かりそめマリッジ

ももくり

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<茉莉子>

その69

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 だから何?と思った。

 だが、そんなことを口にしては次兄の思うツボ。最初っから私を揶揄うだけの目的だろうし、きっとこの後、二度と会うことも無い男だろう。

 それにしても悪趣味だな。

 不細工に変装して会い、私がイヤな顔をしたら『実は美形でーす』とかネタばらしをするつもりだったのか。いやいや、その場合でも『だから何?』案件だ。

 ふと気づくと、その想いが溢れていた。溢れていたとか表現すると超ポエムな感じだが、早い話、ついウッカリ口を滑らせたのだ。

「だから何?」と。

 それを聞いた榮太郎が思いっきり固まっている。どうやら私は、彼の想像とは真逆の反応をしてしまったらしい。

 仕方なく愛想笑いを浮かべながら、率直に質問する。

「お忙しいんですよね?だったら真意を教えてください。茶番に付き合っているヒマは有りません」
「あのさ、この顔見ても何とも思わないワケ?」

「わあ、凄く変装がお上手なんですね(棒)」
「はァ?!ソコじゃないっつうの!!」

 どうやらこの男は、私が苦手とする誘導型トークが得意らしい。

 解説しよう!!
 誘導型トークとは最初から求めている答え有りきで、そこへ導くように会話を進めることを指すのである!!

「じゃあドコですか?面倒なので回りくどい話し方は止めてください」
「幼い頃は『奇跡の美少年』と呼ばれ、小中高と全校生徒…あ、それと教師もだな。とにかく皆んな俺の信奉者だったんだ。そして社会人になった現在では俺と2人きりになるだけで孕むかもと噂される、とんでもなく濃厚なフェロモンが加わり…」

 トントンと私はテーブルを人差し指で叩く。

「だから、もっと要点をまとめてくださいって」
「ふ、普通は一目見て俺に惚れるんだ!!もう目が獲物狙うハンターみたいになって、ギラギラのアチチの燃え燃えになるはずが、いったい何だよ?その冷え冷えの目ッ」

 そんなことを聞かされたせいで、更に冷え冷えになってしまったではないか。

「あのう、やっぱりこの縁談って兄と仕組んだ悪戯なのでしょうか?」
「はあ?!悪戯のワケないだろ?!そんなこと言ったらウチの母に呪い殺されるぞ」

「…え?!本物のお見合いなんですか、コレ?」
「き、決まってるだろ!だからワザワザ嫌われようとこうして変装をな、こんな出っ歯まで歯科医の友人に特注してさ~」

 そっか、嫌われようとしてたんだ。

 薄々分かっていたはずが、ショックを受ける私。それを悟られぬ様にと平静を装い、ニッコリ笑顔で言い放つ。

「先程も申しましたようにウチから断ることは出来ませんし、どうかそちらから『縁が無かった』とウチの両親に言ってくださらないでしょうか?」
「おい、本気か?本気で言ってるのか?」

 うへええ。
 なんだか面倒臭い人だなあ。

 絶対に惚れられたくなくて、不細工に見えるメイクをしておきながら、実際に惚れられないと分かると大騒ぎするって。じゃあ、この私にどうしろと??なんかもう眠くなってきちゃった。

「いいか小椋茉莉子ッ。もし俺が見合いを断ったら、お前はもう、俺とは会えなくなるんだぞ?!」
「それは…そうでしょうね」

「い、いいのか、それで?!後で『やっぱり』とか思い直しても、俺は他の誰かと結婚してるかもしれないんだぞ」
「はあ、それは別に…」

「嘘つけ!!本当は嫌なんだろう?!」
「やだなあ、痛くも痒くもありませんよ」

 この調子で、なぜか多忙なはずの帯刀榮太郎は1時間も自慢と意味不明な説得をしてくれて。最後はムリヤリ連絡先を書いたメモを渡して去って行った。それから2週間が過ぎた頃、突然、我が家にダイナマイトが放り込まれる。

 いや、そうじゃなくダイナマイトは比喩なんで。紛らわしい?はい、じゃあ次からは言いません。…と、反省しつつも話に戻る。

 なんと、帯刀家から正式に結婚の申し込みが有ったのである。

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