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14.マミは仲間と語らう
しおりを挟むそして結果はまあ、当然というか。
言葉で突き放すことを諦めたのか、
松原さんは態度でそれを示すことにしたらしく。
その日以降、まったく会えなくなった。
金曜の朝、必ず送っていたLINE。最早、定型文と化していた『今夜もよろしくお願いします』のメッセージはブロックされ、社内で偶然顔を合わせても無視される。その分かり易い拒絶っぷりに、私はどうにか己を奮い立たせた。
──終業後。
小さな隠れ家的なビストロにて。
「へええ、マミちゃんが壮ちゃんのことをねー。そっか、まあ、お似合いなんじゃないかな。壮ちゃん、ああ見えて色々と拗らせてるから、マミちゃんみたいに素直なコの方がいいと思うよ」
「ほんと?!華ちゃん、有難う」
まずは、味方づくりからだ。
彼の義妹となる華ちゃんをこちら側に引き込むことにした。勿論、セフレになっていたことはひた隠し、純粋な片想いとして協力を要請したところ、すんなり快諾されて。ホッとしていたところに、爆弾投下。なんと華ちゃんが甲斐さんを呼び出してしまったのだ。
「あはは、甲斐さん、こんな夜中にごめんねー」
「ん、ああ。別に丁度ヒマだったし構わないよ」
華ちゃんは知らない。
甲斐さんが私を気に入っていて、華ちゃん経由で私との仲を取り持って貰おうとしていたことを。いや、待って、その顔!チラチラってこっち見てるけど、絶対にコレ、私が自分に気があると勘違いしてるよね?まさか、華ちゃんが甲斐さんと私をくっつけようとしてるとか…いや、その、そう思っても仕方ないかも…。
ややこしいことになったぞ。
「あのね、好きなんだって、マミちゃんが」
「えっ?!ほんとに」
いや、その言い方、誤解を招くから。
「マミちゃん、イイ子なんだよ~。人の悪口とか絶対に言わないし、一緒にいると癒されるというか」
「あ…ああ、それは俺もそう思う」
「やっぱり!見てる人は見てるんだなあ。こんなに綺麗なのに自己評価低いし、その気になればどこかの社長でも落とせると思うんだけど、でも、そうしないの。凄く奥手だから、もしかしたら恋愛慣れした男性と付き合った方が進展するのかも」
「ははっ、確かに。竹中さんは意外とウブだよな」
怖い。華ちゃんも甲斐さんも話が噛み合っていない様で、何故かピッタリ嵌ってるんですけどっ。とにかく華ちゃん、私が好きなのは松原さんだと早く切り出して!お願いっ!
「えと、それで甲斐さんには色々と情報を集めて欲しいの」
「情報?」
「そう、取引先の社長令嬢と結婚させられそうになってるんでしょ?…だから」
「社長令嬢?あー、それは松原さんで俺じゃな…」
勘のいい甲斐さんは、スグに状況を察したらしく。先程までは自然だったはずの笑顔を微かに引き攣らせながら、一瞬だけ私を見た。
「社長令嬢なんかと結婚したら、ますます壮ちゃんの完全無欠っぷりに拍車がかかって人間じゃなくなってしまいそうで怖いよね」
「は…ははっ」
渇いた笑い。
そりゃそうだよね、だってこんな金曜の夜に呼び出されて。モテ男と評判の甲斐さんのことだから、絶対に美女と一緒だったに違いない。その美女を泣く泣く諦めて向かった先で、意中の相手と自分の上司との仲を取り持ってくれとか言われたら私でもキレるわ。
「だからね、甲斐さん。マミちゃんと壮ちゃんを頑張ってくっつけましょう!」
「ええっと、あー、うん…」
ごめんね、本当にごめんなさいいい。
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