たぶんきっと大丈夫

ももくり

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34.華、動揺する

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 ──そして金曜の晩。


「え?きゃっ」
「そんなに驚くなよ」

 いや、だって、さっきまで普通だったよね?

 須賀さんちのソファで、高級ワインなんかチビチビ飲みながら仕事の話とかして、『一年が過ぎるの、早くなったわ~』なんて定番の愚痴を言ってたはずで。

 …なのにこのエロい感じは何?

 いきなり隣りから手が伸びて来たかと思うと、いつの間にか押し倒されていたりなんかして。んで、ゆっくり覆い被さってきた須賀さんに対して、抵抗するどころか笑い掛けていたりなんかしちゃって。

 何してんだよ、私。

 だってっ!ちょこっと期待してたからね!
 ってウソウソ、本当はすっごく期待してました!

 いやあ、正直言うと何から何まで好みなんだよね~、この人。そう、今までは『職場の先輩だし』とか『私なんかに興味無いだろうから』なんて理由で諦めていたけど、一回でもそうなれたのなら、二回目も有るんじゃないかと思うワケで。

 ふああ。
 押さえつけていた欲望が解き放たれていくうう。

 だって、私は知ってしまったのだ。

 このシャツの下には引き締まった胸筋が隠されていて、ズボンを脱がせるとストイックな性格とは真逆の情熱的なアレがスタンバイしていることを。

 くおおおおおっ、そんなトロンとした目をする須賀さん、貴重!エロい須賀さん、超レア!マジ、尊い!これは胸にくる!いや、子宮にくる!!

「須賀…さん…」
「…ん」

 続く言葉を期待したのに、そのまま下唇を甘噛みされてしまう。

「何か言って?」
「……」

 いつもなら適当に何か話してくれるのに、いま目の前にいる須賀さんはもどかしそうな顔をしたかと思うと、顔の角度を変えて口付けを深めただけだ。

 熱くて、頭の中がボーツとする。それは須賀さんの体温が伝わってくるせいかもしれないし、ワインを飲み過ぎたせいかもしれない。

 漸く唇が離れたものの、互いに目を見ることが出来なくて視線を彷徨わせる。

「あのね、須賀さん、私、…私は…」
「華、腰を浮かせて」

 『私は』の後、何と言うつもりだったのか?自問自答してみたが、答えは見つからない。そして悩む暇を与えて貰えないまま、スカートを脱がされていた。

「須賀さんって、脱がし慣れてるのね」
「は?!」

 だって郷田さんは分かるよ…自他共に認めるヤリチンだったから。だけど須賀さんはそうじゃないでしょ?これほど上手に衣服を奪えるのは、追い剥ぎか須賀さんくらいのモンだよ。

「まさか、須賀さんって遊び人なの?」
「違う…と言いたいけど、一時期…元カノに振られてヤケになった時にちょっとだけ遊び歩いた」

 そ、そうでしたか。

 えと、それは富樫副社長の奥さんと破局後ということだよね。へえ、そうやって割り切って付き合うことが出来ちゃう人なんだな。何かもっと一途で潔癖なタイプかと…って、ん?

 待てよ、私。
 今まさにその状態なんじゃないの??

 よく考えたら、私達って付き合ってもいないし、この先どうなるかも不明な状態で。いや、それどころかずっとこのままということも有り得るワケで。

 ──セフレか?セフレなんだな?
 なんだよ、私も遊ばれてる側の人間じゃないか。

 自分の立場に気付いたものの、今更どうにも出来ず。動揺を隠す為にギュムギュムと抱き着いてみたりする私なのであった。
 
 
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