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33.罰ゲーム?
しおりを挟む好きか嫌いかで言うと、たぶん好きだと思う。だけど、そんな感情だけで返事は出来ないのだ。
だってこの人、国王様になるんだよ?!
そんなの有り得ないとは思うけど、もしも、もしもこのままハイとか私が返事をしちゃったりして、交際スタートしたら愛し愛され生活の辿り着く果ては結婚でしょ?!いやいや、無理だよ。定食屋でバイトしてたメッチャ庶民の私が王妃って。マナーもなってないし、ダンスも踊れないもの。
「マナーもダンスもきっとすぐに覚えるさ。そう言えば、ケイゼル先生はモモ嬢のことを絶賛していたぞ。『見た目に騙されたが、国一番の才女だ』と。どんな内容でもすぐに吸収し、そして応用出来るそうだな。それを聞いて、俺も誇らしかったよ」
「そ、そうなの?」
ちなみにケイゼル先生というのは、家庭教師の先生だ。この1カ月さすがに何もしないのはヒマだったし、侍女や騎士の皆さんを話し相手にすることは身分的に出来ないと言われたので、その代わりにと提案されたのが家庭教師だったワケだ。いやあ、『話し相手』として希望したはずなのに、50代前半の男性を派遣してくださるとは思ってもみなかったですわ。
「ああ、そうか、それは申し訳なかった」
聞けば、王太子の元婚約者もケイゼル先生から学んだそうだし、こうなるともう話し相手というよりも、勉強メインだよね?しかも師匠同様…ううん、それ以上に険しい顔してやってくるから、てっきり私が不出来なせいかと思えば。意外と認められていたことが分かって、ビックリだ。
「うん、うん、凄く褒めていたよ」
見た目に騙されてなどと言われるのは心外だけど、でも、才女と呼ばれるのは素直に嬉しい。しかも、あの気難し屋のケイゼル先生からだなんて、最高の賛辞かも。
「あはは、俺もそう思う」
…って、ちょ、コンスタンティン。
「さっきから私の思考を読んでない?喋ってないのに相槌打ってるよね?なんで、どうして??」
「うーん、どうしてだろう?俺も不思議なんだけど、1カ月毎日交信していたせいか、モモ嬢と俺の境界が曖昧になったというか。ふと気づけば、いちいち承諾して貰わなくても考えていることが丸わかり状態になっていたんだよ」
んなアホな!というか、プライバシーは?思ってることが全部バレバレってどんな罰ゲームよッ。
「大丈夫、俺はモモ嬢がどんなことを考えていても全部許せるから」
「いやいやいやいや、そういう問題じゃなくてッ。コンスタンティン様だって、もし自分の考えが全部相手に伝わっていたら嫌でしょう?っていうか、止めてください、今すぐに!止めないと嫌いになっちゃいますからねっ」
いや、そんなシュンとしたって…可愛いけどっ。叱られた大型犬みたいで、凄く可愛いけどっ。
「うーん、残念ながら、俺の方からは遮断出来ないんだ。きっとモモ嬢の方で感情をガードすべきなんだろうけど、それが出来ていないだけと言うか。今度、ケイゼル先生に相談してみると良いよ。あ、でも、俺の能力は秘密だから、そこのところは上手く隠しておいて欲しい」
「ケイゼル先生に隠し事をするなんて、そ、そんなの高度過ぎます…」
結局、この後も不毛な会話を延々と続けた私は、どうにか彼からの熱烈な告白をはぐらかし。返事は保留とさせて貰えたのである。
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