俺のスキルは【中二病】

第２話 ドラゴンママ

　
　どうやら、俺がカプセルだと思っていたのは、卵だったらしい。
　見下ろしているドラゴンと目が合っちゃったもんね。
　
『こ、これは、どうしたことだ！？』

　おや、ドラゴンの言ってることが分かるよ！？
　なんで？

「ええと、初めまして？
　俺にもさっぱり分かりましぇん」

『どうして人族が？』

「ええと、ここ、どこですかね？」

『しかも、こやつ我らの言葉を話しておる』

　いや、俺が話してるの、日本語ですから。
　それより、この竜、俺の話を聞いてないよね。
　
「ええと、お父さん？」

『馬鹿者！
　私はメスだ！』

「ああ、お母さん？」
　
『人族などの母親ではないわ！
　……と言いたいところだが、お前が私の卵から生まれたのは確かだ。
　う～む、どうすればよいのだ？』

　ドラゴンの困った顔を見ていると、なんだか親近感が湧いてくる。
　これって、やっぱり「刷り込み」ってやつかな？

「まあ、ここは落ち着いてじっくり考えましょうよ」

『生まれたばかりの癖に生意気な小僧だ！
　しかし、どうしたものかな……』

「ところで、お父さんはどうしたんです？」

『う、うるさいっ！
　今、お前をどうするか考えておるのだ！
　少し静かにしておれ！』

「はは～ん、なにか事情があるんですね。
　まあ、敢えてそれを聞こうとは思いませんよ。
　俺ってよくできた息子だなあ」

『かーっ！
　黙っておれんのか、お前は！』

「まあ、おいおい事情は分かるでしょうから」

『くっ！
　小癪《こしゃく》なヤツだ！
　うむ、決めた！』

「何をです？」

『お前は、人族に預ける』

「ええっ！？
　生まれたての赤ちゃんを、捨てるってこと！？」

『捨てるのではない。
　預けるのだ』

「どっちも同じような気がするけど……」

『我が種族は、生まれた子を他の者に預けて育てるのだ』

「へえ、ずい分、無責任ですねえ」

『無責任ではない！
　自分の子には、どうしても甘くなる。
　それを避けるため、他竜に子を預けるのだ』

「へー、しかし、『他竜』って言葉、初めて聞きましたよ。
　他人の代わりで『他竜』か。
　なるほど」

『これ、変なところで納得するでない！
　竜の血よ、我が一族の印をここに現せ』

　右手の甲に魔法陣に似た模様が現われる。

「おっ、これ、かっこいいな！
　いやー、しかし、リアルで、しかもドラゴンの口から直接『竜の血よ』って聞けるなんて、もう死んでもいいや。
　あ、俺、もしかして死んでる？」

『なにを訳のわからぬことを言うておる！
　その紋章が現われたということは、お前は間違いなく私の子だ』

「ははーっ、ありがたやー！」

『……我が子ながら変わったヤツだな、お前は』

「『ママ』って呼んでいい？」

『うるさいっ！
　とにかく人族のところに連れていくぞ』

　ママ、いや、お母さん竜は、俺をその前足で掴むと、空へ舞いあがった。

「ま、待ったーっ！」

『今更、なんだ？』

「せめて服だけは着せてちょうだいーっ！」