8 / 29
8.マミは戸惑う
しおりを挟むゴクリと喉を鳴らし、私は松原さんに向かって頷いた。仰向け状態のままだったので、あまりスムーズに顎を動かすことが出来なかったが、それでも意思は伝わったみたいだ。
「よし、分かった」
「ご指導のほど、宜しくお願い致します」
肩の力を抜けと言わんばかりに、松原さんは優雅に微笑む。その顔をマジマジと見つめながら私は、意図的に脱力した。しかし、瞼だけは力を入れて開けておく。まずはキスから始まり、徐々に胸へ。揉まれたり舐められたリと暫く奉仕は続き、最終的に下半身の方へと松原さんは移動して行く。
「あ、あのっ、まさかそこを舐めたりしませんよね?」
「んー、どうかなあ」
そう言いながらショーツを難なく脱がせた松原さんは、膝立ちをして私に言う。
「ここ、自分で開いて見せてよ」
「はっ、はあ?!」
この人が指差している『ここ』とは、俗に言う秘部のことだ。
「えっ、もしかして、恥ずかしい?」
「む、むむむ、無理です。そんなことをしたら死んでしまいますっ」
両手で隠しながらイヤイヤと激しく首を左右に振る私を、松原さんは嘲笑った。
「うーん、いい感じだなあ」
「なっ、何がですか?!」
先程までは貴公子然としていたのに、今ではまるで悪魔みたいだ。
「男ってさあ、嫌がるのを無理矢理するのが大好きなワケよ。あんまり慣れてるのは萎えるし、処女でもさ、なんか虐めてるみたいで心苦しいの。だからね、経験が少なくてウブな反応を見せるキミみたいな女が丁度いいんだなあ。さあ、早く広げよっか」
「うっ、お、鬼ですかッ」
両脚を閉じたいのに、松原さんに邪魔されてそれが叶わない。とうとう私の手は掴まれ、脚の付け根辺りに移動させられたかと思うと再び鬼は言った。
「やらないとお仕置きだぞ」
「へっ?あっ、やだ、ダメ」
いきなりの衝撃。ただ指を入れられただけなのに、思わず身を捩ってしまう。
「あー、指が抜けちゃったじゃないか。大人しく言うことを聞けないなんて、悪い子だなあ」
「いえ、あの、余りにも久々過ぎてビックリしちゃったんです、異物感が凄くて」
何だか感情が見えない。松原さんは怖いくらいに淡々と段階を踏んでいく。
「まあ、追々ってことで。今日は初回だからさ、取り敢えずウォーミングアップしていこっか」
「きゃあ、やっぱり舐めるんじゃないですかッ」
「いちいち煩いなあ。指でイカせてあげることも出来るけど、舌の方が手っ取り早いんだよね。というかさ、まずは俺に慣れてよ。恥じらいを美徳だと思っているんだろうけど、俺から言わせて貰えばクソ面倒臭いだけだから。一緒に気持ちいいことしましょうって言ってんのに、一方的に心を閉ざすなよ」
「あのう…、でも、さっき無理矢理するのが好きだと仰ってませんでしたか」
「無理矢理とは言っても、ガチで抵抗されるんじゃなくて『イヤよイヤよも好きのうち』的な焦らしテクとして展開して欲しいワケ」
「そ、そんなの意味が分かりませんっ」
枕を私のお尻の下に敷きながら、松原さんはワザとらしく溜め息を吐いた。
「まあ、いっか。今日は俺の実力をお披露目するということで。あ、でも全部は見せられないぞ。サワリだけな、サワリ」
「えと、ハイ、了解です」
なんなの、このゲスっぷり。
これ、本当にほんとおおおにッ、松原さんなんだろうか?日頃抱いているイメージと余りにも違い過ぎて、なんだかもう人間不信に陥ってしまいそう。
0
あなたにおすすめの小説
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる