっておるか?」

 ここは、難しいところだ。同時に転移はしたのだが、彼女の転移に協力したように思われると危険なことになりそうだ。
 俺は、すぐに答えを決められずいた。

 「とにかく、『四竜社』に連絡せねばならんな」

 おじさん竜人は、俺の答えを待たず、黒竜族の竜人に何か耳打ちすると、部屋から出ていった。

 「お前ら、ついてこい」

 黒竜族の男は、俺達を連れて階下へ向かった。

 二つ階を降りたので、地下だろう。降りたところに置いてあった、ロウソクのようなものに男が火を点ける。
 石造りの廊下が照らしだされた。

 奥に進むと、湿っぽい空気と、何かの異臭が漂ってくる。
 長いこと居たい場所ではない。

 鉄格子が並んだ区画まで来ると、男は一番手前の部屋のカギを開け、中に入るよう促した。俺はちょっと考えてから素直に指示に従った。

 こうして、史郎、ポル、黒竜族の女は青竜国の牢中に捕らえられた。

---------------------------------------------------------------------

 史郎は、牢の前から男が去ると、魔術灯を出して牢内を照らしてみた。

 牢には、粗末な藁のようなものが片隅に置いてあり、反対側には排泄用だろう、直径30cmくらいの穴が開いている。
 広さは四畳ほどだろうか。三人には、狭い部屋である。

 「なんか、すごく臭いですね」

 ポルが鼻をつまんでいる。俺は、さっそく環境改善に取りかかった。
 藁を点収納にしまい、コケットを3つ出す。排泄孔からの匂いは、風魔術でコントロールする。ついでだから、匂いが1階ホールに昇るようにしておいた。

 少しだけ空いたスペースに小さなテーブルを出し、お茶の用意をする。
 黒竜族の女は、コケットに横たえる。
 俺とポルは、一つのコケットに二人で腰掛け、お茶を飲む。

 「あ~、生きかえる感じです」

 ポルが幸せそうな顔をしている。牢に捉えられた不安はなさそうだ。
 お茶を飲みおえると、それぞれコケットに横になる。気温は火魔術で、湿度は水魔術でコントロールする。

 じゃ、点ちゃん、後は頼んだよ。

 『(^▽^)/はーい』


 史郎は、気持ちよく夢の国に旅立った。
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