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<零>
その38
しおりを挟むえっと、演技?
夫婦円満に見えるよう演じているの??
このまま首をポキッと曲げられたら、確実に私は殺されるであろう。そのくらいの力強さで、政親さんは私をグイグイ抱き締め続けている。
「今までの俺は仕事が最優先だった。
どんなに難しいミッションでもスグに成し遂げ、あまりにもサクサク遂行してしまうものだから一番難攻不落と言われたあの会社の立て直しを祖父から命じられたんだよ。なのに…。
お前の顔が仕事中にチョイチョイ浮かんで、俺の集中力を奪ってしまうんだ。零、お前…本当に…」
「はっ、はい?」
ほんの少しだけ距離を離されたかと思うと、ヤンキーのケンカみたく斜めから見つめてきて。ゴクリと喉を鳴らす私に政親さんはこう言った。
「すんげえええええええええええ…可愛い」
「は??」
「聞こえなかったか?じゃあもう一回言うぞ。すんげええええええええええええ…可愛い」
「うあっ、ぎゃあああ」
恥ずかし過ぎて奇声を発する私。言っている本人も相当恥ずかしいらしく、眉間には皺が寄りまくっている。
「お前の声を聞いただけで仕事が手につかない。まるで思春期の恋する童貞みたいな状態だ!」
「ど、童貞じゃないでしょ?!だってほら、ヤルことやってますし」
最早、動揺し過ぎて自分が何を言っているのか分からなくなっている状態だ。
「ダメだダメだと自分に言い聞かせていたのに、やっぱり顔が見たくなりノコノコ来てしまった」
「ノ、ノコノコって、なんか可愛いですね!!」
「れ、零の方がすんげええええええ…かわっ…」
耐え切れなくなったのかとうとう高久さんが、自分の首辺りをガシガシと掻きむしりながら我らの会話に割り込んで来た。
「ぅあのッ、もう分かりましたんで!!」
「高久くん、何度も言わせるなよ。俺たち夫婦の会話に勝手に入ってくるな」
オウ、イッツクール!!
「…でな、零。残念だけどもうあと1時間ほどで会社に戻らないといけないんだ」
「え、ああ、はい、どうぞお戻りください」
私もそれに合わせてクールに答えただけなのに、何かが突然崩れ去った。
「そんな言い方、冷たいよお。もっと寂しがってくれなくちゃ。そうだ!零、泣いてたんだろ?そういうのもっと俺に直接ぶつけて欲しいな。
もぉ~、俺の前ではツンケンしているのに、隠れてメソメソするなんてお前、天才かッ。その調子で俺の心をガッシリ掴んで自由自在に操るつもりだろ、こいつめこいつめ」
え…んぎ…なのかな?
脇腹をツンツンされながら、私は呆然と立ち尽くすしかなくて。『残り1時間の逢瀬ならば』と気を利かせた高久さんと靖子はそのまま帰り。2人きりになった途端、政親さんは溜め息を吐きながら腰を下ろす。
「流石にこれでアイツらも信じただろうな」
「え、ああ、そうですよね」
やっぱり演技か!!
そっか勿論だよね。
危うく騙されそうになった自分を恥じつつも、称賛の言葉を贈ることにした。
「政親さん、素晴らしい演技でしたよ!!」
「……は?」
何故そんなに目を見開くのか。
「絶対にこれで偽装だとはバレていませんって」
「……え?」
頭を抱えたかと思うと、政親さんは再び眉間に皺を寄せまくり。天井を見つめたまま動かなくなってしまった。
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