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<靖子>
その50
しおりを挟む元々、爺様社員たちから嫌がらせは受けていた。しかし今はアレすら手緩かったのだと痛感する。
なぜなら現在、集中攻撃を受けているからだ。
少し前までは茉莉子さんがダントツ1位で、高久さんが2位、かなり離れて私の順だった。ところが新社長就任をキッカケに爺様社員たちが次々と手の平返しを始め、『社長の兄嫁様の仰る通りです!』てな調子でどいつもこいつも茉莉子さんの下僕と化し。
極めつけの公子さん暗躍である。絶対にもう、あの人が爺様社員を焚きつけているに違いない。それは会議資料を私1人に作らせるという些末な嫌がらせから始まり、先程の架空発注という大きなモノまで幅広く網羅されており。
その都度、剣持さんに報告しているのだがこれがもう、全然と言っていいほど埒が明かない。というのも、何だかんだ言って私1人で全て解決してしまうからである。
電話を終え、重い足取りでオフィスへと戻ると再び部長から手招きされた。
「あ、浦沢さん。戻って早々悪いんだが、今から社長室に行ってくれないか?」
「え?…はい」
社長から呼び出しを受けるなんて滅多に無いが、考えてみれば架空発注の件に巻き込まれているのだから詳細を私から直接確認したいと考えても全然おかしくない…と思うことにした。待たせては失礼なので、慌ててエレベーターに飛び乗り、最上階にある社長室へと向かう。
コンコン!
ノックすると社長直々の出迎えを受けた。
「やあ、靖子ちゃん!ロクムは好きかい?」
「ロクム…トルコの激甘スイーツですよね」
「おっ!さすが食品会社の営業担当だね。輸入菓子のことはひと通り熟知しているんだな」
「はい、まあ…」
なんだろうかこのテンション。とても架空発注の話をする雰囲気では無い。ふと気づけば社長の重厚なデスクの隣りに小さな丸テーブルが置かれていて、そこに椅子が4つ並べられている。
えっと…、なんだこのプチ・コーナー。
首を傾げていると何処からか剣持さんが登場し、コーヒーと一緒にロクムを丸テーブルに置いた。
コーヒーカップの数は3つ。
「じゃあ、休憩しようか。俺、ランチを食べ損ねてさ~。今から軽く卵サンドを腹に入れるから、靖子ちゃんはロクムで付き合ってよ!」
「は?…はあ」
って、剣持さんも座るんかいッ。
…そんなワケで私はロクム、男性2人は卵サンドを手に取る。
「ごめんね~、俺のバカ従姉妹が嫌がらせして、靖子ちゃんを困らせているんだって?」
「あ…いえ…はい」
『バカ』の部分を否定し、
『嫌がらせ』の部分を肯定してみた。
案の定、食事開始と同時に社長は喋らなくなり、どうやら剣持さんも食事中は無言派らしく、それに合わせて私も黙り続ける。
もぐもぐもぐ、ゴクン。
カチャ、ガサガサ…。
うーん…。
なんなんだろうか、この時間…。
『じゃあ食べ終わってから呼んでよお』と言いたい気持ちをグッと堪えて私は微笑む。最後の一口を食べ終えた社長が、ようやく本題に入ってくれるようだ。
「結婚、してしまえばどうかな?実は俺と零も最初は偽装でさ。やってみると案外楽しかったよ!!」
「そ、そうなのですか」
…本当に何なんだ、この人。
そんなに堂々と偽装結婚を暴露し、しかも他人にもソレを薦めるって人としてどうかと思うんですけど。
「俺がもし女だったらさ、剣持さんと結婚出来るなんて2つ返事だけどな」
ヒ、ヒトゴトだと思って!!
段々イラッとした私は真情を吐露するのである。
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