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<茉莉子>
その77
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小椋家は座敷牢が有ることからも分かるように、とても古めかしい日本家屋だが、帯刀家はそれとは真逆で近代美術を思わせるモダンな豪邸だ。
榮太郎の予想通り、家には妖魔…もとい母親しかおらず。
榮太郎の後をついていくと、べらぼうに広いリビングへと辿り着き。長い壁と同じくらいの長さのソファの中央に、その人は座っていた。黒地に鮮やかなハンガリー刺繍のドレスを着て。
右手の指全部に大きな宝石がついた指輪をしているのだが、それがメリケンサックにしか見えないのは、いったいどうしてか。確かに美人だけど、絶対ケンカが強そうだ。敵には回すまいと決心したところでカッと目を見開き、妖魔は言うのだ。
「んまあ!こちらは1番じゃないの!!
榮太郎ったら、1番と上手くいっていることを、どうして教えてくれなかったのよ!!えっ?じゃあ、今日の4番とのお見合いは??まさかすっぽかしたワケじゃないでしょうね?」
まさか本人を前に番号呼びするとは。
私は根性で笑顔を貼り付けながら武者震いする。それから榮太郎は妖魔の隣りに座り、私はその正面に置かれていた異常に背もたれの長い椅子へと腰を下ろす。
ちょっこーん。
椅子が立派過ぎて、小柄な私が座るとまるで小人のように見えることだろう。しかも妖魔はひたすら榮太郎とのみ会話し、私との接触は皆無である。
「やっぱりいいわね、1番。何というか、美人じゃないところがイイ!」
し、失礼だな…。
「ああ、確かにな。美人では無いが妙に味のある顔だ」
おいこら榮太郎ッ。アンタだけでも反論してよ。
「美人でバカな嫁なんか、きっと高飛車で金遣いが荒いに決まってるだろうしね。こういう地味で賢い子の方が扱い易いと思うの」
本人を前に、ぶっちゃけ過ぎじゃない??
動揺を隠せない私に、ようやく妖魔が話し掛けてくる。
「あら…?でもこのコ、榮太郎のことをそんなに好きじゃないみたいね。普通だったら会って数分で榮太郎を好きになるはずなのに、そんな気配が微塵も感じられない。
ねえ、アナタ。榮太郎のことをそんなに好きじゃないでしょ?それじゃあ困るのよ。跡取りに是非、男児を産んで欲しいの。ご存知?よりエクスタスィーを感じると男児を産む確率が高まることを。
産み分けゼリーや漢方も試して貰うけど、全ての要素が揃っていた方が確実ですからね。エクスタスィーを感じるにはまず、榮太郎に惚れ抜いていただかないと困るわ。
ラブラブチュッチュで頑張って頂戴。大丈夫、私は婚前交渉には寛大だからッ。
あ、そうだわ、今晩は泊まっていきなさい!どうせ結婚したらこの家に住むんですもの。おほほ、榮太郎の部屋は防音にしてあるから、思いっきり乱れても平気よ!!」
ってウインクされたんですけど、ひいぃ~。初めて訪問したお宅で、しかも会って2回目の男と寝床を共にしろと。あ、有り得ない。私の貞操観念を試しているのか??きっとそうなんだな??
「あのう…、申し訳ないのですが…」
誰も私の話なんて聞いちゃあいないし。どこからか家政婦らしき女性が1人やって来て、妖魔はその人に私が宿泊することを伝えており。
「そうです、茉莉子さんはこちらで預かります」
いつの間にやら榮太郎の方は、ウチの両親に私の宿泊許可を得る電話を掛けていた。
そんなこんなで、お泊り、決定~。
本人の意思なんて関係無いらしく、全てが一方的に決められてしまう。味方になってくれるはずの榮太郎も妙にソワソワと落ち着かない。
「…えっと、あ、そうだ、取り敢えず俺の部屋に行こうか。結婚したら茉莉子の部屋にもなるワケだしさ」
「そうですね、それでは拝見させて頂きます」
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