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13.モモの固有魔法
しおりを挟むほほん、なるほど。
どうやら気を遣わせてしまったようだ。
「あのっ、モモ嬢が俺達の話を聞いてしまったことを、先ほどニールニアロウから教えられたんだが。そのっ、アレは仲間内だからこその強がりで、本当はモモ嬢のことを一目見て可愛いと感じたし、出来れば自分を選んで欲しいとも思っているんだ。でもっ、他の2人を差し置いて自分だけ幸せになろうとするのは、何か違うというか。あとっ、選ばれなかった場合を考えて、知らず知らずのうちに予防線を張ってしまったのかもしれない。しかしっ、それでモモ嬢を傷つけてしまったことは、全てこちらに非が有る。──誠に申し訳なかった」
ふむ。どうやら思い詰めたニーニがクロさんに相談し、2人揃って私との関係改善に努めてくださっているらしい。さあ、何と言って仲直りしようかと一瞬だけ悩んだそのとき、彼等の背後からヌッと姿を現したのはマイ・ボーイことノノくん33歳。
「ん?どうしたんだ、お前達」
「いや、俺達、モモ嬢を傷つけてしまいまして」
どうやら2人はノノくんが怖いらしく、視線すら合わせようとしない。
「は?いったい何をした」
「あ、いや、その…」
「言え、ニールニアロウ」
問い掛けと同時に、何やら魔法を使ったらしく。
いきなりスラスラと答え出すニーニとクロさん。
>棒きれみたいな体
>ニールニアロウを抱けと言われた方がまだ…
>お前達の方が魅力的
改めて聞くと結構パンチのあるそのワード集に、ノノくんは驚き、それから烈火のごとく怒り出す。
「お前らの目は節穴か?!こんな女はどこを探しても他にいないぞ!」
ちょっ、恥ずかしいよ。
てれてれ…。
「お前達は知らないだろうが、女という生き物は本当に面倒臭いんだ。男に対して、地位と名誉と財産と優れた容姿を当たり前のように求め、更に自分への貢物や褒め言葉を黙って催促してくる。こちらがどんなに疲れていても気を遣わないクセに、自分が少しでも疲れると大騒ぎするし、視野が狭くて、噂話が死ぬほど好きだ。しかもな、奴らの幸福度は他の女と自分を比べることでしか測れないのだ」
落ち着いて、ノノくん。
それって凄い偏見だよ!
「でもモモさんは違う。放っておいても勝手に自分だけの力で幸せになって、満足そうに暮らしてる」
やだもう、何これ、褒め殺し?
って、ええっ、まだ続くの?
「過去に召喚された異世界人の女の話を聞かされたことがあるだろう?普通の感覚を持った女はな、こんな辺鄙で危険なところには住まないし、風呂と厠が無いと聞けば必ず怒り出す。それを、笑って許してくれるモモさんは実に貴重なんだ。いいか、お前達。モモさんを逃がしたら、もう後は無いと考えろ。そして、とっとと食事作りを始めるんだ。この調子だと、夕食に間に合わなくなるぞ」
ハイッと3人揃って元気よく返事をし、私はそのままノノくんに助けを求めた。せめて鍋と包丁だけでも入手できないかと言ってみたのだ。
「あー、悪い、言って無かったか。この建物の裏に、モモさん専用の別宅を用意してあるんだ。そこは元の世界のマンションに似せてあって、バストイレ付で小さめのキッチンも有るよ。ご要望の鍋と包丁は勿論、食器なんかも買い揃えてあるから」
「わああああああああああ」
嬉し過ぎて奇声を発する私。
なんだよ、スパダリかよ、ノノくん最高ゥ。
「はいはい、分かったから早くメシ作れ。食材となる魔獣の肉は料理しやすいように切ってあるし、あと水は…うーん、そうだな。モモさんの魔力がそろそろ発現する時期だと思うんだけど、水だと嬉しいなあ」
「そっか、こっちの世界に来て、1、2カ月で魔法が使えるようになるんだっけ?」
ノノくんから説明を受けたんだけど、あまり詳細は覚えていないのだ。確か、潜在魔力が体内を上手く循環するようになるための時間が必要で、巡り出したらそれを外に出すことで魔法が使えるようになるんだよね。
私達のやり取りを聞いていたニーニが、冗談半分で言う。
「試しに『水よ、いでよ』と唱えてみたら?」
「あはは、水よ、いでよ~」
うそっ?!
目の前を水が、それもどこか別の空間に繋がっているのか零れもせずに流れ続けている。
そこでクロさんも口を挟んできた。
「じゃあ、今度は『火よ、いでよ』と言ってみて」
「火よ、いでよ~」
ゴオオオオオッ
上向けにした手の平に炎が灯る。
「まさか、モモさんは二属性持ちなのか?!」
「えっ、これって珍しいこと?」
「ああ、この国で多属性持ちは王太子殿下ただ一人だけだ」
「お、おおう。もしや他の属性も持ってたり…」
その後、二属性どころか風魔法も使えることが判明し、更に師匠がやって来て、驚きの事実が判明。
なんと私の固有魔法は『吸収』で。
他人の魔法をコピーし、
自分のものにしてしまえるらしい。
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