恋、しちゃおうかな

ももくり

文字の大きさ
38 / 42

杉崎コワイ(鈴木Side)

しおりを挟む
 
 
 ※引き続き鈴木Sideです。
 ──────────
 
 
 シ──ン。
 
 静けさが身を刺すようだが、そこで主任がボソリと言う。
 
「なあ、プロポーズをやり直した方が良くないか?俺が言うのもナンだけど、鈴木って女グセ悪いし。せめて『お前だけは特別だ』とアピールしておかないと、本気度が伝わらないぞ?
 
 あとさ、指輪くらい渡しとけよ。
 お前、何もかも手ェ抜き過ぎ」
 
 ハイと膝を正し、そこから俺は動き出すのだ。
 
 
 
 
「えーっと。取り敢えず必要なのが、婚約指輪とレストランの予約かあ」
 
 ネット検索し、まずは指輪探しから始めてみる。なんかもう全部一緒に見えるのに、値段の振り幅がエグイ。
 
「えーっと、相場は全国平均35万円ちょい。カラット、カット、カラー、クラリティを選択後にリングの素材とデザインを決めろだと?ううっ、もう一生決められない気がしてきた。いや、まず何処で買うかだよな。指輪ケースが立派なら、全て許されそうだし。
 
 取り敢えず海外ブランドの有名どころを選んでおけば、無難か。って、こんな店に入れるのか、俺??」
 
 …ひたすら自問自答を続ける。
 
 とにかく美玲の薬指のサイズを訊いておかなければ。いや、サプライズなんだから訊いちゃダメなんだった。ううっ、フレンチレストランなんかもうどこでもイイや。それよりも俺、長い間フレンチなんか食べてないし、美玲に恥をかかすことになるんじゃないか?
 
 あいつ、『自分にご褒美』とか言って、ちょくちょく高そうな店でメシ食ってるしな。あー、眠い。最近、あまり寝てないんだった。
 
 はっ!ちくしょう、寝ちまったぞ。
 もう今日は諦めて、明日ゆっくり考えようっと。
 
 …てなコトを数日のあいだに何度も繰り返し、ようやく俺は決心した。人間には、得手不得手があるのだと。であれば、それを『得手』とする人に助けを乞うてしまおうではないかと。
 
 そんなワケで待ちに待った同期会。
 俺は勇気を出して杉崎に言う。
 
「一生のお願いだ。最高のプロポーズにしたいから、助けてくれ」
「んっと、確認するわよ。相手のことが本当に好きで、相手の為に一生懸命頑張れるんでしょうね?」
 
「そ、そりゃもちろん。世界で一番可愛いと思ってるからなッ。自分でもどうしようもないくらい、大好きだ」
「そんなに好きだと言われちゃ、仕方ないわね。うん、付き合ってあげてもいいわ」
 
 ガッシリと握手し、それからはもう杉崎を師と仰いで必死に頑張った。
 
 次々と出される、数々のミッション。…美玲が寝ている間に糸を使って薬指のサイズを測り、ついでに下着のサイズも調べて来いと。俺自身もスーツを新調させられ、テーブルマナーをみっちり叩き込まれた。
 
「分かってるわよね?サプライズなんだし、少しでもバラしたら殺すわよッ!!」
「うう、杉崎コワイ…」
 
 何もかもがスパルタだったが、
 どうにかこうにか当日を迎え。
 
 いま、目の前で美玲がキラキラと笑っている。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

処理中です...