ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第六章 竜人世界ドラゴニア編

第23話 赤竜族との出会い

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 次の日、リーヴァス達には旅の疲れを取るために休んでもらって、史郎とポルは、店に出ていた。

 今日は、開店前から行列が出来ていた。
 リニアは、リーヴァスさん達にこの世界のことを教えてもらうために残してきたから、ネアさん、イオも含めて四人でお客をさばく。

 お昼前に、もうすぐ店じまいしようかとしていると、赤髪の竜人がやって来た。背が低い、太った竜人の娘が大柄な竜人五人を従えている。

 「おい、お前が、ここの店主か?」

 俺は、当然それを無視する。

 「はい、袋三つね。ありがとうございました」

 俺は、商品を常連客に手渡した。

 「おい、聞いてるのか!」

 「皆さん、今ので売りきれです。また、明日おいでください」

 俺は、並んでくれているお客さんに頭を下げる。

 「ああ、明日また来るよ」

 「ここのクッキー食べたら、他所のはねえ」

 「甘くておいしいもんね」

 「ありがとうございます。この木札をお持ちください。
 明日は、並ばなくても買えるようにしておきます」

 「そうかい。気が利くねえ。じゃ、みんな、明日また来よう」

 「ああ、店長、またな」

 「イオちゃん、また来るねー」

 「ポル君、明日また会おうねー」

 お客が口々に挨拶して帰っていく。
 俺達は、店じまいを始めた。

 「おいっ! いい加減にしろっ!」

 あれ、赤髪の娘がまた何か言ってる。そういえば、学園都市世界で、同じクラスに同じタイプの赤髪がいたな。

 「そうだ、ポル。今日は、外でバーベキューでもするか」

 「わーい! いいですね!」

 赤髪の娘は、足をジタバタさせ始めた。

 「キーっ! あんた達、こいつらやっちゃいなさい!」

 大柄の竜人五人が、俺とポルを取りかこむ。

 「あんた達、今日はもう店じまいだよ」

 「うるせえ! お嬢様の言いつけだ。観念しな」

 そう言った竜人が殴りかかってくる。

  ガンッ

  ボキッ

  「ぐあっ!」

 ああ、言わんこっちゃない。
 あっという間に、物理攻撃無効の餌食になった五人の竜人が地面に転がった。
 お嬢様には、反省してもらうため、点をつけて吊りあげる。3回ほど、上下させると、動かなくなったので、地面に降ろす。
 あー、これはあれだね、漏らししちゃってるね。

 俺は、白目を剥いて気を失っている娘を放置して、イオの家に帰った。

-----------------------------------------------------------------

 翌日は、リーヴァスさん達が、お店の手伝いに来てくれた。

 加藤は、行列の端で「美味、最後尾」の看板を持っている。
 リーヴァスさんは、椅子に座って全体に目を配っている。
 ルルとコルナが袋に詰めたクッキーを、ナルとメルがお客さんに渡す。
 ミミとポルは、焼きたてクッキーを運ぶ係だ。
 コリーダが、お勘定を担当している。

 ルル達の参加でお店が華やかになったからか、今までで最速の売れゆきだ。開店から一時間くらいで、もう商品が無くなりそうだ。

 そのとき、また昨日の娘が現れた。赤髪と同じくらい顔を赤くして、二十人くらいの竜人を引きつれている。

 「あんたっ! 昨日はよくもやってくれたわね。今日は、思いしらせてやる!」

 「シロー、このお嬢さんは、どなたかな」

 リーヴァスさんが、椅子から立ちあがる。
 あー、これは可哀そうなことになりそうだな。

 「それが、どうもお客では無いようなんですが、何の用件かサッパリ分かりません」

 「な、なによっ。あんたが私の話を聞かないんじゃない」

 「いや、俺、失礼なやつの話って聞かないことにしてるんだよね」

 「ししし、失礼な奴ですって! あんた達!」

 男達が、剣を引きぬいた。
 あちゃー、どうなっても知らないよ。

 さすがに、周囲で店を開いている者が騒ぎだす。

 「おい。ポンポコさん、大丈夫かい?」

 「ええ、何の心配もありませんよ」

 俺は、安心させてやる。

 「すまぬが、それを少しの間、貸してくれぬか?」

 リーヴァスさんは、隣の店主から、お玉を借りている。

 「謝るなら今の内よ。私の話を聞きなさい」

 俺は、隣の店主と、天気の話を始めた。

 「キ、キーッ! やっておしまい!」

 男達が、動こうとした瞬間。

  パコッコココーン!

