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12.モモね、驚いたの
しおりを挟む※ここからモモ視点に戻ります。
………
そんなワケで。
彼等の元に戻った私は料理をすべく、
って、ん?この建物、キッチンが無いのね。
「あー、そうだな、普段は外で適当に薪をくべて、適当に肉を焼いてるから。皿?そんなの必要ないよ。適当に骨ごとかぶりつくからさ。水?ああ、アーサーヴェルトに頼めば適当に出してくれると思う。アイツは氷魔法の属性持ちだからね。えっ、いちいちアーサーに頼むのは嫌だって?じゃあ、大きめの甕がそこに有るからさ、そこに溜めて貰えばいいんじゃないかな」
国境軍人の皆さんは、寝るためだけにこの建物へ帰っているらしく。
なので、なんというか日本でいうところの山荘ちっくな造りのココには、トイレも風呂も無い。トイレは裏庭の一角に専用の穴があるそうで、そこにせよと。そして風呂は近くに流れている川で済ませばいいよと明るく答えたクロネコ(本名クロノスゾネス)を、ちょっと殴りそうになったモモである。
モモが自分のことをモモと言い出したのには理由が有って、村の仮住まいからの帰り道、ニーニは人が変わったかのように無口になり、使い物にならなくなってしまった。だから仕方なく、館内を歩き回って頼れる人を探していたところ、師匠とヒソヒソ話をしている麻ベルト(本名アーサーヴェルト)に遭遇。
聞いてはいけない内容っぽかったので、話の途中で割って入ることはせず、大人しく死角となるであろう柱に隠れて待っていたところ、それでもやっぱり耳へと流れ込んでしまったのだ。
「──アーサーヴェルトの考えでは、敵国の刺客ではないかと」
「ほほう、そうかもしれんな」
えっ、えっ?!
あの人、一人称が自分の名前なの??
(※本当は中身が王太子なので、違います)
「なので、アーサーヴェルトが言うように国境の守りを強化します」
「そうか、出奔した騎士団長の息子と宰相の息子をこちらに寄越すのか」
やっぱり!
なんかイタイわ~。
(※だから、本当は…以下同文)
「アーサーヴェルトが元に戻れるよう、辻褄を合わせておかなければ」
「分かっとる、それで候補から外れようとしたんじゃろ」
むむ、師匠ったら指摘しないの?
あー、そっか、これまで彼を注意する人がいなかったのね。それじゃあ、仕方ない。彼はむしろ犠牲者だから、私は責めずにおきましょう。
(※勝手に同情しないでください)
で、感化されやすいモモ嬢は、何故か自分も
一人称が己の名前になってしまったのである。
(※ダメじゃん)
さてさて。まだまだ話が長引きそうな麻ベルトを諦め、その辺にいたクロネコに声を掛けたモモ嬢。この後の会話は冒頭でもちょろっと紹介しましたが、ここからの語り手はモモ嬢へと戻します。
「クロさん」
「えっ?!あ、ああ、キミか」
「ごめんなさい、勝手に名前を省略してしまって。失礼でしたよね?」
「いや、別に構わない。俺の名前は覚え難いから」
ブンブンと激しく頭を上下に振る私。そして調理に必要なものについてアレコレ訊ねたのだが、結果は惨敗。そっか、鍋も包丁も無いのね。だったら村から持ってくれば良かったな。
「えっと、じゃあ、小刀はありませんか?」
「あるよホラ」
すげえ、なんか柄の部分に宝石とか付いてるし。
「これで菜っ葉を切ったら怒りますよね?」
「いや、別に。適当に使っても構わないよ」
この人、さっきから『適当』多くない?
そして、クロさんったら視線逸らしまくって、
ちょっと挙動不審じゃない?
思わず唇を窄めてジッとその顔を見つめると、目の前のその人は微かに頬を染めてこう呟く。
「す、好きかも」
「──は?」
「俺、モモ嬢がすごく気に入った」
「なに言ってんですか、いきなり」
ずさささささっ。
何やら大きな物体が、私達の間に飛び込んで来て。それがニーニだと気付く前に、突然話しを切り出されてしまう。
「あ、あの俺も、モ、モモモ嬢のことが可愛いとおももももって。あの時、好みじゃないとか言ったのは、自分だけ出し抜くのはダメだと思ったからで、本気で言ったワケじゃないんだッ」
「えっ」
…そしてニーニは、『モ』が多過ぎじゃない?
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