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24.いいんじゃないか
しおりを挟むあひみての~のちの心にくらぶればああ~
ハイッ!
昔はものを~思は~ざりけりいいい~。
おっといけない、現実逃避してしまったわ。
ちなみに解説をさせていただくと、脳内で百人一首を諳んじており、途中で入った『ハイッ』はカルタを取りましたよという意味の雄叫びである。
ほんと、グッとくる句だよねー。なんか恋愛をする前と後での心の変化がドンピシャ伝わってくると言うか。昔は優秀なポエマーがきっと大勢いたんだろうなあ。
「えっと、華?」
それにつけても悔しい。郷田さんが私以外の女性と一緒にいて、浮気現場を押さえられる絶好のチャンスのはずなのに、こちらにも壮ちゃんがいるためソレが叶わないのだから。男と女が2人きり…須賀さんとの場合は容認されても、壮ちゃんとの場合は難しいだろう。
「おーい、華?」
何故なら私は壮ちゃんから恋心を抱かれており、しかも数分前には『付き合って欲しい』と告白までされているのだから。そんなやり取りをしておきながら、恋愛感情は有りませんなどと嘘は吐けない。
って、おいこら鼻をつまむな!
「やっとこっちを見てくれた。華、大丈夫か?」
「ふがふが、ふう」
この状態では話せないという旨を、哀し気な表情で訴えると即座にその手は離された。
「あはは、ごめんごめん」
「痛いよ、壮ちゃ…んああ?」
驚いた。
だって女連れだし、もし私を見つけたとしても接触してくるはずが無いと思っていた郷田さんが、いつの間にか傍に立っていたのである。笑顔がトレードマークのその人が、珍しく真顔で私を詰り出す。
「華、お前…俺以外の男と…」
「ふえっ?!」
いったい、どの口がそれを言うのか?お前はあちらで待機している女性と最後まで致しているに違いないが、こちらは一緒にご飯を食べただけだぞ!
「『仕事が忙しくて会えない』というのも嘘だったんだな。もしかしてもう俺に飽きたのか?」
「そっちこそ、もうネタは上がってるんだけど」
何だか安っぽい返しになってしまった。どうやら人間という生き物が本当に焦ると、よく耳にする言葉を口から出してしまうらしい。
「ネタ?何のことだよ」
「いろんな女と浮気しまくってるって!私は浮気なんかしてないし!この人はね、幼なじみ兼同じ会社に勤めている先輩で、そしてつい先ほど告白されちゃって、返事をどうしようか迷っている最中という間柄の相手だよッ」
ドヤアアッ。
これで身の潔白を証明したつもりでいたのだが、さすが色男歴ン十年、スラスラと弁解が始まった。
「俺も…たまたま女友達に会って、一緒に食事でもしようかという話になっただけなんだ。だいたい華だってこうして男と食事しているんだから、俺を責める資格は無いよな?それに俺、浮気なんかしてないよ。どうして華がそう思うのか、逆に教えて欲しいくらいだ」
「へええ、はああ、ふううん」
くっそ、やっぱり現場を押さえておかなかったことが悔やまれる。まさかニョロ野から密告を受けたなどと言えないし、ニョロ野と郷田さんは今後も同じ職場で働いていくのだから、私がその関係を壊してはならぬのだ。
「っていうかさ、俺と付き合ってるのに何故その男からの告白をスグに断らないんだ?どう返事しようか迷ってるって…そっちの方が浮気だろ?」
「あっ」
そんなことに気付いちゃいましたか?
ええ、私も言われて気付きましたよ。テンパって余計なことをベラベラ喋った自分のことを今は『ガンバ!』って励ましたいほどですっ!
困っている私を見かねたのか、壮ちゃんがこの会話に割って入ってくる。
「あの…、もしかしてこちらの男性が華の彼氏なのかな?だとすれば、いいんじゃないか、ここでスッパリ別れてしまえば。それで俺と付き合えばいいんじゃないか。うん、それが一番いいんじゃないか」
「…壮ちゃん、いいんじゃないかって言い過ぎ!」
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