たぶんきっと大丈夫

ももくり

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33.彼女達の謀り

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「『ぎゃっ』て…色気無いなあ、お前」
「へえ、どうもすんません」

 当たり前だが室内には私達以外、誰もいない。

 そして、ここに居ることを悟られない為にだろうが、照明は点いておらずブラインドも閉じられているせいか非常に暗い。

 …ハッ、もしやアレですか?!

 オフィスの一角でくんずほぐれつ、イヤンアハンなエロ展開だよね?!

 きっと最初はディープキスかな。そんで次はくるりと向きを変えられて背後から胸モミ、そのままバックで繋がるという流れに違いない。

 大丈夫、華は良い子だから断れるよ!

 だって神聖な職場でそんなことしちゃダメだもの。いや、実を言うとミーティングルームにランチ仲間の女性陣を待たせているから、エロいことなんかしたら絶対にバレちゃうと思うんだな。須賀さんもそんなリスクは負いたくないでしょ?

 腕組しながら一人『ふむふむ』と頷く私に、
 須賀さんは予想外なことを言い出すのだ。

「俺、このあと出掛けなきゃいけなくて、あまり時間が無いんだ。今から出す質問にはイエスかノーで答えてくれないか」
「やだソレって暗に私の話が長いと言いたいの?あのさあ~、これでもクライアントからは『華ちゃんの説明は的確で分かり易い』と絶賛されているんだからねッ」

「いきなり長い!イエスかノーで答えろ」
「イ、イエス、サー!」

 しゅんとする私を慰めもせず須賀さんは続けた。

「お前、明日の晩ってヒマか?」 
「明日って金曜…?えっと、イエス」

 年末の忙しい時期だが、クリスマス直前なので残業自粛のムードが漂っており、残念ながら早く帰れそうなのだ。

「そのまま予定を空けておいてくれ。あ、お泊りセットも用意しておけよ」
「イエスと答えたいところだけど、宿泊先はどこなの?」

「俺んち。もうすぐクリスマスだってのに予定無いだろ、お互いに」
「ぐっ、…イエス」

「どうせ独り身同士なんだし、一緒にいればいいじゃないか」
「はあ?はあああ?!」

 また『イエスかノーで答えろ』と叱責されるかと思ったが、須賀さんは『タイムリミットだ』とだけ呟いて去って行った。



 気を取り直してミーティングルームに向かうと、ランチ仲間が笑顔で迎えてくれる。ちなみにメンバーは私を含む4人で、その内訳はこんな感じだ。

・清水さんの彼女である吉川桂さん。
・超絶イケメンを彼氏に持つ堤希代さん。
・私と同時期に中途採用となった竹中マミ。

 マミに彼氏はいないはずだが『予定は埋めたわよ』と言われてしまった。ということは、どうやら私だけが寂しいクリスマスイブを過ごすらしい。当然、優しい3人は気を遣って…くれるワケも無く、ひたすら浮かれまくっている。

「去年のイブは彼と2人で温泉旅館に泊まったの」
「私は彼友の別荘で夜通しパーティーでしたよ」
「イブ前の祝日が無くなって慌ただしいですよね」
「やだ!これコロッケじゃなくてメンチカツだわ」

「今年は彼の部屋で過ごすからコスプレしちゃお」
「コスプレ、いいですね!私も挑戦したいな」
「むふっ、裸エプロンというテもありますよ」
「私、メンチカツ食べると胸ヤケするのに~~」

 えっ?
 私の台詞がどれか訊かなくても分かりますって?
 凄いわ、アナタってもしかしてエスパーなの?!

 げふん、げふん。

 カボチャの煮物が喉に詰まったけどお茶持ってくるの忘れたや。でもいいの、今とっても心が満たされているから!

 だって大きな声じゃ言えませんけどね、
 私にも予定が入ったんですよ!!

 イブ当日では無いけれど、直前の土曜を素敵な須賀さんと過ごしちゃうんだぞ、おい、このやろ!!

 ああ、良かった、私の人生このまま上向きになってくれるといいなあ。なあんて考えていたら、ニマニマが止まらなくなってそれを誤魔化す為に給湯室までお茶を淹れに行くことにした。





 …………
 [華さん離席後の女性陣の会話]


「さすがの華ちゃんも焦ってくれたかなあ?」
「大丈夫ですよ、私達、自慢しまくりましたもん」
「イブに一人は寂しいと思ったに違いないです!」

「須賀くんと上手くいくといいね」
「ふふっ、さっき会議室で何してたんでしょう?」
「そりゃあ勿論、キ、キスとか?」

「うわ、オフィスでこそこそキスするのおお?!」
「やだああ、そんなの絶対に…」
「そうですよ、隠れてそんなことするなんて」

「「「素敵ィ!!」」」
 
 
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