 そんな音がして、男達が剣を放りだして、うずくまった。皆が頭を抱えている。リーヴァスさんが、お玉で頭を叩いてまわったようだ。
 彼は、赤髪娘を小脇に抱えている。さっきまで座っていた椅子に腰かけると、娘を膝の上にうつぶせにする。

 「若い娘として、まず言葉遣いから勉強しませんとな」

 「あ、あんた。誰よ!」

  パーン

 あちゃー、お尻叩かれてるよ。

 「痛いっ! 何すんのよ」

  パーン

 「痛い、痛い。止めなさいよ」

  パーン

 「え、え~ん」

 泣きだしちゃったよ。

  パーン

 あちゃー、容赦ないね。

 「きちんとした言葉を話せますかな」

 「え、え~ん」

  パーン

 「え、え~ん、はなっ、話します、話します」

 リーヴァスさんは、赤髪の女の子を立たせると、頭を撫でてやった。

 「やれば、出来るではないですか。これからは、いつもそうしなさい」

 「は、はい。え~ん」

 「あれ? もう終わったの?」

 加藤がやってきた。

 「ああ、そうみたいだ」

 「なーんだ。つまらないな」

 彼は、竜人の男達が落した剣を集めてまわっている。

 「これ、要るか?」

 「いや、要らないな」

 俺が答えると、加藤は、剣の根元を二本の指でつまんで、ぽきぽき折りだした。やっと、頭の痛さから解放された男達が、震えながらそれを見ている。あっという間に、20本の剣をへし折った加藤は、店じまいの手伝いに参加した。

 娘と男達は肩を落とし、すごすごと帰っていった。

----------------------------------------------------------------

 次の日も、店は大繁盛だった。

 普段の二倍以上の数焼いておいたクッキーが、昼前には完売してしまった。
 さすがに今日は、赤髪の女の子は来ないようだ。
 そう思って店じまいしていると、がっしりした体格の赤髪の男性がやってきた。昨日来た男達とは明らかに風格が違う。
 椅子に座ったリーヴァスさんの前まで来ると、軽く頭を下げる。

 「こんにちは。私は、ラズローと申します。お名前をうかがってもよろしいですか」

 「こんにちは。リーヴァスです」

 「ここのところ、うちの娘がいろいろご迷惑をおかけしたようで、心からお詫びいたします」

 「いえ。聞きわけのよい娘さんでしたぞ」

 「家でも手を焼いていたのだが、昨日帰って来てから、急にしおらしくなりました。
 何度言っても直らなかった言葉遣いも、見違えるほどになりました」

 彼は、そう言うと深く頭を下げた。

 「娘をしつけていただき、誠にありがとうございました」

 どうやら、あの娘には似合わぬ、立派な父親の様だ。

 「変われるのは、娘さんに可能性があるからですな。
 そう育てられたのは、あなたですから、自慢なさって良いですぞ」

 男は、しばらく頭を下げたままだったが、ようやく顔を上げると、こう言った。

 「お忙しいでしょうが、ぜひお礼をさせていただきたい。ウチにいらしてはもらえないだろうか」

 リーヴァスさんが俺の方を向く。
 俺が頷くと、彼はこう言った。

 「よろしいでしょう。うかがわせて頂きます」

 「おお! そうして下さるか! では、明日の昼過ぎに、ここにお迎えに上がります。
 どうぞ、皆さんでおいで下さい」

 「では、五人で伺います」

 「よろしくお願いします」

 男は、そう言うと、こちらにも礼をして去っていった。

 「では、そろそろ引きあげますかな」


 リーヴァスの声を合図に、史郎達は、イオの家に帰った。
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