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プロローグ
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久々の新作です。
読んだ方が元気になるようなお話になるといいなあ。
――――――――――――――――――――
異世界転生もののお約束には、トラックに引かれて死亡とか、通り魔に刺されて死亡とか、バスが谷に落ちて死亡とかがある。
お気づきだろうか?
こういったものには、「死亡」という共通点の他に、「突然」とか、「意図せず」という状況があることを。
つまり、そういった状況があれば、あなたにも異世界への道がひらけるかもしれないのだ。
◇
夏の暑い日だった。
高校一年生の俺、黒田グレンは一世一代の賭けに出た。
うるさいくらい蝉の声に包まれた公園で、ずっと憧れてきた彼女に告白したのだ。
「ずっと好きでしたっ!
友達からでもいいから、付きあってくだしゃい!」
噛んだことにも気が回らないほど緊張した俺は、右手を伸ばし頭を下げた。
頭の上から聞こえてきた彼女の声は、わずかな希望を打ち砕くものだった。
「えっ!?
無理!」
膝の力が抜け、思わずよろける。
子供が遊んだまま残していたゴムボールを踏んだ俺は、頭を下に勢いよく後ろへ転んだ。
体をひねろうとして視界に飛び込んできたのは小さな三輪車だった。
ゴッガシャッ!
三輪車に顔からモロにつっこんだ俺は、遠ざかる意識の中、彼女の顔が心配そうに自分を見ている幻を見た。
こんな幻が見られるなら、告白したのも無駄じゃなかったかも……。
薄れていく意識の中、そんなことを考えていた。
◇
小さな頃から好きだった黒田君に呼びだされた時、私は複雑な気持ちだった。
小学生の時、クラスの女子全員が憧れていた黒田君。もちろん、私も彼の事が好きだった。
けれど、中学生になった頃、彼の人気は急に落ちてしまった。
少しぽっちゃり体型になった彼が、黒縁の眼鏡を掛け、アニメの雑誌やラノベを読むようになったことが原因だろう。
「俺の右手に宿る炎が……」
「黒きドラゴンの血が……」
そんなことをつぶやく彼は、クラス全員から中二病判定を受け、距離を置かれるようになった。
小学校の時、彼の事が好きだった友人たちも、みんな爽やか系男子へ鞍替えした。
その中で、私だけは、まだ彼への思いが捨てきれずにいた。
そんな時、彼から突然の告白。
正直戸惑った。
告白されたのは、真昼間の児童公園。
しかも、頭を下げ、手を突きだした彼の後ろには、長いこと放置されているだろう、さびた三輪車が……。
これっぽっちもムードが無い告白に、しばし呆然とした後、目の前にある彼の頭、その寝癖で跳ねた髪を見て、私の口から自分で思いもしない言葉が出てしまった。
「えっ!?
無理!」
慌てて言いなおそうとしたけれど、彼はヨロヨロと後ずさり、なぜかジャージを履いた両足を上に跳ねあげ、勢いよく転んでしまった。
ゴッガシャッ!
置いたあった三輪車に頭をぶつけた彼は、マンガのように額からぴゅーっと血を噴きだしている。
「グレン君!
大丈夫!?
グレン君!」
私が呼びかけると、彼は閉じかけた瞼の下から、こちらを見て笑った。
「誰か!
誰か来てーっ!」
私の叫び声で、近所の人が駆けつけた時には、すでに彼の心臓は動いていなかった。
それから数時間、自分が何をしていたか、今では思いだすこともできない。
ただ、彼のお葬式で、まだ小学生だった頃の素敵な彼が笑っている写真を見て、私は深く祈っていた。
天国では、君が好きな事をしても、誰も軽蔑なんかしないように、と。
読んだ方が元気になるようなお話になるといいなあ。
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異世界転生もののお約束には、トラックに引かれて死亡とか、通り魔に刺されて死亡とか、バスが谷に落ちて死亡とかがある。
お気づきだろうか?
こういったものには、「死亡」という共通点の他に、「突然」とか、「意図せず」という状況があることを。
つまり、そういった状況があれば、あなたにも異世界への道がひらけるかもしれないのだ。
◇
夏の暑い日だった。
高校一年生の俺、黒田グレンは一世一代の賭けに出た。
うるさいくらい蝉の声に包まれた公園で、ずっと憧れてきた彼女に告白したのだ。
「ずっと好きでしたっ!
友達からでもいいから、付きあってくだしゃい!」
噛んだことにも気が回らないほど緊張した俺は、右手を伸ばし頭を下げた。
頭の上から聞こえてきた彼女の声は、わずかな希望を打ち砕くものだった。
「えっ!?
無理!」
膝の力が抜け、思わずよろける。
子供が遊んだまま残していたゴムボールを踏んだ俺は、頭を下に勢いよく後ろへ転んだ。
体をひねろうとして視界に飛び込んできたのは小さな三輪車だった。
ゴッガシャッ!
三輪車に顔からモロにつっこんだ俺は、遠ざかる意識の中、彼女の顔が心配そうに自分を見ている幻を見た。
こんな幻が見られるなら、告白したのも無駄じゃなかったかも……。
薄れていく意識の中、そんなことを考えていた。
◇
小さな頃から好きだった黒田君に呼びだされた時、私は複雑な気持ちだった。
小学生の時、クラスの女子全員が憧れていた黒田君。もちろん、私も彼の事が好きだった。
けれど、中学生になった頃、彼の人気は急に落ちてしまった。
少しぽっちゃり体型になった彼が、黒縁の眼鏡を掛け、アニメの雑誌やラノベを読むようになったことが原因だろう。
「俺の右手に宿る炎が……」
「黒きドラゴンの血が……」
そんなことをつぶやく彼は、クラス全員から中二病判定を受け、距離を置かれるようになった。
小学校の時、彼の事が好きだった友人たちも、みんな爽やか系男子へ鞍替えした。
その中で、私だけは、まだ彼への思いが捨てきれずにいた。
そんな時、彼から突然の告白。
正直戸惑った。
告白されたのは、真昼間の児童公園。
しかも、頭を下げ、手を突きだした彼の後ろには、長いこと放置されているだろう、さびた三輪車が……。
これっぽっちもムードが無い告白に、しばし呆然とした後、目の前にある彼の頭、その寝癖で跳ねた髪を見て、私の口から自分で思いもしない言葉が出てしまった。
「えっ!?
無理!」
慌てて言いなおそうとしたけれど、彼はヨロヨロと後ずさり、なぜかジャージを履いた両足を上に跳ねあげ、勢いよく転んでしまった。
ゴッガシャッ!
置いたあった三輪車に頭をぶつけた彼は、マンガのように額からぴゅーっと血を噴きだしている。
「グレン君!
大丈夫!?
グレン君!」
私が呼びかけると、彼は閉じかけた瞼の下から、こちらを見て笑った。
「誰か!
誰か来てーっ!」
私の叫び声で、近所の人が駆けつけた時には、すでに彼の心臓は動いていなかった。
それから数時間、自分が何をしていたか、今では思いだすこともできない。
ただ、彼のお葬式で、まだ小学生だった頃の素敵な彼が笑っている写真を見て、私は深く祈っていた。
天国では、君が好きな事をしても、誰も軽蔑なんかしないように、と。
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