220 / 607
第六章 竜人世界ドラゴニア編
第22話 合流
しおりを挟むパーティ・ポンポコリンと加藤は、二人の竜人に導かれ、都に向かった。
案内役の二人は両方妻帯者である。未婚の者に任せると、コリーダを巡って血みどろの争いが起きそうなので、村長の判断でそうなったそうだ。
森が途切れて草原に変わったところで、ルンドという名の竜人が前方を指さす。
「あそこが、都だ」
「おお!」
高い城壁が見える。
シローがそこにいると思うと、ルルの胸は高鳴った。
門番と何か話すと、ルンド達は挨拶をして村へ引きかえしていった。
「こりゃまた、凄い数の迷い人だな」
門番の大柄な竜人が驚いている。
「ルンドから話は聞いてる。
ここを入るとまっ直ぐ行ったところにある、こんな形の門がある建物に行くといい」
「かたじけない」
リーヴァスが礼を返した時、コルナが声を上げた。
「あっ、その袋は?!」
門の所には、門番が休息するための小さな机と椅子があるのだが、コルナはその机に載ったものを指さしていた。
机の上には、紙袋が置いてあり、それには丸いマークがついていた。丸いマークの上から二つの三角形が耳のように飛びだしている。
「なぜ、この印がここに?」
ルルが思わず声を上げる。自分が尋ねられたと勘違いした門番がそれに答えた。
「ああ、そりゃ『ポンポコ商会』ってところが売ってるクッキーだぜ。甘くて凄く旨いんだ」
「こりゃ、ボーの仕業だな」
加藤が、呆れたように言う。
その後、ラピと名乗った門番に、『ポンポコ商会』までの道を尋ねた一行は、町に入った。
---------------------------------------------------------------------
リーヴァス達八人は、教えられた道順に沿って、町中を歩いていく。
青い髪の竜人達が、足を止めてこちらを見ている。やはり、「迷い人」が珍しいのだろう。特に、コルナとミミが注目を集めている。道端で遊んでいる子供達は、遠慮なく彼女達を指さしたり、耳やしっぽについて話している。
やがて、道の両側に商店が増えてきた。商業地区へ入ったようだ。
前方に、ひときわ多くの人が並んでいる店がある。列の最後尾で看板を掲げている者を見て、ミミが叫び声を上げた。
「ポン太!」
彼女は、物凄いスピードでポルの所に駆けよった。
「あれ? ミミ、どうしてここにいるの?」
ポルがのんびりした声で尋ねる。ミミは、膝の力が抜けそうになった。
「あんたねえ、『どうしてここにいるの?』じゃないわよ!
ポータルを渡ってきたに決まってるでしょ」
「へー、そう」
彼が余りにものんきなので、ミミは本当に膝を着いてしまった。
「あっ、ポルだ!」
「ぽるっぽー!」
ナルとメルが、さっそくポルのしっぽを狙う。
「シローさーん!」
ポルが悲鳴を上げる。
並んでいる竜人をかきわけて、シローが姿を現した。
------------------------------------------------------------------
「シロー!」
「お兄ちゃん!」
「シロー……」
ルル、コルナ、コリーダが、俺のところに駆けよる。
「よく来たね、みんな。元気だったかい」
三人は、涙ぐんでいる。
ドーン、ドーンとナルとメルが俺にぶつかってくる。
「「パーパ!」」
二人の頭を撫でてやりながら、俺はリーヴァスさんに黙礼した。
これだけの人数を、しかもナルとメルまで連れて、ここにたどりつくのは容易ではなかったはずだ。
リーヴァスさんの後ろから、思いもかけない人物が現れた。
「ボー、無事で何よりだ」
「加藤! お前まで来たのか」
「おいおい。『お前まで』は無いだろう」
俺達は、グッと握手した。
「シロー兄ちゃん、この人達は?」
店の方から、イオがやってきた。
「イオ。紹介するよ。俺の家族と友人だ」
この日、ポンポコ商会ドラゴニア支店は、早々に店じまいした。
-------------------------------------------------------------------
パーティ・ポンポコリンのメンバーと加藤はイオの家に作った地下室に集まった。
全員が座って十分な空間が取ってある。
「リーダーとの再会を祝って乾杯!」
ミミの音頭で乾杯する。リーヴァスさんは「フェアリスの涙」、他はエルファリアのジュースだ。
「なにっ、これ!? 凄く美味しい」
イオはジュースが気に入った様だ。
「みんな、これを食べてごらん」
ネアさんが運んできてくれた焼きたてのクッキーに、目の前で蜂蜜をかける。
「あ、これ、蜂蜜ね?」
コルナが言う。
「な、なに!? この味! こんな蜂蜜初めて食べた」
「だろう。このくらいあるでっかい蜂が作る蜂蜜なんだよ」
俺が握りこぶしを作って見せる。
「パーパ。コー姉が、ナルをその蜂から守ってくれたの」
「シロー、コルナはこの子達を守って蜂に刺されたんですよ」
ルルが教えてくれる。
「えっ!? コルナ、大丈夫かい?」
「ええ。聖女様に頂いた、治癒の魔石で治してもらったの」
俺は、点ちゃんに頼んで、コルナを診てもらった。
『↑(Pω・)背中にまだ蜂の針が残ってるから、抜いておくよー』
点ちゃん、ありがとう。
「ミミちゃんと、コリーダ姉も、ケガした」
メルが報告する。
「二人共、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「ええ、もうすっかり」
「帰ったら聖女様と女王陛下には、お礼をせねばなりませんな」
「女王陛下?」
「シロー、聖女様の力が込められた治癒の魔石は、アリストの国宝だそうよ。女王様からお借りしたの」
加藤、畑山、舞子が力になってくれたのか。
史郎は、友人達に、心から感謝した。
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる