好きですけど、それが何か?

ももくり

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俺、戦利品と化す(前田side)

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 ※ここからは前田視点でお送りします。

 

 女、怖い。
 女、メチャクチャ面倒臭い。
 
 今回の仕事相手は、女性下着の製造と販売がメインの会社だ。そこの通販部門のみを独立させ、福岡に支店を作る運びとなったのは、税金対策として利点が多かったことと、もともと社長自身が福岡の中でも比較的長閑なこの土地の出身で、自治体からの熱烈な勧誘に応えた結果だと聞いた。

 取り扱う商品が女性下着ということも有り、社員の男女比率が圧倒的に女性多めとなってしまうのは当然のことで。福岡支店でも、地元採用組が52人、東京本社から中堅どころが12人も異動して来たのだが、そのうち男性は僅か10人のみ。しかもその殆どが既婚者とくれば、女性達がどんどん強くなってしまうのは仕方のない話で。既に派閥も複数存在しているらしく、どうやらその中で奪い合いを始めたようなのだ

 ──この俺を。
 

「さ、迫田さん、今晩も泊めて貰っていいですか?」
「あはは、またなのかい?いいよ、おいでおいで」

 3カ月限定のウィークリーマンション生活。幸いなことに迫田さんと同じマンションだったのだが、手配してくれたのが先方の総務だったせいか、本社からの移動組も同じマンションで。両隣のいかにもキャリアウーマンという感じの女性社員2人が、毎夜攻めてくる。左隣はプライドが高そうな女王様タイプ、右隣はフレンドリーなんだけど誰とでも寝ていそうな…いや、実際にそういう目撃談多数のエロ女タイプ。

 この2人、どうやら同期でかなり以前に1人の男を取り合ったそうで。その男は結局、どちらとも付き合わず別の女性と結婚したらしいが、それ以来の因縁の関係なのだと。
 
 いや、だからってリベンジに俺を巻き込むのはどうかと思うし、ヘトヘトに疲れて帰宅すると鍵を開けた瞬間に女王とエロ女が飛び出してくるって、どうよ?一応こっちは下請けという立場だからと下手シタテに出れば調子に乗りやがって、不気味な手作り料理を持って来たり、一緒にDVDを観ませんかと誘ってきたり、なんかもうノイローゼになりそうだ。

 勿論、婚約していることは伝えたが、それはどうでもイイのだと。女王はエロ女にしか関心無いし、エロ女は女王にしか興味が無いようなので、早い話が俺は単なるダシだ。つまり、相手に勝った時の分かり易い戦利品という位置付けなのだろう。

 それでも入居1カ月もすればこっちも慣れてきたもので、開錠の音を立てずに中に入るというワザを習得したが、残念なことにこれは1週間しか利かなかった。ベランダから俺の部屋を覗き、照明が点いていれば突撃してくるようになったからだ。テレビもつけず、電話の電源も切ってシャワーも朝に入るようにしていたのに。俺にはもう、人間らしい生活を送ることすら許されてはいないのか?

「可哀想になあ。俺からもさり気なく注意したんだよ、『前田くんのプライベートを奪わないでください』って。でも聞く耳もたないんだあの2人。既に本社の方には報告済で、前田くんだけ住まいを替えて貰うことになっているんだけど、この時期どこも満室みたいでさ。空き部屋が出次第ってことになってるから、それまでは遠慮なく俺のところにいればいいから」
「迫田さん…。本当にすんません」

 きっと迫田さんも迷惑に違いない。だってワンルーム6畳の部屋に男2人って、息苦しいにもほどが有る。迫田さんの部屋と取り替えるという案も出たが、そうしてもきっと突撃はされるだろうし、意味が無いという話になった。

「そう言えば今日は遅い帰宅だね。何かトラブルでも発生したのかい?」
「いえ…、そうじゃないんですが先日、百田さんたちのグループに誘われて飲みに行ったでしょう?それをどこからか聞きつけたみたいで、『あっちのグループだけズルイ』と責められて仕方なく一杯だけという約束で福島さんたちのグループと飲みに行かされました」

「あ…ああ、そうだったのか。でもそれをすると、次も次もとキリが無いだろう?」
「ええ、もうこの1カ月の間は、飲みに行っていない日を数えた方が早いですよ」

 迫田さんが憐みの目で俺を見ている。いいんです、分かっているんです、そういう誘いを上手く断れない己の度量が恨めしいです。でも、集団になると女ってメチャクチャ強くなるからッ。というか、既婚者の中でも一番若い男性社員の里中さんも結構標的にされてて、俺が行かないと彼が1人で奮闘することになるから可哀想で。

「そっか、里中さんが…。うーん、きっと仕事が始まれば忙しくなって彼女たちもそんなヒマは無くなるんだろうけど。今は開業前ですることが無いからきっとヒマなんだよな」
「ええ、そうなんですよ。開業までの辛抱だとは思うんですが」

 …と、まあ毎日がこの状態で、俺は千脇のことを考える余裕が無かった。

 そう、全然まったく無かったのである。
 
 
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