10 / 42
この恋に未来は無い
しおりを挟む「安心してください、バレてます。鈴木さんの本質が暗くて重いって、私はもちろん山川さんも気づいてますよ」
「やまかわ…。なあ、美玲、お前と山川って」
てんてんてん。
続く言葉が出て来ない。
「私と山川さんが、何ですか?」
「…いや、何でもない」
「何ですか、気持ちの悪い。言ってくださいよ」
「いや、デキてんのか?」
「は?」
「だって、しょっちゅう2人で帰ってくし」
「私、彼氏いないって言いましたよね?」
「いや、だって彼氏とソレは別だろうよ。性欲は溜まるだろう、アイツも男だし」
は?は?は?は?
もう、この人は。
可愛いって思ったの、撤回!
「何でも、自分基準で考えないでくださいよ。性欲が溜まっても、好きな相手としかしません。そんな人間も世の中には大勢いるんですッ!!」
シ───ン。
早朝4時の回転寿司店にうら若き乙女の声が響き、カウンター席の中年サラリーマンが鈴木さんを優しく慰める。
「フラれちゃったのか、兄ちゃん。まあ人生、そんなときもあるわな」
「…あ、あざ~っす」
お礼を言ったあと、恥ずかしさに負けて私たちは店を出た。まだ日の出には早く、タクシーは捕まりそうにない。だから余力を振り絞り、駅のタクシー乗り場を目指そうとしたのだが。
「ああ、眠すぎて俺もうムリだ。ホテル行こうぜ」
『行く』じゃなくて、『行こうぜ』。
も、もしかして誘ってる?
そんなワケないよね。
だって私、好きな人としかしないと宣言したし。うーん、ひょっとして純粋に眠るだけなのかな?確かにタクシーに乗るよりは全然安いけど…。
「どうする、美玲?」
「え、ああ。いいですよ」
そのときの鈴木さんの笑顔を、
私は一生忘れない。
もしかして私、間違えたかな?
そ、そういう意味だったの??
だってあの、いや、でも…。
待て待て勘違いするな。
きっと部屋は別々だ。
そうに違いない。
歩いてすぐの場所にあったのは、小さなシティホテルで。そりゃもう真っ白な髭のお爺さんが、フロントで受付してくれた。
へえ、こんな早朝4時にチェックインなんて出来るもんなんだな。それにしてもやっぱりラブホテルとかじゃなかったよ。私ったら、自意識過剰。ぷぷっ。って、あれ?聞き違いかな。鈴木さんが『ダブル』と言ったような…。
古いホテルだからか、今どき珍しくカードキーではなくて。プラスチックのキーホルダーに、部屋番号が書かれている。それを左手に持ち、右手で私の肩を掴みながら鈴木さんは囁く。
「美玲、今さら逃げるなよ」
止めてくださいセクハラですよと軽口を叩き、
もう一部屋頼めば済むはずなのに。
私はそれをしなかった。
この人はきっと、
一度断ったら2度と誘ってくれないだろう。
でも、ここで抱かれれば、それは『好き』と告白しているようなもので。その気持ちを知っていながら、この人は私を抱くのだ。
付き合う気も無いのに。
好きでも無いのに。
ああ、厄介な男を好きになってしまった。
…この恋に、未来は無い。
0
あなたにおすすめの小説
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる