俺のスキルは【中二病】

第１話 卵？

　海中を漂っているような気分の中、俺はこれまでの人生を走馬灯のように思い出してた。
　自慢ではないが、小学生の頃、俺はクラスの人気者だった。
　いつも周囲に沢山の友達が集まっていた。
　しかし、いつのころからだろう。
　クラスの中で孤立するようになった。
　中学生になると、「中二病」「キモイ」などと言われ毛嫌いされた。

　大好きなアニメ、『竜と姫君ドラゴン・アンド・プリンセス』の影響で、確かに独り言で呪文を唱えたりはしていたよ。
　だけど、それだけであんな目で俺を見なくてもいいと思うんだ。
　だって、サッカー部の町田が、「俺、フォワードに選ばれちゃった」とか言っても誰も白い目で見ないじゃん。
　別に、俺が「竜の血が俺を選んだ」って言うぐらい許されてもいいと思わない？

　大体、俺がその道に踏みこんだのは、オヤジと母ちゃんがアニメ好きでその影響が大きいんだ。

「コカトリスの卵焼きはどうですか、勇者様？」（※コカトリス：巨大な鳥型魔獣）
「この味！
　姫、あなたは味の聖女様です！」

　朝食の席で、両親がそんな会話をしてるんだよ。
　妹の紗那《しゃな》は、そんな二人を冷めた目で見てたけど、俺はテンション上がりまくってた。
　だって、あれって、『ドラプリ』の中で主人公の竜次とヒロインのキャサリンが交わすセリフだよ。
　思わずお替りしちゃうくらい、興奮するでしょ！

　ちなみに、俺の名前グレンというのも、昔のアニメに出てくる勇者の名からつけられたらしい。別に両親のどちらかが外国人と言うわけではないのだ。


　ところで、今の状態はなんだろう。
　白いカプセルのようなモノの中に自分が浮かんでいるのが分かる。カプセルはドロッとした液体のようなもので満たされており、なぜかその中でも呼吸できた。
　カプセルを通して、外の光が優しく入ってくる。
　ここは、なぜか安心できる。きっと生まれる前、俺は母ちゃんのお腹でこんな感覚を味わっていたに違いない
。
　手や足を見ると、間違いなく俺自身なんだよね。
　全裸なのが、ちょっと理解できないけど。
　ただ、小学生の時、道に飛びだした妹を自転車からかばったとき負った、腕の傷がなぜか消えていた。

　ピシッ

　おっ、カプセルに裂け目が入ったぞ？
　ここから出られそうだな。

　ピシピシピシッ

　おおっ、外が見える。
　岩のようなモノの間にカプセルがあったのか。
　あれ？
　右側の岩、動いてないか？
　もしかして……これ、でかいけどウロコ？

　上を見た俺は、声を出すのも忘れてしまった。
　なぜなら、俺を見下ろしていたのは、アニメや夢の中で散々目にしてきた生き物、ドラゴンだったからだ。