マミさんは、ときめきたい。

ももくり

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15.マミは宣戦布告される

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 隊長!事態は益々フクザツになりましたっ。
 あああうっ、どうしてこんなことに…。

 あれから甲斐さんと3人で飲み続け。長居し過ぎたので、そろそろ店を替えましょうかってんで向かった先がブルームーン。えっ、ご存知無い?あのニョロ野が勤めてる店なんですけど。いやあ、『実はマミちゃんを狙ってた』と打ち明けられて以降、何となく気まずくて接触を避けていたんだな。

 そんなニョロ野がいま目の前で、バーボンソーダを飲んでいたりする。ちなみに私、こっそりニョロ野に接触していたから、我らが結構仲良しだということを華ちゃんは知らないワケで。故に、ニョロ野が唯一打ち解けているのは自分だけだと思い込んでいる華ちゃんは、ひたすらニョロ野を構い倒していた。

「ニョロ野、休みなのに来て貰って悪いわね」
「何を仰るやら。華ちゃんの呼び出しなら喜んで」

「ふふっ、相変わらずニョロッとしてる」
「いや、そんなこと言うの華ちゃんだけだから!」

 ここで追加注文のパナシェを運んで来た、華ちゃんの元カレである郷田さんが口を挟んでくる。

「そうだよ、華。こう見えてヒロキは凄くモテるんだ。昨日だってメッチャ可愛い女性客から出待ちされてて、『連絡先を教えてくれるまで帰りません』とかなんとか迫られてたからな」

 へえええ、意外~。

 そっか、よく見たらニョロ野って結構整った顔してるもんね。まあ、系統で言うとクールワイルドな感じと言うのかな?好みは分かれるだろうけど、好きな人は好きかもしれない。しかも優しくて話題も豊富だし、彼氏にしたらきっと幸せにしてくれること間違いナシだ。

 華ちゃんとニョロ野の軽快なトークはまだまだ続く。そう、ニョロ野と喋るのはとっても楽しいのだ。正直、私も混ぜて欲しいが、そうすると夜な夜な恋愛相談の電話をしていたことがバレてしまうだろうし、ニョロ野には『華ちゃんには秘密だよ』と口止めしておいた手前、ここは我慢するしかない。

「へえ、ニョロ野、ヒロキって名前なんだ?」
「華ちゃん、酷い!長い付き合いなのに、俺の名前知らなかったワケ?!」

「あはは、ごめん。で、どんな漢字書くの?」
「大きく輝くと書いて、ヒロキ。熊野大輝です、どうぞ宜しく」

「って、なんでマミちゃんに握手を求めるのよッ。さては狙ってるな~、マミちゃんのこと」
「ふふ、バレたか」

 真正面から手を伸ばされたので、拒絶するのも大人気ないかと思って握手に応じる。そしてこっそりニョロ野の顔を見ると、ホッとした様な表情を浮かべていた。あっ!もしかしてこの人、私に嫌われたかもと思って緊張していたのかな?そりゃそうか、あんなに毎晩電話していたのに、それを突然止めたりしたらアレコレ勘繰って落ち込んだに違いない。

 ごめん、ニョロ野。

 猛省していたら、ふと視線を感じて。その視線の先にいた甲斐さんの方を見ると、こっちはこっちで私の動向を探っている感じだ。きっと、私とニョロ野の間に流れる微妙な空気で、何かを察したのだろう。どうも甲斐さんは侮れない気がするから、要注意だな。そんなことを考えつつも華ちゃんとニョロ野の会話に意識を戻すと、いつの間にか予想外の展開を迎えていた。

「私、ニョロ野を応援するよ!」
「嘘!華ちゃん、俺の味方になってくれるの?」

 おいおいおいおい。
 何を言っているんだ、キミたち。

「だって、壮ちゃんよりニョロ野の方がマミちゃんを幸せにしてくれると思うし」
「ん?もしかして華ちゃん、酔ってるだろ~」

「酔ってますよ!だからこその本音なのお」
「朝になったら絶対に忘れるヤツだよね、それ」

「らいじょうぶ!ニョロ野を応援する気持ちは変わらないからッ」
「はいはい。ほんと有難う、華ちゃん」

 なに2人だけでホノボノしてんのよ! 
 勝手に人の恋路を邪魔しないで欲しいわッ。

 聞こえないフリをしつつも、内心ではアセアセしている私に更なる試練が。突然、斜め前から手が伸びて来て。それはどうやら甲斐さんが意見を述べる為に挙手をしていたらしく、その他の3人が『何ですか?』と発言を許した時点で彼はこう宣言した。

「俺も!竹中さんのことが気になる…っていうか付き合いたいんで。正々堂々と戦いましょう!」
 
 
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