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ずっと一緒
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「なあ、岩盤浴ってヒマだなあ」
「そお?サウナとかもこんなモンじゃない?」
会社帰り、簡単に食事を済ませてから2人並んで岩盤浴をしている。
あんなに不健康な生活をしていた鈴木さんが、結婚を機に長生きを目指すと宣言し、最近では『健康』と名のつくものにスグ飛びつくのだ。ちなみに男女混浴で、ブームも過ぎ去っているからか室内には私たち2人だけ。
つまり、遠慮なく大声で話せるというワケだ。
「ねえ、鈴木さん」
「なに?」
「海江田さんにあんなコト言って、けしかけちゃダメだよ。大沢課長にも失礼だし」
「あのさ、実は彼女、恋愛にトラウマ抱えてて。もう吹っ切ってもいい頃なんだけど、きっかけが無くてな」
「か、海江田さんに、そんな過去が??」
「うん。それで俺が憎まれ役になってもいいから、次に進んで欲しくてさ」
そっか、そんなことを考えていたんだ。
ちょっと見直したりして。
「鈴木さん、なんか変わったね」
「うん。だって、いま俺、すごい幸せだし。なんか恋愛の教祖様にもなれそうな勢いなんだ。…で、周囲の人々を次から次へと幸せにしたい」
胸がほわりと温かくなった。
自分が幸せだから、周囲も幸せにするんだって。
やっぱり可愛いこと言うなあ、この人。
「そ、それじゃ私も手伝うよ。まずは海江田さんなんだよね?」
「おう。俺らの周りにいる人間を、一人残らず幸せにしちまおうぜ。覚悟しとけよ、海江田ッ」
「海江田さんの方が4年も先輩でしょ?呼び捨てはダメだよ」
「ヤツがいないところでだけ呼ぶから、大丈夫」
話の流れに関係なく、突然キスをしてみた。
「な、なんだよ美玲」
「うん、ヒマだって言うから。そんなときは私のことでも考えて欲しいなって」
「アホか。基本、お前のことを考えてるっての」
「じゃあ、もっと考えて欲しいなって」
「この贅沢者」
なんでもいいから話したいのに、話すことがあまり無くて。たぶん、結婚したらこんなふうに2人で時間を過ごすことになるんだろうなって
…そう思ったら、ワクワクしてきた。
頑張って、私の中の引き出しを開けていこう。
過去のこと、未来のこと。
自分をさらけ出し、相手のことも訊き出して。
この先、誰よりも長い時間をこの人と過ごす。
職場でも、家でも、ずっと一緒。
それが、私たちは嫌じゃない。
それは何て素敵で、
何てスゴイことだろうか。
「最終的にはお墓まで一緒に入っちゃうんだね」
「ん?ああ。そうだな」
「ずっと一緒だね」
「ああ、ずっとな」
気の遠くなりそうなその年月を想像し、私たちはまた決心を固めるのだ。
──ずっとずっと一緒だと。
--END--
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